香港には美女が住む


 今日はミコ様のために、奴隷を献上するための式典なのです。

 毎年各地域から一名、選りすぐりの才媛を献上することになっています。

 馬鹿ではならないのです。


 この美女たちは、端島が新しく管理することになった、香港島で教育することになったのです。


 香港啓徳台場は、ナーキッドの軍事拠点として、端島の管轄から離れます。

 代わりに香港島を管理することになったのです。


 申し合わせで、大陸の各地域は香港の九竜半島に事務所を持ち、端島管理の香港島と交渉をすることになっています。


 この献上された才媛たちは、『女給』と呼ばれ、九竜の事務所と、香港島の事務処理にあたることになっています。


 ミコ様の女ですから、もしも手出しすれば死が待っています。

 端島の男性はそれを知っていますので、近寄りもしません、勿論大陸の女性も手出しはしません。


 二度ほどそのようなことがあったのですが、見る見るその女は燃え上がり、無残な煤の塊が転がることになったのです、ただ女性同士の恋愛は可能ですよ。


 勿論、ミコ様が望めば、何でもすることになります。

 まぁ拝謁することは、滅多にないでしょうが……

 孟玉楼(もうぎょくろう)さんは、香港島の管理で忙しそうです。


 身寄りのない玉楼さん、冷たい雰囲気がありますが、『女給』さんたちの境遇に、同情などしています。

 親身に考えているのが良かったのか、すぐに姉のように、慕われ始めているようです。


 忍様が、

「さていつまでも、そのままとはいかないわね……一人二人は……しかし……サリー様は怖いし……頭が痛いわ……」

 側で聞いていた玉楼さんが、

「この地にも女官学校を設立しては?女官なら寵妃候補にもなれますし」

「それは無理ね……彼女たちは三級市民……二級なら何とか私の力でも可能ですが……」


「では技芸学校ということでは……夜伽のための学校、献上された彼女たち、それなりの覚悟と、口々にいっていました」


「夜伽学校ですか……案外に名案かもしれない……」

「彼女たちは、これから大陸の三級市民国家群を支えるエリートの予定、貴族たちは荘園経営をすればいい、その国家は、彼女たちナーキッドの息のかかったエリートで占める」


「自分たちが献上したミコ様の女たち……嫌は無いはず……いいわね、夜伽のためとなれば、実現可能だわ……これはいい、この案で行きましょう」


 技芸学校の提案が評価され、後日玉楼さんは女孺(にょじゅ)さんになったのです。


 この中華技芸学校は、香港に設立され、春節に献上される女たちは、すべてここで教育されることになりました。

 昼は事務員というお仕事が待っていますから、夜学ですけど……


「志玲、ミコ様が呼んでいますよ、昼ですよ、でも……覚悟しておくことね、多少はご立腹ですからね……笑えないわよ」

 翌日には呼び出しがありました。


 ニライカナイに三日後に出頭せよ、との命令がハウスキーパー経由で届きました。


 恐る恐る出頭すると、ミコが、

「さて、どうして呉れましょうか!」

 と、バラ鞭――鞭の先が何本にも分かれている鞭――など持っています。


「あの……志玲のお尻を……ぶってくだされば……」

 真っ赤になって自ら言いました。

 ミコ様に私はぶたれるのね……


 その後は、お尻が真っ赤になるまで鞭打たれ、二日ほどは椅子にも座れなかった志玲でしたが、鞭打たれていることを思い出すたびに、狂いそうになる、そんな日々を送る羽目になりました。


 後日談ですが、有閑階級と化した領主たちに成り代わり、この『女給』さんたちは、中華女人世界を切り盛りするエリート集団に成長します。


 テラ・メイド・ハウスには漢民族の美女たちが……さらにいえば、『女給』さんたちは引退すると、希望して香港島に住むようになりました。


 そこで『女給』さんたちの子孫が、増えていきます……選りすぐりの美女の子孫ばかり……香港には美女が住む……


 『女給』さんたちの尽力により、中華女人世界は、二級も夢ではなくなってきたのです。


    FIN


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