第一部 さらっとおさらい

topics1 ラブストーリーの見本市?

  前エピソードで「第一帖【桐壺】から第三十三帖【藤裏葉】までの

源氏物語」第一部が終わりました。全五十四帖ですから54分の33ですね。半分を折り返していますね。


 どうでしたか?

「夕霧くんと雲居の雁ちゃんがよかったよねぇぇぇ」

 こまちちゃんはまだふたりの初恋ラブストーリーの余韻に浸っているみたいですね。


「あとは源氏くんはホントたくさんの彼女と付き合ったねぇ」

 そうですね。いくつのラブストーリーが登場したでしょうか。

「多すぎるよ!!」

 さらっとおさらいしましょうか。


◇登場キャラ

 葵の上 源氏の正室で息子の夕霧を出産。故人。

 空蝉 夫が亡くなった後出家、源氏の二条院に引き取られる。

 夕顔 源氏の若い頃のカノジョ。頭中将との間の子が玉鬘。故人。

 六条御息所 こちらも源氏が若い頃つきあったセレブ未亡人。故人。

 藤壺の宮 源氏の永遠の憧れの人。冷泉帝を産む。故人。

 末摘花 頭中将と取り合った口コミで評判だったカノジョ。二条院在住。

 朧月夜 源氏の兄、朱雀帝(院)の寵姫。源氏のカノジョでもあり。

 紫の上 誰もが認める源氏がイチバン愛しているオクサマ。六条院春の御殿主。

 花散里 夕霧や玉鬘の母親代わりを頼むなど源氏の信頼大。六条院夏の御殿主。

 明石の御方 明石で源氏と出逢い、明石の姫君を出産。六条院冬の御殿主。


 冷泉帝 源氏と藤壺の宮の子。

 秋好中宮 六条御息所の娘で冷泉帝妃。源氏が親代わり。六条院秋の御殿主。

 夕霧 源氏と葵の上の子。初恋を実らせて雲居の雁と結婚。

 雲居の雁 頭中将の娘。幼なじみの夕霧と結婚。

 明石の姫君 源氏と明石の君の子。紫の上に育てられ東宮妃となる。

 玉鬘 頭中将と夕顔の子。源氏の養女。髭黒大将夫人。


 光源氏 冷泉帝から准太上天皇の位を授かる。いまだ愛を探し求める旅の途中。



****************

◇超ざっくりまとめ

 ☆絢爛豪華、波乱怒涛の主役

 物語の主人公ですね。まずはカレがいなくちゃ始まらない。

 整いすぎている顔立ち、光放つ雰囲気オーラ、帝の皇子という高貴な身分、頭脳明晰、風雅優美……。主役を演じるために生まれてきたようなカレ。光源氏こと我らが源ちゃん。女たらしというよりは人たらしの源ちゃん。どこか憎みきれない源ちゃん。カレの恋物語を中心に物語は進みます。


 ☆永遠の憧れ

 源ちゃんの初恋のヒト、藤壺の宮さま。とは言ってもパパ帝の奥さん(後妻なので源ちゃんのママではありません)なので禁断の恋です。罪も罰も覚悟の上でふたりは愛を交わします。藤壺の宮さまは妊娠し冷泉帝が産まれます。源ちゃんと藤壺の宮は生涯お互いと冷泉帝を護りつづけました。冷泉帝は成人してから自分の出生のヒミツを知りひとり苦悩します。


 ☆カタチだけの夫婦

 源ちゃんが元服したときに最初に結婚したのが葵の上です。ライバルでもあり良き友である頭中将の妹です。お互い素直になれず打ち解けないうちに彼女は亡くなってしまいます。源ちゃんの息子夕霧のお母さんです。


 ☆年上のセレブ彼女

 藤壺の宮への恋がうまくいかない頃、源ちゃんは多くの女性と付き合っていました。中でも都で皆が憧れる年上セレブ未亡人に猛アタックして、ふたりは恋人関係になります。彼女が六条御息所。高貴で和歌の名手の貴婦人に源ちゃんは精一杯背伸びして付き合いますが、やがて疲れてしまいあまり通わなくなり、御息所の恨みを買ってしまうことになってしまいます。彼女はのちに源ちゃんの奥さんたちを呪ってしまいます。


 ☆男子の憧れ? 自分好みに育てる浪漫?

 罪は犯してしまったものの決して成就することのない藤壺の宮への想いに苦しんでいる頃、彼女にそっくりな少女を見つけます。この女の子が紫の上。藤壺の宮の姪にあたります。幼い頃に自宅に連れてきて理想の女性に育てて結婚します。総勢何人かカウントするのも難しい源ちゃんの恋人たちですが、「最愛のヒト」でしょうね。


 ☆これも憧れ? 癒しの里

 「源ちゃんに一番愛されたい」とついつい他の恋人と争ったり牽制したりしがちな女性たちの中で、一歩下がったところで皆とは争わず、それでいて源ちゃんを癒してあげたのが花散里の君。後々夕霧や玉鬘の母親代わりをお願いするほど、源ちゃんも全幅の信頼をおいています。源氏の生涯で一番長い期間一緒にいた女性ですね。


 ☆これぞ源ちゃんの恋! アバンチュールな彼女

 藤壺の宮との辛い禁断の恋を経験したはずなのに、また公にできない恋に源ちゃんは落ちます。兄の朱雀帝のお妃、朧月夜の君です。政敵右大臣の娘でもある彼女とキケンな恋を楽しんでしまう源ちゃん。けれどバレてしまって責任をとる形で須磨で謹慎生活をおくることになります。


 ☆最高のカノジョ

 謹慎生活を送っている源ちゃんですが、謹慎先の明石でもカノジョを作ってしまいます。それが明石の君。田舎育ちだけれど気品ある明石の君との恋。ふたりのあいだには明石の姫君が産まれます。京に戻って復職した源ちゃんはふたりを京に呼び寄せます。将来のことを考えて明石の姫君は紫の上に養育してもらうことになります。


 ☆共感度ナンバーワンのハツコイ

 幼なじみ同士の淡く微笑ましい初恋模様です。源ちゃんの息子夕霧と頭中将の娘の雲居の雁とのハツコイです。幼なじみ、親が政敵同士、想い合っているのに引き離されるという千年続くテッパン設定の元祖?! の切ない恋物語です。


 ☆運命のめぐりあわせ

 若い頃に源ちゃんが付き合っていたカノジョの夕顔は源ちゃんとデート中に亡くなってしまいました。実は彼女は源ちゃんと付き合う前に頭中将と付き合っていてひとり娘を産んでいました。その娘が玉鬘。運命のめぐりあわせで源ちゃんが養女として引き取ります。親代わりとして彼女を幸せにしようとしますが、突然できた美しい養女に源ちゃんは胸ときめかせてしまいます。


 ☆衝撃の大事件!

 源氏の養女の玉鬘にはたくさんの求婚者がやってきます。父親代わりの源ちゃんも親子以上恋人未満の関係を満喫している始末。帝である冷泉帝まで興味を持ちます。そんな中での大事件。髭黒の大将が無理やり玉鬘の部屋へと押し入り結婚してしまいます。


 ☆拍手喝さいスタンディングオーベーションのテッパンストーリー

 髭黒の無理矢理婚とは対極の淡い初恋がようやく実りました。だれもが共感し、だれもが応援した夕霧と雲居の雁がようやくようやく結ばれました。



 以上が『源氏物語』第一帖【桐壺】から第三十三帖【藤裏葉】までのざっくりおさらいでした。この部分を三部構成の第一部として区分しているようです。(諸説あり)

 源ちゃんが産まれて、たくさんたくさんたくさんたくさんの恋をして、息子の夕霧が結婚しました。【藤裏葉】時点で源氏39歳、紫の上31歳。夕霧が18歳です。


「ホント、たくさんたくさんたくさんたくさん……」

 禁断の恋、年上セレブ未亡人との恋、ヒトヅマとの恋、素性を明かさなかった癒し系カノジョとの恋、理想通りの女性に育てる恋、不器用な優等生タイプとの恋、口コミで盛り上がった恋、スリルを満喫する恋、長く続く穏やかな恋、

謹慎先での恋(リゾラバ?)、従姉弟との友情、幼なじみ同士の初恋、元カノのムスメへの想い……、ありましたね。まるでラブストーリーの見本市? ですね。


「これだけのラブストーリーを考えるのもスゴイね」

 そしてこれらの恋愛パターンが今も小説やドラマなどでも使われていますよね。千年経った今の私たちも共感できる設定が多くあります。

 そんなところも『源氏物語』を楽しめる要素のひとつかもしれませんね。

 




 次話第三十四帖から第二部に入ります。第三十四帖【若菜上】、第三十五帖【若菜下】は物語の中でも最高傑作と言われているそうです。大きなポイントとなる巻だと思います。かなりボリュームもあるので少しずつ公開しますね。


NEXT↓

第二部 幾重にも広がる恋の水紋

episode34-1 それは水紋のように   若菜上(一)

34.1 朱雀院の悩み

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る