21.3 引き離されるふたり

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 内大臣は大宮さまに文句を言って、雲居の雁を自分の家に連れて行くと言いだすの。息子の内大臣にとっては源氏がライバルでその息子に娘をとられるのが悔しくて怒っているんだろうって大宮さまは思うの。

「雲居の雁にとって夕霧以上のお婿さんなんていないのに」

 これが大宮さまの本音なのよね。

  

 そんなところに夕霧がやってきたので、大宮さまはなりゆきを話したのよ。

 雲居の雁が内大臣家に行ってしまうともう逢えなくなってしまうからと、夕霧は雲居の雁の部屋へと行くんだけど、鍵がかかっていて入れないの。


「空の雁も鳴いているけど、あたしみたい」

 雲居の雁のひとりごとが聞こえてくるの。

「ここを開けて」

 夕霧がそう言うと、ひとりごとを聞かれてしまった雲居の雁は恥ずかしくなっちゃうの。

「秋風が……吹き渡ってるね」

 扉一枚ごしにふたりは切ない秋の夜を過ごすの。

 自分たちが想い合ってお互いを好きでいることがそんなに悪いこととは思えないの。どうしてこんなに大騒ぎになってしまったのかわからないのよね。


 大宮さまは大事に育てた孫との別れを悲しみ、雲居の雁も泣いてばかりいるの。

「若さま(夕霧)と同じく姫さまのこともご主人と思っていたんですよ」

「他の方との縁談など断ってくださいませね!」

「内大臣さまがうちの若さま(夕霧)のことを軽蔑なさるのが我慢ならないんです!」

 夕霧の乳母は雲居の雁にそう言うの。


 夕霧と雲居の雁は少しのあいだだけこっそり会うことができて別れを惜しむの。ふたりは離れ離れでいてもお互いを想っていようと約束をするのね。

「まさか逢えなくなるなんて思いもしなかったよ」

 逢えるうちにもっと逢っていたかったって夕霧が雲居の雁にそう言うの。

「わたしもあなたと同じ気持ちよ」

 雲居の雁もツライわね。

「(僕のこと)恋しいって思ってくれる?」

 夕霧が聞くと雲居の雁は小さくうなずくの。

 

 ふたりをさがしていた雲居の雁の乳母がやってきて、

「六位の人(夕霧の冠位=身分)が姫さまのお相手なんて情けないこと」

 と夕霧のことをバカにしたの。夕霧は自分の冠位が低いことを悔しがったわ。

 

 ~ くれなゐ《い》の 涙に深き 袖の色を 浅緑とや 言ひしをるべき ~

(血の涙に染まっている袖の色を六位の浅緑の色だとバカにするの?)


 とうとう雲居の雁は内大臣家に連れて行かれてしまったの。夕霧は夜通し泣いて、大宮さまにも会わないでそっと二条院に帰ったわ。


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ くれなゐ《い》の 涙に深き 袖の色を 浅緑とや 言ひしをるべき ~

夕霧が身分を侮辱されたときに詠った歌



◇幼なじみでお互いを想い合っているふたりが引き離されてしまいました。幼いながらも想い合っているのに、その感情がいけないことだと否定されてしまいました。


「いいじゃん。いとこ同士でも結婚していいんでしょ?」

「身分や家柄だって釣り合ってるんでしょ?」

 夕霧の身分が釣り合っていないのと、内大臣は娘を入内させたいので源氏の息子はイヤなのでしょうね。


「幼なじみ」「お互いが想い合っている」「交際を反対されて引き離される」

 今でも通用するラブストーリーのテッパン設定だと思いませんか?

 千年も前の小説にも使われていたのですね。というか、紫式部先生が発祥? かもしれません。


「ホントだ。今でもよくある設定だね」


「わたしって群れから離れた雁みたい」

 そんな風につぶやいたことから彼女のことを「雲居の雁」と呼ぶようになります。原作では「姫君」「女君」としか書かれていません。同じく夕霧も本名ではありません。夕霧の名前の由来は第三十九帖「夕霧」によります。


「それにしてもふたりが可哀想だよ。なんとかならないの?」

「どうする? どうしてあげたらいい?」



NEXT↓

21.4 その後の夕霧


☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内

夕霧くんと雲居の雁ちゃんトピックスだよ。ぜひ来てみてね。


topics13 千年前からテッパン?

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054882950136

ホントだ。千年続くテッパンストーリーだね。


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