茜おばさま


 今日はこのマンクス・レディス・ハウスで、チャリティパーティを開くことになっているのです。


「それにしてもイシス様、遅いわね……」

 ブレンダさんが、

「エステラ様、なんせイシス様ですから、時間なぞ守られるとは思いませんが?」

「イシス様ですからね……」

 と、テレーサ・オリヴェイラさんも……


「誰が遅刻魔だって!」

 ぶつぶつ云いながら、イシスさんが転移してきました。

「ニライカナイからきたのよ、結構きついのよ」


 綿パンとポロシャツなんか着ているイシスさん……

「イシス様、その恰好!パーティドレスは!」

 エステラさんが叫びました。

「なに、それ?」


「……ブレンダさん、ドレス持ってきていますか?」

「いえ……イシス様に似合うようなものは……」

「何でもいいですから!時間がないのよ!」


「これは何よ!お年寄り用ではないですか!五十代ではないの、嫌よ!」

「イシス様!テラより長く生きているのではないですか!今さら歳なんか気にして、どうなるのですか!」


 あまりのエステラさんの剣幕に、さすがに我儘で超有名なイシスさんですが、黙ってしまいました……

 このあたりは、妹のミコさんと似たようなところがあります。


「……じゃあ……せめて私に選ばせて……」

「何でもいいですから、パーティドレスを着てください、後十分しかないのですよ!」


 エステラさんはマンクス・レディス・ハウスの中にある衣裳部屋などから、すべてのドレスを持ってこさせました。


 で、イシスさんが選んだのは……テレーサ・オリヴェイラさんの部屋にあったドレス……

「そのドレスは……」


 かなりゴージャス、パステルのピンクとシアンの大胆な色使いで、背中も肩も露出して、あまつさえミニ……

 それでもカクテルドレスなのは間違いなし……パーティーではありますし……

 大きなため息をついたエステラさんではありましたが、あきらめたようです。


 でも、イシスさんが着ますと……何でも似合うようです……


 もともとこの世の者とは思えぬほどの美貌……古代エジプトの絶世の美女、ネフェルティティに似て、はるかに綺麗にしたような方、言葉に困る美貌ですし……その上スタイル抜群……


 圧倒的な美しさ……ミコさんぐらいでしょうか……美貌で勝てそうなのは……

 

「茜おばさま、綺麗……」

 タバサちゃんは、うっとりとしながら云いました。

 二人の姉も同じように、うっとりとイシスさんを見ています。


 アディントン三姉妹にとって、イシスとは親代わりの優しい優しいおばさんで、本当はママと呼びたいのですが、さすがに遠慮しているのです。


 エステラさんが、

「いつも思いますが、イシス様を『おばさま』と呼べるのは貴女たちだけね……『おばさま』ね……」

 イシスさんを見ながら、ちょっぴり笑いました。


「エステラが云ったら、ぶちますからね!」

「はいはい、イシス様はいつでも『娘さん』ですよね、誰も『おばさま』とは思っていません、怖いですから」

「エステラ!」


 こんな話で、パーティーは少しばかり開始が、遅れてしまったのです。

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