34.13 女三宮のすがた

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 夕霧は女三宮のことは自分に持ち掛けられたかもしれなかった縁談だったので、なんとなく様子をうかがっていたのね。源氏は表面上大切に扱っているだけっぽいなって見抜いているのよ。女房たちも派手で騒がしいカンジで落ち着いた大人がいないようなの。女三宮には源氏がいろいろと教えてあげていたから少しは夫人らしくはなっているけれども、女三宮のウワサを聞くたびに夕霧はやっぱりカンペキな女子なんていないもんなんだなって思うんですって。けれど、源氏と長く一緒にいる紫の上の悪いウワサなんて聞いたことがないから、やっぱり台風の日に見たあの紫の上は最高の貴婦人でいまだに忘れることができないみたい。


 そして夕霧の友人の柏木は女三宮と結婚できなかったから落ち込んでいるの。女三宮の女房の小侍従こじじゅうから女三宮の情報を聞くんだけど、源氏の愛情の深さはやっぱり紫の上がイチバンで女三宮は飾り物のような扱いだって知るとひとりモヤモヤしているのよね。


「僕だったら宮さまにそんな思いをさせなかったのに」

「六条院(源氏)みたいに立派な男ではないけれどさ」

「もし院が出家したら宮さまをいただきたい」

 そんなことを小侍従にぼやいているんですって。


 ある日、六条院の春の町で柏木や夕霧たちが蹴鞠を楽しんでいて、女三宮たちも御簾内から見物しているのね。途中で夕霧と柏木が階段きざはしで休憩するの。散った桜の花びらが雪のように階段に降ってくるの。近くの御簾の向こうでは女三宮の女房たちがいるんだけれど騒がしくて几帳もどこかにやってしまって少しお行儀がよくないのよね。そんなときにハプニングで女三宮のいる部屋の御簾を猫が巻き上げてしまって中が丸見えになっちゃったの。

 女三宮の姿も見えてしまうの。春らしい紅梅がさねに桜色の細長ほそなが(上着)が華やかで黒髪がとっても美しいの。小柄でほっそりとしていて、顔立ちもとても美人さんなの。女房たちは御簾が巻き上がっていることに気づいていなくて、焦った夕霧が咳払いをして女三宮に知らせるの。それで女三宮は奥に下がったんだけど、なんか隙だらけの女の子だなぁって夕霧は思ってしまうの。


 けれども柏木は結婚したかった相手の顔を見てしまってますます盛り上がっちゃうの。蹴鞠のあとの飲み会でも柏木はうわの空なの。夕霧はきっと女三宮のことを想ってるんだなって思うの。柏木はきっとあまりに恋するあまりに神様が彼女の姿を見せてくれたんだなんて感激してるみたい。



To be continued ✈✈✈



◇女三宮は源氏の正室でとても高貴な身分なので夫以外の男の人が姿を見るなんてことはありえません。女三宮の女房たちは男子たちの蹴鞠が見たいからと御簾の中で几帳などもどかして見物していたようです。猫が御簾を巻き上げたのはハプニングでしたが、それくらいで女三宮の姿が見えてしまったのは、女房達が几帳などをどかしていたミスと女三宮自身の所作がよくなかったからでしょう。


「見られるはずがない人を見ちゃったらそりゃ盛り上がっちゃうよね。柏木はもともと女三宮ちゃんのこと気になってるんだもんねぇ」


 同じく女三宮の姿を見た夕霧は冷静ですね。これくらいで姿が見られるなんておかしいんじゃないかと気づいています。






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34.14 柏木の恋

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