33.2 咲き誇る初恋の花

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 少し遅れて内大臣家にやってきた夕霧は、招待客の中でもひときわ美しく優雅で気品があるの。内大臣は女房たちに自慢するの。宴は盛り上がってお酒もすすんでいるようね。

「あなたは秀才だから年寄りを大事にしないといけないことも知っているね?」

 内大臣はそんな風に夕霧に言うの。

「おじいさま(内大臣の亡き父、夕霧と雲居の雁の祖父)の代わりにお仕えしたいと思っていますが、僕が不出来で失礼があったことをお詫びします」

 夕霧が答えるの。


~ 春日さす 藤の裏葉の うちとけて 君し思はば われも頼まん ~ (後撰集)


「でもあなたが心を開いてくれるなら私もあなたを頼りにするよ」

 内大臣は藤の花房を盃に添えて夕霧に差し出したの。


~ 紫に かごとはかけん 藤の花 まつより過ぎて うれたけれども ~

(すべては藤の花のせいにしよう。待ちすぎてしまったけれどね)


 こうして雲居の雁との結婚を許してくれたの。

 

 ~ いく返り 露けき春を すぐしきて 花の紐とく 折に逢ふらん ~

(何度も何度も涙に濡れた春を過ごしたけれど、ようやく花(彼女)にめぐり逢えます)


 夜遅くになり、夕霧は内大臣家に泊めてもらうことにするの。柏木がからかいながらも妹の雲居の雁の部屋に案内してあげるの。

 夢見るような心地で夕霧は雲居の雁の部屋を訪ねると、美しく成長していた雲居の雁と再会を果たすの。これでようやく夕霧と雲居の雁は結ばれるの。長い長い初恋を実らせたふたりだったの。遠かったふたり。長かった春。春の最後に花を咲かせる藤のように遅い遅い春がふたりに訪れたわね。


 朝になり自宅二条院に帰り、夕霧は雲居の雁に後朝の歌を贈るの。今までふたりの手紙のやりとりを隠れてこっそり受け渡ししていた従者が初めて堂々と使者として夕霧の文を雲居の雁に届けたの。

 お父さんの源氏にも雲居の雁との結婚を報告するの。

「頭のよい人でも、恋愛がらみでは見苦しいこともするのに、焦ったりもせず、穏便に想いつづけたのは偉かったね」

 と息子のことを褒めて祝ってあげたの。


 源氏は相変わらず若々しくて夕霧のお兄さんくらいにしか見えないの。艶っぽくて美しいんですって。

 夕霧も顔立ちは源氏とそっくりでステキな男性になっていたのよね。


 内大臣も婿として迎えた夕霧の素晴らしさがよくわかったみたい。どんな縁談も受け入れず独身をとおして娘を一途に想っていたことで、夕霧の誠実さは際立つわよね。

 今までは長女で冷泉帝の妃である新弘徽殿女御の方が華やかだったけれど、今は雲居の雁もとても幸せそうよね。雲居の雁の実のお母さんもこの結婚をとても喜んだの。


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ いく返り 露けき春を すぐしきて 花の紐とく 折に逢ふらん ~

夕霧が内大臣から結婚の許しを得て詠んだ歌



◇「うぅぅぅぅぅ……。よかったねぇぇぇぇ💧」

 こまちちゃん、泣いています。


「うぉ――ん! よかった――!!」

「うう、夕霧くん、頑張ったねぇぇぇぇ」

 他の縁談には目もくれず、彼女のお父さんに認められるまで努力して出世しました。


「うう、夕霧くん、カッコいいぃぃぃぃ」

 お父さんにコーディネートしてもらった衣装で初恋の君を迎えに行きました。

「うぅぅぅぅぅぅぅ💧💧💧」


「雲居の雁ちゃんもよかったねぇぇぇ」

「待ってるのだって不安だったよぇぇぇぇ。ふぇぇぇぇん」

 カレに縁談のウワサもありましたものね。


 はい、こまちちゃん、ティッシュ。

「ありがとぉぉぉ」

 落ち着いて。お水でも飲む?

「あ――ん、よかったよぉぉぉ」

「ゆうぎりくぅぅぅん!」

 ハナをひとかみ。

「かりちゃぁぁぁん!」

 もう1回ハナをかんで。

「うぅぅぅぅぅ――。おぉぉ―――ん!」

 何を話しかけても聞いてない?

「もう1回読んでくる!!」

 





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33.3 8年越しの初対面


☆こまちのおしゃべり

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topics23 ようやく咲いた花、待ちわびた春

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054885414333

よかったよぉぉぉ! 夕霧く――ん!

おめでとぉぉぉ! 雲居の雁ちゃ――ん!!

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