ナーキッドの軍需部門


「上杉忍、臨時にサクラ・ハウスに転属となる、民間人担当として、カムチャッカへ同行してもらう」

「陸軍の調布飛行場に、チャーターした輸送機が待機している、いま緊急の援助物資などを積み込み中だ」


「軍需物資はアメリカから購入して、昨日あたりアンカレッジを出航した、明日にはペトロパブロフスク・カムチャツキーの、アバチャ湾につくはずです」


 翌朝、サクラ・ハウスは、調布飛行場に待機していた、陸軍のYS11――戦後、初めて開発された双発ターボプロップ機、ここでは陸軍も使用としている。――に乗り込み、釧路空港、日本帝国領でもある千島の択捉島、占守島を経由して、ペトロパブロフスク・カムチャツキー近郊にある、エリゾヴォ空港にたどり着きました。


 ペトロパブロフスク・カムチャツキーは、騒然としていました。


 極東ロシアから、着の身着のままで逃げてきた人々、膨大な負傷者、その中、極東ロシア軍は守備隊などすべての戦力を、カムチャッカに集結しています。

 これで何とか、暴動を抑えているようです。


 エリゾヴォ空港には、巨大な輸送機が駐機していました。

 An―225ムリーヤ、ロシア帝国が完成させたが、あまりに巨大なため、持て余していたのをナーキッドが近頃購入したものです。


 アイスランドのレイキャネース・ハウスに所属しており、いつもはケプラヴィーク国際空港に常駐しています。

 さらにはナーキッド所有のAn―124、ルスラーンも二機駐機していました。


 このルスラーンは、爆撃も可能なようになっているとのこと、ロシアから譲渡された、サーモバリック爆弾ATBIPを積み込めると噂されています。


 この巨大輸送機三機で、ナーキッドの軍需部門が、民間警備会社として偽装していた傭兵部隊、約五千名と装備をピストン輸送したそうです。

 なんせ、An―225ムリーヤになると、一回に約1500名は運べると聞いています。


 さらには数少ないナーキッドの戦闘航空隊、アイスランドに展開している、ハリアーGR.9改戦闘航空隊、二隊八機。

 さらに買主を探していた、イギリスの72機のハリアーGR.9を購入、再整備してナーキッドの空軍力を飛躍的に向上しようとしていたのですが、それもカムチャッカ方面へ転用したのです。


 72機のハリアーは、空中給油を繰り返し、なんと大西洋を横断、アラスカ経由で、このエリゾヴォ空港に飛来してきたようです。


 残存していた極東ロシアの航空機も、ここへ終結していました。

 数はあまりありませんが、エアロフロートの輸送ヘリコプターMi―26が忙しそうに離発着しています。


 民間用ですので、核戦争が勃発した瞬間に、退避するように命じられたとか、聞きました。

 このヘリで前線の負傷兵を、全力で後送しているようです。


 ナーキッドの戦闘航空隊の、戦闘ヘリ小隊四機も駐機していました。

 信じられないことに、運んだのはイギリスのモスボール化されていた軽空母、インヴィンシブルだそうです。


 世界がきな臭くなり始め、中国が中華モンゴル共和国へ大攻勢をかけた時点で、ナーキッドは巨額の資金で、インヴィンシブルをイギリスから購入、突貫工事で改装していたものです。


 さらには退役して、売られようとしていた、インヴィンシブル級の三番艦アーク・ロイヤルも購入、改装予定でしたが、間に合わないので、急遽インヴィンシブルとともに回航してきたようです。


 さらには、退役したベイ級ドック型補助揚陸艦ラーグスベイも、オーストラリア海軍に断りを入れて購入しています。

 V22オスプレイも運用できますので、これはこのまま使用、後日、大改装することにしているそうです。


 インヴィンシブルは満載二万二千トン、速力は28ノットとも30ノットともいわれ、ラーグスベイは満載一万六千百トン、速力は18ノット、さらには護衛の艦艇も従えています。


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