13.3 最高のカノジョ

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 春ごろからはじまった源氏と明石の君との手紙のやりとりなんだけど、そこからは進まないのよね。明石の君はやっぱり身分が違いすぎるから無理ですと源氏の気持ちを拒むの。私は源氏の君が明石にいるときだけ手紙のやりとりのお相手ができればそれだけで十分だわ、いつかは京に帰ってしまう源氏の愛人にはなりたくないわって思っているの。

 そう言われるとより盛り上がる源氏は明石入道に協力をお願いするの。明石の入道もこっそり暦を占って吉日を選んで明石の君の部屋を綺麗に整えて結婚の準備をするの。ようやく源氏は明石の君のいる山手の棟に行けるようになったのね。月の美しい夜、山手の棟まで馬で行く途中、紫の上のことを源氏は思うの。できることならこのまま馬で京に行ってしまいたいって。


~ むつ言を 語りあはせん 人もがな うき世の夢も なかば覚むやと ~

(あなたと付き合えればこの世の辛さから救われるんだ。慰めてほしいんだ)


 源氏は必死で明石の君を口説くの。


~ 明けぬ夜に やがてまどへる 心には いづれを夢と 分きて語らん ~

(暗闇で彷徨う私には夢と現実の区別がつかないわ)


 なんとなく彼女の雰囲気が六条御息所に似ているなって源氏は思ったらしいの。そしてとうとうふたりは結ばれたの。明石の君は源氏が想像した以上に上品で素晴らしい女性ひとだったの。


 こうして明石の君という恋人ができたことを紫の上にも手紙で知らせるの。ただ直接的には書かないで

「夢を見てしまったんだ」

 なんて言い方で。それからこんな歌を添えたの。


 ~ しと づぞ泣かるる かりそめの みるめは海人あまの すさびなれども ~

(キミのことを思い出すと泣けてくるんだ。こっちでのことは遊びだからね)


 紫の上は文句を言ったりはせずに一首だけ和歌を詠んだの。


 ~ うらなくも 思ひけるかな 契りしを 松よりなみは 超えじものぞと ~

(あなたのこと信じてたのに。恋人を作るなんて絶対にないわって)


 こんな歌が返ってきて最愛の人を傷つけたと後悔した源氏は少しのあいだ明石の君ともデートしなくなるの。浜辺の棟でひとりで過ごしながら風景画を描いたりしているみたい。そうなると明石の君も「やっぱり私なんて」と落ち込んじゃうの。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ むつ言を 語りあはせん 人もがな うき世の夢も なかば覚むやと ~

源氏が明石の君に初めて会ったときに口説いた歌


~ 明けぬ夜に やがてまどへる 心には いづれを夢と 分きて語らん ~

明石の君が源氏に返した歌


~ しと づぞ泣かるる かりそめの みるめは海人あまの すさびなれども ~ 

源氏が彼女ができたことを紫の上に伝えた歌


~ うらなくも 思ひけるかな 契りしを 松よりなみは 超えじものぞと ~

源氏が他の女性と付き合っていることを聞いて紫の上が返した歌


◇半年以上口説いて明石の君を恋人にしました。そしてバカ正直に紫の上に報告します。ひとりで二条院自宅の留守を守りながら源氏を待っている紫の上は絶望を味わいます。評論家は「このとき紫の上の心が死んだ」と言う人もいます。


「まさか浮気するなんてね」

 こんな手紙をもらった源氏はしばらく明石の君のところに通うのをやめます。そうなると「しょせんワタシは現地妻よね」と明石の君が傷つきます。結局ふたりの女性を傷つけていますよね。


「ツラいから慰めて」と源氏は明石の君に和歌を贈ります。

「こっちでのことは遊びだからね」紫の上にはこんな和歌を贈ります。源氏のご都合主義がよくわかると思いませんか?


「渚ちゃん……」

 こまちちゃん、握りこぶしが震えています。

「おのれ、バカ源氏……」

 呼び捨ての上に枕詞までついてしまいました。


「なぁにがこっちのことは遊びだからね、だとぉぉぉぉぉ」

「遊びだからって聞いて紫ちゃんが『それならオッケー♬』って言うわけないじゃん! 明石の君だって自分はイヤだって言ってたのに遊びって言われるなんて許せない!!」

「源氏のアホ! ばかぁぁぁぁ!!」

 

 困りましたね。ちょっと熱を冷ます? こまちちゃん、アイスティー飲む?



NEXT↓

13.4 最愛の妻の元へ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る