7.3 愛と罪の証

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 予定日とされる日が過ぎてもなかなか藤壺の宮さまのお産は始まらなかったの。やっぱり産まれてくる子はあの過ちの日の自分の子なんだ、と源氏は思うの。ようやく生まれた赤ちゃんは男の子。源氏の君にそっくりな赤ちゃんに藤壺の宮さまはますます罪の意識で落ち込んじゃうの。この皇子を見たらあの罪がバレてしまうわ。源氏は会いたいと王命婦に頼むけれどやっぱり会わせてはもらえない。


~ いかさまに 昔結べる 契りにて この世子の世にかかる 中の隔てぞ ~

(前世でどんな因縁があったのでしょうか。(今世この子の代で)こんなに障害があるなんて……)

 

 愛する藤壺の宮さまにも愛しい我が子にも会えない源氏がこんな哀しい歌を詠むの。


~ 見ても思ふ 見ぬはたいかに 歎くらん こや世の人の 惑ふてふ闇 ~

(皇子さまをご覧になっていらっしゃる宮さまも憔悴なさっていらっしゃいます。お逢いになれないあなたさまのお嘆きもいかばかりでしょう。これがおふたりの闇なのでしょうか)

 

 藤壺の宮さまの代わりに王命婦が返事を書いたの。王命婦は源氏と藤壺の宮さまのどちらの気持ちも痛いほどわかるのね。

「どちらもお気の毒でなりません」

 王命婦はそう言って泣いたの。


 宮中に戻った藤壺の宮さまと若宮さまを桐壺帝はそれはそれは歓迎して大事にしてくれるの。赤ちゃんが源氏に似ているのも、美しいものは似かよるんだねって怪しむこともなかったみたい。宮さまと源氏は生きた心地がしなかったでしょうね。


 当たり前だけど自分が父親だなんて名乗り出ることはできないし、わが子として育てることもできない源氏は

「花を育てるみたいに我が子として育てるのは無理だとわかりました」

 という手紙を宮さまに送ったの。王命婦もあまりにも源氏の君がお気の毒だから、宮さまに少しだけでもお返事をってお願いしるの。

「(手紙をくださった)あなたに縁があると思うと、この子のことを見るのが辛いのです」

 そんなお返事を書かれたの。いつも返事はもらえなかったから、こんな辛い内容の手紙でもお返事をいただけたことが嬉しくて源氏は涙を流したの。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ いかさまに 昔結べる 契りにて この世子の世にかかる 中の隔てぞ ~

藤壺の宮にも我が子にも会えない源氏が悲嘆にくれて詠んだ歌



◇ふたりの子が産まれました。公には桐壺帝と藤壺の女御さまの子で第十皇子となります。(源氏は第二皇子)

 源氏にとっては初めての子ですが、父親と名乗り出ることはできません。ですから表立っては兄として、そして心情的には父としてこの皇子を全面的に支えていきます。


「源氏くんにそっくりの赤ちゃんってヤバくない? バレちゃうんじゃない?」

 源氏くんはお母さんにそっくりです。そのお母さんと似ているのが藤壺の宮。ということは源氏くんと藤壺の宮さまも似ている???

 それなら赤ちゃんはお母さん似ということで押し切れる?


「でも源氏くんにそっくりならイケメン赤ちゃんだね」


NEXT↓

7.4 少女の成長



☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内

関連するトピックスがあるよ。よかったら読んでみてね。


topics2 物語は繰り返す?

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054882061361


う――ん、身代わりはイヤだよね。しかも「好きだった人に似てるから」なんて知らされたらもっとイヤだよね!

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