11.2 凪いだ恋

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 源氏は最初の予定通り麗景殿女御のお屋敷に向かうの。ひっそりとしていて仕える人達も少ないけれど、女御さまは品があって優しいままのご様子だったみたい。二十日目の月が昇り、庭の橘の木からは懐かしい香りがして、ホトトギスも鳴いているの。


~ 橘の 香をなつかしみ 時鳥ほととぎす 花散里を たづねてぞふ ~

(橘の香りを懐かしんで飛んできたホトトギスのように私もこの橘の花の散る里を訪ねてきました)


 女御さまも和歌を返して丁寧に源氏とお話したのね。時が経っても変わらない態度でいてくれる女御さまは素晴らしいなと源氏も感じたみたいね。



 それから花散里の待っている部屋へと源氏は行くのね。普段はちっとも逢いに来てくれない源氏なのに、その美しい姿を見るとそんなことも彼女は忘れてしまうみたい。そして彼女は源氏を責めることもなく幸せそうに笑っているの。源氏もそんな優しい彼女に癒されるの。でまた「恋しかったんだよ」なんて言葉を彼女に贈るんだけど、まあそれもそうそう嘘ではないみたいなのよね。


 長い間逢いに行かないと、心変わりすることだってあるでしょうね。そうなるとあの中川のオンナの態度を責めることはできないなと源氏は思うの。それを思うといつでも変わらない態度で優しく接してくれる花散里がやっぱりいいなと源氏はしみじみ想ったんですって。


第十一帖 花散里


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 橘の 香をなつかしみ 時鳥ほととぎす 花散里を たづねてぞふ ~

源氏宰相大将が麗景殿女御に贈った歌


◇第十一帖花散里でした。

episode11 ココロ安らぐ里

11.1 心優しいカノジョ

11.2 凪いだ恋


 また新しいカノジョが登場しました。花散里の君。物語では今回登場でしたが、源氏との出会いは少年時代ですので時系列だとずっと前ですね。

 今まで登場した「源氏から一番愛されたい、ナンバーワンになりたい、他の恋人なんていなければいいのに」なんて思ったりする女性たちとはタイプが違う花散里さま。

 女御さまの妹で身分も低くないけれど、とても控えめ。逢いに来てくれるだけで幸せ。逢えないときはあなたのことを想っているからそれだけで幸せ。また逢える日が楽しみだわ。今のままで十分幸せ。


「確かに今までのカノジョさんにはいないタイプだね」


 同じ状況でも中川のオンナは、ちっとも逢いに来てくれないじゃない、また別のオンナのところに行ってるんでしょ、まったくムカつくわ、って思っていたでしょう。

 ふたりを比べると花散里さまの性格のよさというか穏やかさが際立ちますね。源氏もいつも心優しいカノジョに癒してもらいます。


「計算とかじゃなくて本当に優しいんだね」


 彼女、この先もずっと源氏に大切にされます。大豪邸の六条院の住人にもなります。激流下りのような激しい恋ばかりをしている源氏の君もたまには波風の立たない穏やかな湖面に舟を浮かべるような恋もしていたのですね。


「きっといいひとなんだろうね。花散里さん」


NEXT↓

episode12 とりあえず謹慎します。   須磨

12.1 都を離れる決心






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