31.5 六条院を離れて

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 そして宮中からの帰りに髭黒は玉鬘を六条院には送らず自分の屋敷に連れてきてしまうの。突然の策略に源氏も怒るんだけど、すでに髭黒は玉鬘の夫だから何も言えないの。

 3月になって源氏は玉鬘に手紙を送るの。(義理の)親子の関係ではありながらそれを超えたような不思議な関係だったから玉鬘も源氏が懐かしいのね。今になって源氏が清い愛情を自分に注いでくれていたと玉鬘は気づき、源氏のことをとっても有難いと思ったみたいね。源氏も折に触れ玉鬘を恋しがるの。


~ かきたれて のどけきころの 春雨に ふるさと人を いかに忍ぶや ~

(春雨がふりしきっているけれど、俺のことを思い出してくれている?)


 こんな歌が源氏から届いて玉鬘は泣いてしまうの。


~ ながめする 軒の雫に 袖ぬれて うたかた人を 忍ばざらめや ~

(こちらでも涙で袖をぬらしているの。あなた(源氏)のことを忘れるなんてできないわ)


 今となっては玉鬘も源氏のことを慕っているのね。

 髭黒は実の親子でもないのにこんなに手紙をやりとりするのはヘンだって笑われてしまって玉鬘はがっかりしたみたい。


 実家に戻った髭黒の妻の病気はその後も治らないみたいなのね。それでも離婚したわけではなくて経済的には髭黒が援助していたの。けれども真木柱は父の髭黒に会うことはできなかったの。髭黒と一緒に暮らしている弟たちがたまに実家に来てお父さんや玉鬘の様子を話してくれるので、自分も男子だったらお父さんに会えたのにって残念がったんですって。


 11月に玉鬘は髭黒の子どもを産むの。男の子ね。髭黒はますます玉鬘を大事にするし、玉鬘のお父さんの内大臣も孫の誕生に大喜びするの。ただ内大臣の息子(柏木)たちは、もしもあのまま入内していたら帝の皇子を産んでいたんだなと思って少し残念な気持ちもあったみたいね。


 一方で宮仕えを希望していた近江の君はそわそわしていて、新弘徽殿女御は何かしでかすんじゃないかって心配なの。内大臣も人前には出るなって言っていたのに貴族たちが大勢で管弦の飲み会をしているときに源氏の息子の夕霧に向かって、

「奥さんがいないんならアタシがなってあげるわよ」

 なんて言っちゃうの。うっわ、めっちゃめちゃイケメンじゃん! って近江の君は盛り上がってるの。

「好きでもないヒトと結婚しませんよ」

 って真面目な夕霧にあっけなく断られたんだけどね。


第三十一帖 真木柱


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ かきたれて のどけきころの 春雨に ふるさと人を いかに忍ぶや ~

手元にいなくなった玉鬘を想って源氏大臣が詠んだ歌


~ ながめする 軒の雫に 袖ぬれて うたかた人を 忍ばざらめや ~

源氏大臣のことを懐かしく想いながら玉鬘が詠んだ歌



◇第三十一帖 真木柱でした。

episode31 翻弄された運命の行先   真木柱

31.1 大事件! 玉鬘の結婚

31.2 玉鬘の結婚の余波

31.3 家族との別離

31.4 玉鬘、宮中へ

31.5 六条院を離れて


 とにかく衝撃的な巻でした。原作では冒頭が源氏のセリフで「このことは口外しないように。帝がご不快に思われてはいけないから」と髭黒に話しているのです。

 え? このことって? 帝がご不快ってどういうこと? 何があったの?

 そして、源氏からこう注意されたのに髭黒は隠していられず、玉鬘のところに通うようになって何日か経って……、と続くのです。

 玉鬘のところに通うって、髭黒が?? えええ? 宮中に行くんじゃなかったの? と冒頭から「!!!」「???」という展開でした。


「本当だよ。宮中に行くはずだったのに。冷泉帝さまと結婚できるはずだったんでしょ?」


 無理やり襲われて、しかもその相手と結婚することになるなんて理解不能です。

 でも千年前のこの国ではこんなことが起きていたのかもしれません。女性にとってなんて生きにくい時代だったのでしょう。女性の尊厳なんて概念もなかったのでしょうね。


「事件にならないなんて信じられないよ」

「そして源氏が怒らないのも信じられないよ」


「そして一番信じられないのは襲われた相手と結婚しなきゃいけないことだよ」


 現代では考えられないエピソードでした。

 




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episode32 すれ違うふたり   梅枝

32.1 可愛い娘の結婚準備

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