美子さまの贈り物


 たまたまオーバーホールを終え、訓練中で北太平洋に出ていた、ロシア帝国海軍のスラヴァ級ミサイル巡洋艦――満載一万一千二百八十トン、速力は34ノット――ヴァリャークとその護衛駆逐艦、ソヴレメンヌイ級駆逐艦――満載七千九百四十トン、速力は33.4ノット――であるベズボヤーズネンヌイ、ボエヴォイ、ブールヌイ、ブィーストルイです。


 ウラジオストックの太平洋艦隊は壊滅していますが、ここペトロパブロフスク・カムチャツキーには、北東軍集団に所属する小艦隊が残っていました。


 主力の原子力潜水艦部隊である、第16潜水艦戦隊と呼ばれる部隊は、中露核戦争で巡航ミサイルを撃ち尽くし、無力になっています。


 残っていたアクラ級もかなり古く、退役直前で哨戒警備ぐらいにしか使用できないでしょうが、三隻が稼働中です。

 このほかに第182独立潜水艦旅団と呼ばれる、キロ級ディーゼル潜水艦三隻の部隊が残っています。

 この六隻の潜水艦で、二隻ずつ三部隊を編制し、ペトロパブロフスク・カムチャツキーの沖合を哨戒しているようです。

 港湾警備は、ロシア帝国海軍の北東軍集団所属の第66小型ミサイル艦大隊の、四隻で行っているようです。


「しかし高倉隊長、ナーキッドの増援部隊と、ロシアの北東軍集団だけでは、戦力不足ではありませんか?」

「航空戦力と少数の海上戦力は、哨戒するので手一杯、相手は膨大な兵力の中国軍、パラポリスキー地峡の防衛線は突破されると考えますが」


 田中芳恵さんが口に出しますと、

「大丈夫、美子さまの贈り物があるの、これはナーキッドの最高機密兵器だそうで、ほんの二三人しか、詳細は知らないらしいのよ」


「だけど、試作品が完成し、増加試作の全てを回してくださったの」

「四十体しかないけど……ラーグスベイが運んできたの……」


 ラーグスベイが運んできたのは……この後、活躍することになる、惑星制圧用陸戦ロボットの試作品……精密なロボット戦闘兵団でした。


 サクラ・ハウスは、この陸戦ロボット部隊を指揮する為とともに、ナーキッド部隊と、極東ロシア軍との連絡調停の役目を担ってきたのです。


 まぁ何と云っても、美女が間に立てば、いきり立っている軍人さんたちも、角突き会うことが少なくなるでしょうから……

 増援部隊は、気の荒い傭兵さんですからね……


 忍は美子の考えを、このように理解したのです。


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