ミルクにはカルーアを


 このころになるとサクラ・ハウスのメンバーにも、ヴィクトリア朝末期の女性用軍服、つまりはナーキッドの軍服が支給されています。

 一応、礼服代わりのようです。


 ヴィーナスの惑星記号と、ヴィーナスの象徴といわれる、赤いバラを組み合わせた紋章が、徽章としてつけられています。

 青木紅葉さん、良く似合っています。


 背が高く、かなりスラリとしたスタイル、ただ相当に引き締まった体で、男装したら間違いなしに宝塚……

 女学生の憧れの的になりそうです。


 チョーカーを不可視にしていますので、私服ならナンパのあらしでしょうが、女性用軍服ですからね……危険な女と皆思うのでしょうね。

 ナンパなど、一つも起こりませんね。


 S&W M686Plusディスティングイッシュド・コンバットマグナム・プラス などという、とんでもない銃が、腰にぶら下がっていますからね。


 357マグナム弾ですよ!しかも七発……

 通称マグナム・プラスと呼ばれるこの銃、チョーカーの魔力ゆえに、扱える代物です。


「シベリア……美味しいでしょうかね……」

「甘くはないでしょうね……」


「もう一つ、いただきましょうか……ミルクにはカルーアを入れてね」

 忍はホット・カルーア・ミルクで、シベリアを食べています。


「変な取り合わせですね……」

 と、青木紅葉さんが云いますが、彼女のミルクにはクレーム・ド・モカが入っています。


「変わらないじゃないの?モカ・ミルクでしょう」

「クレーム・ド・モカは、カルーアよりコーヒーの風味が強いのです!」

 どうやら紅葉さんは、かなりリキュールがお好きなようです。


「リキュール、お好きなの?」

「はい♪」

 この後、リキュールについて喋る喋る……

 紅葉さんのお言葉を、拝聴した忍でありました。


 怒涛のお酒の薀蓄を、二時間ばかり……午後の陽ざしも多少かげってきました。


「いけない!はしたない事を……申し訳ありません……」

「いえ、私もお酒は嫌いではないので、楽しく拝聴いたしました」

「すいません……」


「私、京都の出でしょう?でもお酒は、焼酎の方が好きなのよ」

「焼酎ですか?京都といえば伏見の清酒ですが……」

「少しはあるのですよ、案外においしい物があります、吟醸粕の焼酎とかね」


「おいしそう……」

「今度、一緒に飲みませんか?」

「上杉さんはお強いのですか?」

「人並みですよ……」


 そんな話で、束の間のティータイムは終わり、ハンヴィーM1152は二人を乗せて、東京ハウスにたどり着いたのでした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る