20.2 朝顔の君の返事

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 朝顔の君と一緒に住んでいる叔母さま(桐壺院の妹)もいいご縁だから源氏と結婚したらいいわ、と勧めるの。そんな噂は紫の上にも届くのね。また新しい人が加わるの? って紫の上は戸惑うの。源氏は紫の上に朝顔の君の話はしていないの。

 紫の上は結婚以来、誰もが認める「源氏の最愛の人」だったんだけど、自分より身分が高い朝顔の君と源氏が結婚したら彼女が正室になっちゃうんじゃないかと心配するの。葵の上が亡くなってから「正室」はいなかったのね。きっと源氏は自分のことを捨てたりはしないんだろうけど、それでも愛情は薄れちゃうんじゃない? って落ち込んじゃうのね。


 ある雪の日に源氏は朝顔の君の叔母さまのお見舞いに出かけると紫の上に言うんだけど、紫の上は返事もしないの。

「なんか、機嫌が悪いんだね。あんまり一緒にいすぎるのも見飽きるんじゃないかって思うから出かけてるんだよ?」

 源氏は紫の上にそう言うの。

「見飽きられてるのはわたしでしょ?」

 紫の上を怒らせているって源氏は焦るんだけど、相手先との約束もあったから出かけたの。


 叔母さまへのお見舞いを終えて源氏は朝顔の君の部屋へと行くの。雪降る中の月明かりで淡く美しい夜なの。もう結婚の望みがないのならはっきり伝えてほしいと源氏は言うの。朝顔の君は若いころに父親の桃園式部卿宮が源氏との縁談を勧めたときにもお断りしたのに、結婚適齢期をすぎた今はとてもお受けできませんと伝えたの。


~ つれなさを 昔に懲りぬ 心こそ 人のつらさに 添へてつらけれ ~

(昔からフラれっぱなしだったけど、キミのつらい想い出にしか俺は加わらないんだな)


 そんな源氏の歌に女房はあんまりにもお気の毒だからと朝顔の君に返歌をお願いするの。


~ 改めて 何かは見えん 人の上に かかりと聞きし 心変はりを ~

(他の人は気が変わるなんてことも聞くけれど、わたくしの心は変わらないのよ)


 そんな返事を受けて想いがかなわず帰って行く源氏を女房たちは「もったいないっ!」って残念がるの。けれども朝顔の君は多くの源氏の恋人たちが体験している源氏の惚れやすさに悩まされたくなかったのね。決して源氏のことはキライではないのよ。源氏の人柄を素敵だと思っているんだけど、他の人みたいに源氏の見た目を好きになったと誤解されるのが嫌だったんですって。友人同士として手紙のやりとりをしたり、会ってお話をしたりするお付き合いをしながらそろそろ出家する準備もしていきたいと思っているみたいね。


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ つれなさを 昔に懲りぬ 心こそ 人のつらさに 添へてつらけれ ~

源氏大臣が朝顔の君に贈った歌


~ 改めて 何かは見えん 人の上に かかりと聞きし 心変はりを ~

朝顔の君が源氏大臣に贈った歌



◇唯一といってもいいかしら。源氏に落ちなかった朝顔の君です。源氏のことは好きだけれど、大勢の女性の中で源氏を取り合うようなことをしたくない、他の人にツライ思いをさせてくもないし、自分もしたくない。風流な手紙のやりとりをする良き友人でいたい。


「源氏に落ちなかったお姫様。レアケースだね!」

 男性に好かれて求められて受け身で生きていくのが定番であったであろうその時代に流されず自分で生き方を探し求めたお姫様ですね。


「いいと思うな。結婚だけが女子の幸せじゃないよね。朝顔の君さん、カッコいいね」

 このあとも季節ごとの風流な手紙のお付き合いは続くようです。珍しい源氏の女友達ガールフレンドですね。



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20.3 源氏の恋バナ

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