45.4 出生の真実

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 薫は都に戻ったんだけど、弁の君の話が気になって仕方ないの。それに素敵な姫君のことも気にかかっていたの。

 そういえば匂宮は運命の出逢いに憧れていたっけなぁなんて思いながら宇治の姫君たちのことを少し大げさに盛って話をするの。案の定匂宮は飛びついてきたの。

「月明かりがほのかだったけれど、見間違いじゃなかったらとてもキレイだったよ。理想の女性だと思う」

 今まで本気で恋したことがない薫がそんな風に言うんなら間違いなくいいオンナだって匂宮は確信するの。

 匂宮はもう少し詳しく調べるようにな、って薫に言ったの。


 10月になって宇治に行った薫を八の宮が迎えたの。夜通し経典の話をしたあとで、この前姫君たちの演奏を聴いたことを話してもう一度聴かせて欲しいとお願いするの。けれども姫君たちは恥ずかしがって演奏してくれないので薫は残念がるの。

 人付き合いに慣れていない姫君たちのことを八の宮も心配しているんだけど、薫も結婚というカタチではなくても身内だと思ってお世話しますと話して八の宮を安心させてあげたの。


 明け方になってから薫は弁の君と会って柏木の話を聞くの。このことを知っているのは弁の君と小侍従だけだったんだけど、小侍従はもう亡くなっているの。

 他人事としても将来有望な若者が亡くなったことを気の毒だと思っていたのに、その柏木のことがまさか自分に関わっているなんて、しかもこの真実を知ったのが宇治だなんて運命のめぐりあわせに薫は涙を流すの。


 弁の君は薫に布袋に入った手紙を渡すの。それは余命いくばくもない柏木が女三宮に書いた手紙だったのね。


 ~ 目の前に この世をそむく 君よりも よそに別るる たまぞ悲しき ~

(世を捨てて尼になってしまったあなたのことよりも、あなたに逢えないで死んでいく僕の魂のほうが悲しいんだ)


 ~ 命あらば それとも見まし 人知れず 岩根にとめし 松の生ひすえ ~

(命さえあれば陰ながらにも我が子の成長を誰にも知られずに見守ることができたのに)


 動かぬ証拠に薫は落ち込んで出仕する気にもなれないの。でもお母さんの女三宮に話すわけにもいかなくてひとりで悩むしかなかったみたいね。






第四十五帖   橋姫


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ 目の前に この世をそむく 君よりも よそに別るる たまぞ悲しき ~

 ~ 命あらば それとも見まし 人知れず 岩根にとめし 松の生ひすえ ~

 柏木が死の直前に女三宮に贈った歌





◇第四十四帖竹河でした。

episode45 若きエリートの悩み   橋姫

45.1 八の宮というひと

45.2 宇治の姉妹

45.3 薫と大君

45.4 出生の真実


 薫が出生の真実を知りました。と同時に出家を求めて宇治の八の宮のもとに通っていましたが、ふたりの姫君との「運命的な」出逢いも果たしたみたいですね。


「冷泉院さまもそうだったけれど、真実を知っても親に「本当のこと聞いたよ」とは言えないよねぇ」

 冷泉院は源氏に、薫は女三宮に真実を知ってしまったことを伝えられません。


「せめて冷泉院さまと薫くんで同じ境遇同士相談というか語り合わせてあげられたらいいのに」

 自分以外に過ちの恋の子がいるなんて知りようがありませんものね。

 次巻からいよいよ薫と匂宮の恋が動き始めます。


NEXT↓

episode46 ふたりの恋   椎本

46.1 匂宮の宇治行き作戦



☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内

源氏物語エッセイもぜひ読んでみてね。今回はウジウジ薫くん編♬



 topics38 ウジウジ薫宇治へゆく https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054881765812/episodes/1177354054886923831




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る