6.3 クチコミの現実

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 大輔の命婦との約束も破り、姫の部屋に入ってしまった源氏はそのまま姫と一晩を過ごして、明るくなる前に二条院いえに帰ったの。首をかしげながら。あまりに反応がなかったのね。女の子と一夜を過ごしたってカンジじゃなかったみたい。

 一応、一夜を過ごした女の子に贈る後朝きぬぎぬの歌も贈るんだけど、やっと届いた返事の字も上手くなく、和歌の出来もイマイチで「やっちまったかな」と源氏は後悔するの。


 まだ少女だけど愛くるしい紫の君と遊んであげたりしていると、彼女の所に通うのもぶっちゃけ面倒くさいんだけど、まぁ手は出してしまったので、時々は通うことにするみたい。

 ある雪の降った朝、戸を開けて降り積もった雪に反射する太陽の光のもと、源氏は初めて姫の顔を見てボーゼンとするの。可愛くなかったのよ。特に鼻が高いんだけど、先が曲がっていて赤かったの。とても痩せていて着物の上に毛皮を羽織っていたのもおばあさんみたいに見えたの。


「あ、あ、あ、朝日で軒のつららは解けたのに、ど、ど、どうして氷(キミ)は溶けないんだろう……」

 そんな歌を源氏は詠むんだけど、姫君はとっさに返歌ができなくて困っていて、見ているのもツラくて家に帰るの。


 美人でなくてもフツー程度なら源氏もここまでの衝撃は受けなかったんだけど、普通でもない容姿に可哀想になっちゃったみたいなの。でもここからが源氏の優しいところなんだけど、美人じゃないから、なかったことにして知らん顔ということはしないのよ。きっと他の男は我慢できないだろうから、自分が責任をとって生活の面倒を見てあげることにするの。もう色恋はなしで付き合っていこうぜというカンジかしらね。

 姫も元々が皇族でスレていない素直な性格だから、源氏も「ま、いっか?」ってことになったみたい。



To be continued ✈✈✈



◇今と違い電気もなく、明かりも少なかったので夜のデートではあまり相手の顔が見えないみたいですね。そして夜を一緒に過ごしても明るくなる前に帰るのがマナーのようです。明るくなるまでに帰らないと男子としてポイントが下がるみたい。(いいオトコは長居しないでスマートに帰る)なので、かなり親しくなってから一緒に朝を迎えてそのときに初めて源氏は彼女のお顔を見たようですね。


「初めてのデートなのに暗い夜に来て明るくなるまでに帰るんだ」

「っていうか、お姫様は源氏くんと付き合ってもいいって思っているの?」

 そうね。ラブレターの返事もしていないもんね。そこにグイグイ源氏くんの登場。強行突破に既成事実……。


「美人じゃなかったって言われたってさ、そっちがグイグイ押してきたんじゃん?」

 おっしゃるとおりです。こまちちゃん。


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6.4 可愛い紫の君




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