39.5 結婚の余波

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 六条院では母親代わりの花散里が待っていて、成り行きを聞かれるの。夕霧は御息所の遺言で女二宮のお世話を頼まれたなんてウソをつくんだけれど、花散里は正室の雲居の雁に同情をするの。

「それにしても面白いのは殿(源氏)が自分の多重恋愛を棚に上げて、あなたの騒動を大事件みたいに騒ぐのよ」

 花散里がそう可笑しがるの。

「いつも女性問題には厳しいんだよね」

 夕霧も花散里と源氏の話題で心を和ませるの。

 源氏も夕霧の結婚のことは聞いたけれど何も言わなかったの。夕霧があまりに美しくて立派な男性だから、恋愛騒ぎを起こすのも仕方ないかなって思うの。女子ならみんな夕霧に恋をするだろうなって思ったんですって。


 そのころ雲居の雁は三条の自宅でふて寝をしているの。夕霧がなんとかなだめても雲居の雁のご機嫌は戻らないみたい。


「来るところを間違えてるんじゃないの?(私は女二宮さまじゃないわよ)」

「(あなたの結婚のことなんてもう聞きたくないから)もう死んじゃうわよ。でもあなたを残していくと気がかりだし……」

 怒っていながらも愛敬のある雲居の雁なの。夕霧もクスッと笑っちゃうの。昔は雲居の雁と結婚するまでにどんなに苦労をしたんだろうって思い返すの。


~ 馴るる身を 恨みんよりは 松島の あまの衣に たちやかへまし ~

(長い間一緒にいた自分にムカつくから、いっそ尼になっちゃおうかしら)


~ 松島の あまの濡衣 馴れぬとて 脱ぎ変へつてふ 名を立ためやは ~

(長い間一緒にいた僕を嫌って尼になったなんて言われないようにね)


 多くの女性たちの中で一番愛されるのが女性としてのステイタスなんじゃない? なんて言って夕霧は雲居の雁を持ち上げるんだけど、今までが品行方正な夫だっただけに雲居の雁はショックなのよね。

 夜になってまた女二宮の一条のお邸に行くんだけど(婚礼3日間は通わなきゃいけないから)、まだ女二宮は塗籠に籠っているの。それで夕霧は女房を説得して鍵のかかっていない戸口に案内してもらい女二宮の部屋に入るの。僕に任せてほしいと話すんだけど、女二宮は泣いてばかりなの。雲居の雁との仲を気まずくさせてまで口説いた女性なのに、こんなに嫌われているなんてと夕霧は落ち込むのよ。それでも一応は夫婦になって、マメに女二宮の世話をして一条のお屋敷に居続けるの。




To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 馴るる身を 恨みんよりは 松島の あまの衣に たちやかへまし ~

雲居の雁が夕霧の結婚にショックを受けて詠んだ歌


~ 松島の あまの濡衣 馴れぬとて 脱ぎ変へつてふ 名を立ためやは ~

夕霧が雲居の雁をかわした返歌


◇「いくら一夫多妻制の社会でも雁ちゃん、ショックだよね」

 藤典侍が側室ですが、宮中に勤めていますし、夕霧は雲居の雁と一緒に三条の屋敷で暮らしていました。(幼いころに一緒に育った祖父母のお屋敷ですね)これからは女二宮の一条のお屋敷にも通うことになりますね。


「でもさ、紫ちゃんはこんなショックを何度も何度も味わっていたんだね」



「わたしのところに来てほしい」

「ずっと一緒にいてほしい」

 逆に「わたしのことは放っておいて」

「わたしのところにはいらっしゃらないで」

 そんな女性の意向は聞いてもらえません。

 ひたすら夫や恋人が通ってくるのを待つことしかできなかった時代です。女性の悩みや辛さが表現されていますね。




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39.6 実家に帰らせていただきます!

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