カムチャッカ防衛戦 其の二


 各所で中国軍は撃破、殲滅されていきますが……中国軍の最精鋭と思われる部隊が突破、まずはパラナ――カムチャッカ半島のオホーツク海側にそそぐパラナ川の上流八キロのところにある、人口約四千名の町、コリャーク管区の中心都市――に向かって進軍してきたのです。


 味方の傭兵部隊と、北東軍集団は寡兵で中国軍を包囲しているので、追いかけるわけにはいきません。

 ハリアーの一部がこの突破した中国軍の上に襲い掛かりますが、彼らは分散し、巧妙に隠れながら進軍してきます。


 どうやら帰還する気は無いようで、ひたすらロシア軍を殺そうとしているみたいです。


 防衛ラインの内側にいた部隊は、ほとんど負傷兵だらけの極東ロシア軍の残存部隊。

 しかし彼らは急遽、銃を持ち、パラナに集結しました、といっても三千五百名……

 中国軍は三万名程度……これでは戦にもなりません……

 サクラ・ハウスはこの時、パラポリスキー地峡のオホーツク海側に達していましたから、全速でパラナに向かうことになりました。


「急げ!積み込めないロボットは後からこい、上杉と田中は、残ったロボットを指揮しながら、全速で追ってこい!」

 急遽呼び寄せた、輸送ヘリコプターMi―26でも陸戦ロボットは重すぎて輸送できないのです。


 高倉隊長は五台のヴィーゼル空挺戦闘車改二だけを率い、すぐに出発します。

 いよいよとなったら、奥の手である発電衛星の集光した光を、地上に放出させるつもりです。


 ただこれを使用すると、一時的に供給電力が低下しますので、本当に最後の最後に使うものです。


 空輸された、五台のヴィーゼル空挺戦闘車改二は間に合いました。

 すぐにその真価を発揮、特に放電砲は敵を焼き焦がしています。


 それでもパラナは包囲され、一部の中国軍は南下を開始します。

 サクラ・ハウスのヴィーゼル空挺戦闘車改二は、それを追いかけ、中国軍をパラナ近郊まで押し上げました。


 その頃、陸戦ロボット部隊は全速で走っていますが、間に合いそうにありません。

「田中大尉、装備を放棄して、軽くなりましょう!」

「それは私も思うが、ここは戦場だぞ、おいそれとは外れないぞ」

「右腕を切り捨てましょう、多分汎用ビーム砲を使えば切断できるはず、最後の一体はここに放置、後で取りに来ればいい!」

「……」

「迷っている暇はないです!」


 忍にいわれて田中大尉も決断、三十四体のロボットは、右手を切り捨て重量を軽くし、全速で走ったのです。

「早い!これなら間に合う!」


 意外にビーム砲は重かったようで、重量を軽くしたら百キロ近くの速度を出しました。

 ヴィーゼル空挺戦闘車改二が追い付けなくなり、急遽、輸送ヘリコプターを回してもらいました。


「Mi―26はいま手一杯だ!別の輸送ヘリでいいか!」

「ヴィーゼル空挺戦闘車二台だ、六トンを運べればいい、とにかく急ぐ、遅れるとパラナが壊滅するぞ!」

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