40.2 最後の夏 そして最後の秋

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 夏の暑さが紫の上を苦しめて、どんどん衰弱していって気を失うこともあるの。中宮になった明石の女御が二条院に里下がり帰省してきて紫の上を見舞うの。明石の御方も一緒みたいね。中宮の子供たち(紫の上にとっては孫)の大きくなる姿が見たかったわといって紫の上が泣くんだけど、そのお顔もとても美しいの。それとなく自分の死んだあとのことを言い残す紫の上に明石中宮は涙を流すのよね。

 紫の上は可愛がっている匂宮におうのみや(中宮の三男)とも話をするの。


「わたしがいなくなったらおばあちゃまを思い出してくださる?」

「おばあちゃまのことがいちばんだいすきなんだよ。いなくなったらかなしくなっちゃうよ」


 紫の上は匂宮に大人になったら二条院に住んで庭の紅梅と桜の季節は眺めて、時々は仏様にもお供えをしてね、と言い残すの。匂宮は泣き顔を見られまいとその場を立ち去ってしまうの。紫の上は手元で育てた女一の宮と匂宮の成長を見届けられないことをとても悲しく思ったのよね。


 夏が過ぎると今度は朝夕の冷えが紫の上にはつらくなってくるの。明石中宮はまだ二条院にいるんだけど、紫の上は弱り切っていて中宮のところまでも会いに行けないの。(中宮は身分が高いから本当は紫の上が中宮の所に参上しなければならないの)御所からは早く戻ってくるように催促されているんだけれど、紫の上が心配な中宮は御所には戻らずに自分から紫の上の部屋までお見舞いに行くの。


 明石中宮が見る紫の上は痩せてしまってはいるけれど、やっぱり上品で優美なのね。よく美しさを花に喩えるんだけど、紫の上の美しさと同じくらいのものが地上にないほどなんですって。

 起き上がって中宮と話をしている紫の上を見た源氏はそれだけで喜んで涙を流すの。ほんの少し気分がいいだけでこれだけ喜んでくれる源氏が自分が死んだらどんなに悲しむのかと思うと紫の上は切なくなってくるの。





To be continued ✈✈✈




◇「なんか……、どんどん弱ってきていて悲しいね」

「ずっと紫ちゃんって呼んでたけれど、ちょっとそんな気分じゃなくなってきた……」


 第五帖で登場したとき、紫の上は10歳の少女でした。現在43歳。彼女に寄り添い源氏物語を体感した読み手も多いのではないでしょうか。こまちちゃんのように。


「最後まで源氏の心配しているんだね。優しいというか思いやりがすぎるというか……」

「源氏の心配をして切なくなってる紫ちゃんが切ないよ」







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40.3 最愛なる貴女あなた

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