テレーサのお願い


 マドレーヌが製菓室で奮闘しているところに、テレーサがやって来ました。

「ねぇ……頼みがあるのだけれど……」

 二人はそんなに親しいわけでもありません。

 だからマドレーヌとしては、少し驚いたのです。


「〇◆☆▼……」

「それは……」

「×――□▲……」

「分かったわ!貴女の気持ち、きっとミコ様に通じるわよ、頑張ってね!」


 この後、マドレーヌはなにやら、大量の製菓材料を用意しました。


「テレーサの為に頑張らなくっちゃ!」

 いつも、ポーとしているマドレーヌなのに、珍しく気合が入っています。


 午後三時、ミコのお茶の時間、小笠原シティでささやかに社会に奉仕している方々を招待しての、お茶の時間です。

 なかには恵まれない境遇の女性に、手を差し伸べていた尼住職さまもおられます。

 この方は、ミコ様が丁寧に接しておられる方で、京都からこの小笠原へ移住して、尼寺を創建なされています。


 忍もこの方を知っているようで、テラ・メイド・ハウスの女たちも、何かと相談などをしているようです……ただし、やはり夜の話はご法度ですが……


 この日の飲み物はコーヒーでした。

 ミコは紅茶が好きなのですが、ここ小笠原シティでは、南米への航空路がありますので、南米の物産が入ってきます。


 計画では貨物船航路が予定に上がっていますが、一級市民地域は、他の地域との交流はかなり限定されており、どこかにそれ用の港を作ろうとしています。

 今のところ、トラック諸島が候補に挙がっていますが……お米などもブラジル米ですからね。

 三級市民地域との交易はありません、南米とヨーロッパからの輸入で十分なのです。


 なんとかブラジルの紅茶が入ってきていますが、その輸入量は微々たるもので、やはり輸入量としては、コーヒーが圧倒的です。

 とにかく良質のコーヒー豆は、やはりマルスでは栽培できない……いまのところ、テラで飲むのが一番おいしいのです……


 トゥルトー・フロマージェとブラジル・サントス・NO2……がテーブルに並んでいます。

 質素なものです。


 この後、女性は『名誉刀自』、男性は『名誉騎士』を贈られます。

 どちらも同じ額の、ささやかな年金が支給されます。

 ただ『名誉騎士』にはリングなどはありません、したがって加護もないわけです。


 午後五時半、セレモニーは終わり、とにかくマドレーヌの出番は終わったのです。


「さて忙しいわ、ご飯なんか食べてられないわね!クリームを作らなくっちゃ、チョコレートソースも……そうだ、すこしガラナも、内緒に入れときましょう♪」


 フルーツを切り刻み、ラム酒に浸し……

 何やらおいしそうな、スプレッド類なども作っています。


「メイプル、メイプルは……と、あった、これがないとね、お菓子は始まらない」

「そうだ、プディングもあればいいわね、でも間に合うかしら……」


「チョコレートソースがあるけど、色がいくつか欲しいわよね……綺麗にしなくっちゃ……ラズベリーソースとブルーベリーソース、キウイソースもありね♪」

「ミントソースなんかどうでしょう……これは刺激が強すぎるかな……スースーするのはね……やっぱり蜂蜜にしましょうか……」


 ルンルンで、お菓子の準備に余念のないマドレーヌ……

「さて、準備OK♪あとは飾り付けね」

「テレーサに手伝ってもらわなくっちゃ♪当の本人の希望ですものね!このお菓子」


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