お菓子は、結果オーライの味がする


「つまらないです!」

 信じられぬことに、マドレーヌはサリーがテラに来たときに、『NYOTAIMORI』封印について直訴したのです。

 忍の冷や汗の量はドラム缶級となった次第。


「まぁマドレーヌさん、仕方ないのです、私たちのミコ様があまりにお疲れがたまるのはまずいでしょう?」

「それとも夜伽の順番が時々とんでもいいの?」

「……」


 気まずい雰囲気が漂い、まずいと思ったサリーが突然、

「ねぇ、貴女、お菓子作るの好きなのよね」

「はい!私はそれしか取り柄がないもので」


 お菓子の話に話題が移ると、マドレーヌは生き生きとした声になります。

 サリーの作戦勝ちなのでしょう……さすがにハウスキーパーです。


「チョコレートなのだけど……私はエラムの女って知っているわね」

「知っております」


「エラムは多少寒冷なの……カカオの栽培は難しい……でも、エラムの女はチョコレートが大好き……」

「そこで貴女にお願いがあるの、なんとかエラムで代用チョコレートはできないかしら」


 難しい話ではありましたが、色々エラムの気候を聞いてみますと、どうやら温帯より少しあったかな地帯、テラでいう地中海気候の場所があると分かりました。


「キャロブ菓子ならできそうです、代用チョコレートといってもいいものです」

「イナゴマメを乾燥粉末にして作るもので、このイナゴマメは、エラムというところの暖かい場所で栽培できるのでは……」


「そのキャロブ菓子って、手に入りますか?」

「明日には何とか入手できます」

 で、翌日、マドレーヌは大量のキャロブ菓子をつくりました。


 キャロブパウダーを使用して、ノーカカオで板チョコとチョコパン、チョコクッキーです。

 それを持って、サリーの逗留する小笠原のホテルに向かいます。


 そこでキャロブパウダーのドリンク、つまりは代用ココアも作って、差し出しました。


「これは……これなら代用になる……まぁ本物とは若干違うが、それでも……美味しい……」

 サリーはすぐに薫に連絡を取りますと、よく似た植物がエラムには自生しているらしいのです。


 なんでもマグ・メル島で産するらしく、大昔はこれから砂糖を生産していたとか。

 しかし、より糖分の豊富な作物からの抽出ができるようになり、すたれてしまったそうですが、今でも山奥の森に自生しているらしいのです。


 テラのイナゴマメよりは糖分が薄く半分ぐらいだそうですが、薫の見解では、よほどうまくすればキャロブチョコレートは可能だそうです。


 そのようなことがあり、マドレーヌはお菓子の伝道のために、特別に惑星エラムへ派遣された次第です。


 勿論、共通言語としてのアイスランド語での会話ですから、エラムの側女が通訳してくれました。

 アレクサンドラという名のその側女さんと仲良くなったマドレーヌ。


 以来、ニライカナイではよくお茶を飲む相手となったようです。

 もちろん代用チョコレートは、見事に完成したのはいうまでもありません。


 マドレーヌは結構天然ですが、どうやらそのお菓子は結果オーライの味がするようです。


    FIN

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