4.3 隠れ家デート

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 一方でこの前の夕顔とも付き合い始めたの。五条の夕顔のつましい家でデートしてたのね。夕顔はおっとりとして、純真無垢なイメージで、高貴な感じはないけれど、どこなく品がある不思議な魅力のある女性だったみたいよ。朝帰ったあとも会えない昼間も逢いたくて苦しくなるほど源氏は恋に落ちたみたいよ。わざと身分の低い狩衣かりぎぬを着て夕顔の家に通うの。

 夕顔は自分が何者であるか話さなかったみたい。源氏も自分が源氏宰相中将だとは名乗ってはいなかったのね。お互い身分も関係なくそれぞれの存在を愛し合っていたというところかな。

 でもね、源氏は前に頭中将とうのちゅうじょうが話していた撫子って元カノじゃないかって思うようになるの(episode2 2.1 雨夜の品定め)。けれども夕顔が素性を隠そうとしているから源氏もわざわざ頭中将元カレのことを聞きだそうとはしなかったの。


 源氏が住んでいる貴族の豪邸とは違って、夕顔の家は庶民の家だから近所の物音とかが騒がしく聞こえるの。高貴な身分の源氏にとっては初めての体験で物珍しいのよね。でも夕顔のことが大好きだからそんな環境も悪く思わなかったみたいなの。


「ね、たまにはさ、ずっとふたりきりで過ごそうよ。ちょっとでかけない?」

 ある明け方に源氏は夕顔を外へと連れ出そうとするの。そう、この頃の女性のお出かけなんて滅多にしないこと。夕顔の家の誰にも知らせず、右近うこんという侍女をひとりだけ連れて外出したの。


 こっそり隠れ家に夕顔を連れてきて、ふたりは一日中一緒に過ごしたの。ただあまり手入れの行き届いていない家だから、夕顔は薄気味悪いって怖がっているの。夜になって少し眠った源氏だったけど、ある美女が自分のところへ訪ねてこないと恨み言をいう夢を見て目を覚ますの。


 灯りも消えていてあたりは闇。夕顔も侍女の右近も怯えているの。夕顔を右近にまかせて源氏は人を呼びに行くんだけれど、戻ってくると夕顔はすでに息をしていないの。そこへさっき夢で見た美女が幻となって現れて、一瞬で消えてしまったの。


「目を覚まして。俺を悲しませないで」

 源氏は夕顔を抱きしめてそう言うけれど、夕顔の身体は冷たくなっていくの。

 どうしてこんな寂しいところに連れてきてしまったんだろうって源氏は後悔するのよ。


 夜が明けて、家来の惟光と相談して、このことがウワサにならないように内密に済ませることにするのね。夕顔の亡骸は惟光の知り合いの家に移して、源氏は二条院へと一旦戻ったの。


 それでもやっぱりもう一度逢いたいと源氏は夕顔の亡骸と対面して涙するの。

「もう一度声を聞かせて。キミを愛しているんだ。俺を置いていかないで」

 ようやく出会えた心のよりどころにできる彼女だったのに、とね。周りも気にせず源氏は泣いたの。主人を亡くした右近は源氏が二条院に連れて帰り、源氏に仕えるようになるの。



To be continued ✈✈✈




◇いろいろな女の人と付き合っていたけれど、うまくいかなかったり、疲れていた源氏を癒してあげた夕顔の君。ようやく心を許せる女性に出逢えたと思っていたのに突然亡くなってしまいましたね。


「夕顔さん可哀想に……。どうして亡くなっちゃったの?」

 物の怪もののけ(魔性のもの)に憑りつかれたなんて書いてあるようです。


 どうやら実際のモデルケースがあったみたいです。ある皇族と愛人が隠れ家デートして、彼女が亡くなってしまったとか。紫式部はこんな風に本当にあった事件などを物語にとりこんでいたんですって。



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4.4 亡くした夕顔、旅立つ空蝉

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