36.4 父に似ることなかれ
✈✈✈Let' go to SenmojiGenji
3月になり、薫はすくすくと育っているの。色が白く美しく、声を出して笑ったりして可愛らしいの。源氏は女三宮が出家したあとは毎日のように顔を出すの。母親の女三宮は出家して尼になっているけれども薫の五十日のお祝いをしてあげるの。源氏の子ではないという真実を知らない人たちから届くお祝いの品々を見て源氏は本当のことを言えず苦しむの。
女三宮は尼らしく鈍色の濃淡を重ねた衣装で、髪も普通の尼さまよりは少し長めにしてあってとても美しいんですって。
「キミが尼になっちゃうなんてね」
「それもホントの理由は俺をイヤになっちゃったからなんてね。もう愛してはくれないの?」
源氏がそう言うの。
「もともと愛など持ち合わせていませんわ」
女三宮の返事は冷めているわね。
「へぇ? 愛なら知ってるときもあったんじゃないの?」
源氏はちらりとイヤミを言うの。
薫を抱き上げて顔を見るんだけど、夕霧の赤ちゃんの頃には似ていないの。でも明石女御の産んだ親王さまたちより気品があって美しいの。目元なんかはやっぱり柏木に似ているんですって。源氏は白楽天の漢詩を口ずさむの。
『
実の父に似るんじゃないよ、と願ったみたいね。
前太政大臣が柏木が子供を残してくれていたらよかったのに、と嘆いているのを知っているけれど、だからといってこの事実は伝えられるものではないわよね。優秀な若者だったのに自滅して死んでしまった柏木のことを源氏も残念に思いもするの。
「こんな可愛い子を残してよく出家なんかできたね」
源氏はそんな風に女三宮にイヤミを言うの。
~ だが世にか 種は蒔きしと 人問はば いかが岩根の 松は答へん ~
(誰が父親かって聞かれたら誰って答えたらいいんだろうね?)
そんな歌まで源氏は詠うけれど、女三宮は返事もできないでうち臥しちゃうの。
(あんま深く考えない子だからなぁ。でも何も感じないってワケでもないんだな)
源氏はこう思っていたみたいね。
夕霧は柏木が亡くなる直前に言っていたことをずっと考えているの。女三宮が出家したのは産後の病が理由だって聞いているけれど、紫の上が危篤のときですら許さなかった出家をどうして源氏は許したんだろう。やっぱり柏木と女三宮のあいだによくないことがあったんじゃないのかって。
前から柏木が女三宮のことを好きだったことは夕霧も知っているし、柏木は普段は冷静だけど思い詰めたら感情にもろいところがあったしなと思い返すの。
けれども、どんなに好きでも許されない恋は相手にも気の毒だし、ましてや自分の命を落としてしまったんだからやっぱりいけないことだったんだよ、と夕霧は思うのね。柏木に頼まれたことも源氏に伝えることができていないから、チャンスがあれば話をしないとって思っているの。
To be continued ✈✈✈
🖌Genji Waka Collection
源氏が薫を抱いて口ずさんだ白楽天の漢詩
◇「源氏、嫌味ばっかり言ってすごいカンジ悪いんだけど!」
「よく出家なんてできたね、って源氏には疎まれるし罪の意識もあるから出家したんでしょ」
「柏木も亡くなっているし、辛いことばっかりなのにその上こんな嫌味まで言われて女三宮ちゃんが可哀想だよ!」
「そもそも小侍従が柏木の味方して無理矢理襲われているのにまるで女三宮ちゃんが進んで浮気したみたいじゃん!」
「なんでそんな思いやりのないことが言えるの?」
「自分の気持ちばっかりぶちまけるんだね」
「ホント、俺様だよね、源氏って」
こまちちゃんの憤慨がとまりませんね。
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36.5 夕霧と女二宮
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