34.3 源氏の後悔

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 年が明けると、玉鬘が髭黒の連れ子や自分の産んだ子供たちを連れて源氏の40歳のお祝いにやってくるの。趣味のよいプレゼントを用意して、派手ではないけれど心にのこるお祝いをしてあげる玉鬘。彼女はますます綺麗になって立派な左大将夫人になっているの。


 ~ 若葉さす 野辺の小松を ひきつれて もとの岩根を 祈る今日かな ~

(若葉のような子供達を連れて、今日は育ててくださったお父さまのお祝いにまいりましたわ)


 ~ 小松原 末のよはひに 引かれてや 野辺の若菜も 年をつむべき ~

(長生きにあやかって子供達も成長するだろうね)


 源氏も本当に40歳? って聞きたくなるほど若く見えてあいかわらず素敵なんですって。

 髭黒の左大将や太政大臣などもやってきて、そのまま大勢での華やかな管弦の宴になったみたいね。特に太政大臣の息子の柏木の和琴が素晴らしかったんですって。


 夜が更けて玉鬘が帰って行くの。昔は恋しく想った玉鬘がせっかく会えたのにすぐに帰っちゃうのが源氏はちょっと物足りないみたい。

 一方の玉鬘は、実の父親の太政大臣に対しては肉親として思っているけれど、源氏が注いでくれた特別な愛情に対しては年が経つと懐かしいみたい。今の境遇にいられるのも源氏のおかげだわと、とても深く感謝しているんですって。 



 2月になって女三宮が六条院にお嫁に来たの。皇族の方のお嫁入りだからものすごく豪華なの。六条院の春の御殿にも女三宮用の対屋たいのや(屋敷)が用意されるの。紫の上は平静を装いながら姫宮のお部屋の支度を手伝うので、なんてデキた人なんだと源氏は感激しているのよね。

 女三宮は幼くて本当に子供のようだったの。二条院に連れてきたときの少女だった紫の上と比べても、女三宮の子どもっぽさが目立って頼りない新しい正室に源氏はがっかりするの。


 紫の上は新婦の部屋へ通う源氏の身支度をしてあげるの。

「なんでこんなこと引き受けたんだろ。今さら新しい妻なんて必要なかった。惚れっぽい俺の性格のせいだ」

 源氏は今頃この結婚のことを後悔して涙ぐむの。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ 若葉さす 野辺の小松を ひきつれて もとの岩根を 祈る今日かな ~

源氏大臣の40歳のお祝いに玉鬘が贈った歌


 ~ 小松原 末のよはひに 引かれてや 野辺の若菜も 年をつむべき ~

源氏が孫を連れてお祝いに来てくれた玉鬘に返した歌




◇「源氏ってやっぱりバカなんだね」

 こまちちゃん、またバッサリきましたね。

「結婚する時点で後悔して泣くってバカじゃん」

 

 女三宮は藤壺の宮に似ていない13歳の幼い少女でした。

「結婚する前に会っていればそこでお断りとかできなかったの?」

「いくらお見合いでも結婚前に顔を見たり文のやりとりしないの?」

 それができていれば源氏と女三宮が結婚することはなかったでしょうね。


「誰も幸せになれなさそうじゃん」

 この結婚からさまざまなことが連鎖していきます。【若菜】の、というより源氏物語第二部の最初にして最大のキーポイントとなる出来事です。波のない湖面に落ちたひとしずくの水滴。ここから水紋が広がっていきます。




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34.4 紫の上の絶望



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