45.3 薫と大君

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 弁の君は若い女房たちの非礼を謝ってきちんと御簾内に席を設けて薫を案内するの。すると急に弁の君が泣きだすの。どうしたのか薫が尋ねると、彼女は亡くなった柏木の乳母の娘だっていうの。そして彼女は柏木から臨終のときに聞いた遺言をいつか薫に話さなくてはいけないって思っていたって言うの。

 薫はぜひ聞きたいって言うんだけど、弁の君はまた日を改めてってその日は話してくれなかったの。


 夜が明けてきて弁の君と話し終えた薫はまた姫君たちに話しかけるの。


~ 朝ぼらけ 家路も見えず 尋ねこし まきの尾山は 霧こめてけり ~

(夜が明けるけれど霧が立ちこめていて帰り道がわからないんだ=帰りたくないな)


 川霧を眺めている薫の優雅な姿にみんなうっとりしちゃうんだけれど、どうやって返事したらいいかまたみんな戸惑っちゃうのね。それで大君が控えめにこんな歌を詠んだの。


~ 雲のゐ《い》る 峰のかけぢを 秋霧の いとど隔つる 頃にもあるかな ~

(雲のかかっている山に霧まで立ちこめているからわたしたちの間にはもっと隔たりができてしまうわね)


 薫はまたこんな歌を詠むの。


~ 橋姫の 心を汲みて 高瀬さす さをの雫に 袖ぞ濡れぬる ~

(姫君たちが寂しく暮らしているかと思うと泣けてくるよ)

 

 寂しい景色ばかりでツライよね、ホントは華やかにくらしたいよね? と薫は同情しているみたい。


~ さしかへる 宇治の川長かはをさ 朝夕の 雫や袖を くたしはつらん ~

(もうずっとこうして暮らしているもの。泣きすぎて涙をふく袖が朽ちてしまうほどなの)


 自分自身が浮かぶんじゃないかってほどの涙を流してきたわ、そんな風に大君は薫に伝えたの。

 薫はまだ帰りたくなかったんだけれど、心を残しながら都に戻ったの。





To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 朝ぼらけ 家路も見えず 尋ねこし まきの尾山は 霧こめてけり ~

 薫が姉妹に贈った歌


~ 雲のゐ《い》る 峰のかけぢを 秋霧の いとど隔つる 頃にもあるかな ~

 大君が控えめに返した歌


◇「弁の君もひっぱるねぇ」

 肝心の内容は話してもらえませんでした。


「でも薫くんと大君さんとの歌のやりとりなんだかいいね」


寂しいよね。僕が話し相手になるよ。とアプローチする薫。

大丈夫です。もうずっと寂しく暮らしていますから。とかわす大君。


このふたりに恋が芽生えるのでしょうか……。





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45.4 出生の真実

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