ミコの女たちⅠ テラ・メイド・ハウス 【ノーマル版】

アイハンの大殺戮

　アイハンは躊躇なく撃った……店員たちの眉間を見事に打ち抜いたが……その銃声でカジノは大騒動になった。

「ちっ、まずいな……考えが足りなかったか……サイレンサーが使えるのに……」

　ナガンＭ１８９５はリボルバーでは唯一、サイレンサーが使え、アイハンはそれ故、愛用していたのに……多少、慌てていたようだ。

　しかし、タクマラカンの冷酷な女、アイハンはここから真価を発揮する。

　イメージを発動、外界からカジノを切り離した。

　つまり出入りができない状態にした。

　つづいてチョーカーを可視にして、フロアに現れた。

「管理官のアイハンです、お客の方々には大変申し訳ないが、このカジノは違法な事をしていた」

「よって少しの間封鎖させていただく、先ほどの銃声は私が撃った、私に麻薬を打とうとしたからだ」

　麻薬と聞いてお客は沈黙した……大事と理解したからだ。

　このナーキッド体制で、麻薬は極刑を覚悟しなければならない、オーナーであるミコが許さないからだ……

　麻薬と人さらい、この二つに手を出せば、無慈悲な出来事が返ってくる、これははっきりと公示されている。

　そのような事例が起これば、関係者は即決で死が待っている……

　この世界に誤審は起こりえない。

　いわゆる『魔力』というやつで、嘘は必ず発覚するし、見た記憶も正確に再現される。

　なにより、時空間は記録されている。

　世界に満ち満ちている魔力の元――ナノマシンの事は一般には公表されていない、ミリタリーの機密事項――が、そのあたりの出来事を再現できるのだ。

「貴方方は心配することは無い、私はミコ様に直接仕える者、その力はご存じであろう」

「その力でもって、身に覚えのない方は安心してほしい」

「身に覚えのあるものは、申告するように、すれば麻薬バイヤーであっても、死罪は免れると私が保障する」

　誰も申告はなかったが、アイハンには二人ほど麻薬使用者がいるのが分かった。

　まぁ後で、それなりに処罰することした。

「では失礼する、麻薬組織を片づけなくてはならないので」

　アイハンがフロアを後にすると、まず店員たちが本性をむき出しにしている。

　逃げようにもカジノから出られない。

　麻薬と人身売買をしていた以上、必ず死が待っている……それを知っているようだ。

　アイハンに銃弾が浴びせられたが、全て手前で落ちてしまい、お返しのアイハンのナガンＭ１８９５、その七．六二ミリｘ三八ナガン弾が、一発必中で眉間をぶち抜いていく。

　アイハンは冷酷である。

　ミコなら、女には多少は情けをかけるが、アイハンは一切情けなどかけない、冷酷に撃ち殺していく。

　アイハンのナガンＭ１８９５は弾切れが無い、次々とアイハンがイメージするからである。

　異空間倉庫に大量に備蓄していた七．六二ミリｘ三八ナガン弾を自動装填したのです。

　そしてカジノの元締めも、あっさりと心臓に七．六二ミリｘ三八ナガン弾がめり込んでいる。

　アイハンの大殺戮は止まらない。

　カジノの元締めの脳からその記憶を取り出すと、一つのリストに書き上げた。

　アイハンを一目見て、逃げようとしたのは市の高官、しかも女性だった……かなり綺麗なボーイッシュな女だったが、これも心臓に七．六二ミリｘ三八ナガン弾がめり込んでいる。

　そして無慈悲にも脳から記憶を取り出して、リストに追加した。

　カジノは店員たちの墓場となった。

　そしてあらましが報道された。

　市の女役人のリストにあった者は、アイハンの訓示を聞くために集まった大会議室で、突如として心筋梗塞を起こした。

　アイハンの指示により、すぐに病院に運ばれたが死亡が確認されただけ……弔慰金などは既定以下であった。

　この後、アイハンは給料を引き上げ、昇格はその理由が事細かく公表され、不明確なことはなくした。

　そして、さやかな人事制度の改革を発表した。

　続いてカジノの元締めの記憶リストから、重大犯罪の者の自宅には、ミリタリー指揮下の治安部隊が差し向けられた。

　麻薬と人身売買の罪……即決裁判で、全ての事実が明るみにでて死罪になった。

　市役所は何故か粛然とした、そして滞っていた雰囲気が活発になっていく……