歓楽都市


 ミコは突然、アイハンに、

「この町を束ねて見なさい、今度は大丈夫、私の加護があります、第四序列の魔法が使えますよ」


「自己を中心に、一辺50m立方体に対して、イメージ通りの事を実現ができます、思い通りにやってみなさい」

「私は麻薬売りと人さらいは、許しませんから、そんな行為に対しては、問答無用でいいですよ、無慈悲に対処しなさい」


 アイハンはルナ・ナイト・シティの管理官となった。

 管理官とは、その地域の行政責任者……ナーキッド体制の中では、特殊な位置となる。


 この管理官というのは、ミコの名で任命される職で、管理官が置かれると、ナーキッドの行政単位は全て管理官の下に置かれる。


 つまり地方単位のなかに、特別行政府が誕生することになる。

 ナーキッド・オーナーに、直属することになるのだ。

 通常は行政官が置かれ、それぞれのナーキッドの地方行政単位に組み込まれている。


 ほぼ直轄領の行政は、管理官が任命されている。

 だいたいはナーキッドからの推薦者が、管理官や行政官に任命される。

 ただ今回は異例で、ミコが直接任命した。


 ルナ・ナイト・シティは大娯楽都市、カジノもあれば、娼館もある、勿論それなりの裏組織もある。

 ミコが大目に見ている以上、そんなに害はないはずだが……


 どうもおかしい……見えないところで、腐敗が進んでいる……

 アイハンはこのあたりの感覚は鋭いようで、都市の行政組織のどこかに、腐ったところがあると感じたのだ。


「どこか精気がない……考課システムが機能していないのか……それとも正当な対価が、支払われていないのか……」

 このあたりが、組織が腐りだす前兆と、アイハンは思っているようだ。


「どうも小さいことが積み重なった結果ではないか……生活に少し苦しんでいる官僚たちに、袖の下を掴ませている者たちがいるようだ……さて、どうするか……この場合、表立って粛清するのはまずいな……」


 しばらく長考したアイハンであるが、「やはり金づるを潰すか……」と呟いた。


 ルナ・ナイト・シティには、カジノが公認されている。

 テラを含めマルスの文化圏においては、歓楽の都で名が通っている。


 その第一のカジノに、アイハンはふらっと訪れた。

 チョーカーは不可視にして、肌の露出度が多少おおいドレスを着ている。


 高級コールガールの雰囲気を漂わせているが、このルナ・ナイト・シティは、ストリートの売春は禁止されている。

 春を売る商売は、許可を受けた娼館でしか許されていない。


「しかしこの恰好をすると……感じてくるわね……ミコ様に抱かれるために……一度、この恰好で……いけない……想像してしまった……トイレに行かなければ……」


 カジノは満員御礼、ロプノールではついぞ見なかった男もわんさかおり、それよりも多く女がいる。

 バカラにルーレット、スロットもある、バニーガールがウェイトレスをしている。

 豊かな胸の女の多い事……


 しかしアイハンは飛びぬけて美しく、注目を浴びている。

「このチョーカーとはすごい……どう見ても三十はきって見えるな……私、こんなにきれいだったかな?」


 事実、アイハンは、ロプノール時代の目のきついハイミスの雰囲気から激変している。

 ミコにすべてを捧げ、愛されそれゆえ安心した。

 その内面の充実がにじみ出ている。


 しかも体はミコに仕込まれた結果、いつもミコを求めている。

 今ではきつい目もぱっちりとして、細く小顔で、胸もお尻も美しく小ぶりで引き締まっているアイハン。


 良家の若奥様風、ただ体は愛撫を求めている……ジゴロがひっきりなしによってくる……

 レズの女も、モーションをかけてくるのは、当然といえば当然なのである。


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