31.3 髭黒の娘

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 妻が落ち着いてから玉鬘に会いに行くと、ほんの少し離れていたあいだにまた美しくなったと髭黒は惹かれるの。あまりに愛しいから髭黒はそのまま玉鬘のところに入り浸るようになるのよね。


 何日経っても奥さんの物の怪は消えなくて取り乱してばかりなの。それを見かねた父親の式部卿宮が娘と孫たちを引き取りにくるのね。娘がひとりに弟がふたりいるの。

 奥さんもとうとうあきらめがついたらしくて実家に帰る決心をするの。真木柱まきのはしらという娘は髭黒に可愛がられていて、真木柱もお父さんを慕っているの。最後にもう一度お父さんに会いたいって思うんだけど、玉鬘のところに行っていて帰ってこないのね。そこで真木柱はお別れの歌を詠んで柱の割れ目に差し込んで住み慣れた家を離れたの。


 ~ 今はとて 宿れぬとも 馴れ来つる 真木の柱は われを忘るな ~

(これでもうこの家を離れるけれど、どうか柱だけは私を忘れないでね)


 家族が実家に行ってしまったと聞いた髭黒はあわてて自宅に戻るんだけどもう誰もいないの。残された真木柱の和歌を見て涙ぐんで式部卿宮邸に行って妻に会わせてくれと頼むんだけど、会わせてもらえないの。仕方なくふたりの息子たちだけを連れて自宅に戻ることにするの。(真木柱は女の子だからお母さんと暮らすことになるの)


 それ以来髭黒は妻に連絡してくることはなくなったの。酷い仕打ちをされたと式部卿宮は怒るのね。おまけに式部卿宮の妻はこんなことになったのは源氏の妻の紫の上が後ろで手を引いているからだなんてありもしない噂まで流したから紫の上はとっても傷ついたの。紫の上は式部卿宮の娘だけれど(髭黒の妻とは異母姉妹)、式部卿宮と源氏は仲が悪く、式部卿宮家で紫の上はよく思われていないのよね。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ 今はとて 宿れぬとも 馴れ来つる 真木の柱は われを忘るな ~

髭黒の娘が住み慣れた家を離れるときに詠んだ歌



◇髭黒の娘の詠んだ和歌の「真木柱」がこの巻名になりました。そしてこの娘のことを「真木柱」と呼んでいるようです。大好きなお父さんが他の女性と結婚して、自分はお父さんと暮らした家を離れる。一夫多妻制でも娘にとっては辛い出来事でしたね。


「髭黒も奥さんも子供もいるんだからあんなひどいことしなくていいじゃん」

「玉鬘ちゃんを無理やり手に入れたら、娘の真木柱ちゃんと別れなきゃいけなくなったじゃんか」


 真木柱の母親は物の怪に憑りつかれたりして病気のようですが、髭黒の騒動は子供達の生活環境まで変えてしまいました。


「無茶苦茶だよ。髭黒キライ」


 当時の読者はこのエピソードをどう捉えたのでしょうね。




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31.4 玉鬘、宮中へ 冷泉帝の想い


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