カムチャッカ防衛戦 其の一


 作戦は発動されました。


 まず、極秘に日本帝国政府に要請をしました。

 千島列島の哨戒を厳重にして、太平洋へ、中国の艦艇の出さないようにと……


 もっとも、ほとんど中国の艦艇は残っていないはずですが、そこらの漁船などに乗って、破壊行動に出られては面倒ですから……


 占守海峡――占守島と、カムチャッカ半島最南端のロパートカ岬との間にある海峡――は、こちらで防衛すると、日本帝国はいってくれたようです。


 次に残っていた、六隻の潜水艦を全て動員して、オホーツク側を哨戒します。

 インヴィンシブル以下の揚陸艦隊は、積める限りの航空兵力を積み込み、パラポリスキー地峡の太平洋岸沖合に展開します。


 インヴィンシブル級には、ロシアの北東軍集団所属の、第3独立海軍歩兵連隊が乗り込んでいます。

 この部隊は、北東軍集団所属の最後の予備兵力ともいえる部隊、それを投入したのです。


 ナーキッドの傭兵部隊は、パラポリスキー地峡のこちら側に集結、その近くに、急遽作られたヘリの発着所には、輸送ヘリコプターMi―26が待機することになっています。


 そして、予定時刻、上空に飛来したAn―124ルスラーンが、サーモバリック爆弾ATBIPを投下したのです。


 第3独立海軍歩兵連隊が、敵前上陸をします。

 そしてサクラ・ハウスが、陸戦ロボット部隊を率いて上陸します……


 それは高さ5メートルの人型のロボットで、機敏に行動できます。

 ロボットは、上空の発電衛星から受電する電力を使用して、右手に装着されている巨大な汎用ビーム砲を動かします。


 今回、ロボットの中の何体かは、さらに巨大なカチューシャのような、投擲(とうてき)兵器を装着しています。


 これはきわめて極小の、対人専用地雷をまき散らす装置で、敵を分断しながら地雷原を構築していく作戦です。

 この極小の対人専用地雷は、今回の為に、美子さまの側近と思われる方が開発したとか聞いています。


 これは、人の特徴的な体内電気だけに反応すると、聞いていますが……額面通りかは定かではありません……

 ただ人が殺傷範囲に近づくと、爆発するのは確かです。


 三十五体の、巨大な陸戦ロボットが敵を分断、右側に地雷原を作っていきます。

 左では、第3独立海軍歩兵連隊が確保した空き地に、輸送ヘリコプターMi―26が、次々と傭兵部隊を空輸していくます。


 定員80名、これをありったけのMi―26、十二機がピストン輸送しています。

 一回に480名、ヴィーゼル空挺戦闘車を30台、六回の往復で運び切りました。

 その後も、軍需物資をどんどん空輸しています。

 沖合からはハリアーが爆撃、パラポリスキー地峡防衛ラインに押し寄せた敵は、徐々にオホーツク海側に追いやられています。


 ただ中国軍も大変な戦意です。

 降伏など眼中になさそうで、麻薬でも打っているのでしょうか?

 銃弾を身に受けても、銃の引き金を放さないし、自爆覚悟で突進してくるのです……


 ほとほと手に余る……ロシアの北東軍集団の兵士は、かなり腰が引け出しています。


 しかしナーキッドの傭兵部隊は、テロなどで人の残酷な面を散々見てきた部隊、動じないようで、無慈悲に戦闘を行っています。


「いいか!敵を殺しそこなったら、味方が死ぬぞ、こいつらには、降伏などの考えはないのだ!」

「相手は死など恐れていない!必ず止めを刺せ、それが生き残るコツだ!」

 英語で、このような声が聞こえてきます。


 サクラ・ハウスは黙々と、地雷原を構築しながら敵を分断していきます。

 徐々に敵は崩れ、後退しながらパラポリスキー地峡防衛ラインから離れていきます。


 とうとうサクラ・ハウスは地雷原を、毎時10キロの勢いで構築しながら、巾百キロのパラポリスキー地峡に、防御用の地雷原を設置し終わったのです。


「発、サクラ・ハウス隊長、宛、北東軍集団の司令部、報告、我、地雷原構築完了」


 これを受け、パラポリスキー地峡防衛ラインに張り付いていた、北東軍集団に大攻勢が下命されました。


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