無知には自由を与えよ


 その時、アイハンの心に、語りかける存在が感じられた。

「死ぬ気なら、その命、私にくれない?」

 存在はそのように語りかけた……


「くれてやってもいいが、私をどうするのだ?」

「綺麗だから、もったいないでしょう?」

 アイハンは大笑いをした、そして、

「こんな年寄りを抱きたいのか?」


「そうね、折角この国、残してあげたのに台無しにしたのだから、体で負債を払ってもらおうかな?」

 アイハンはさらに大笑いをした。

 笑ったらなんだかすっきりとした。


 そして、

「どこでもいつでも、抱いてくれればいい、負債を支払おう」


「潔いのね……まぁ貴女は私の物にいたします、女奴隷として足を開いてもらいますから、でもその前に撤退しましょうか」

 その後、こうも言った。


「モラルが低いとね、利己特性は強いのよ、民度が低いと生き残れないのよ、もともと三級も無理だったのでしょう」


 その言葉が終わると、目の前に何かの塊が……

 ミコが浮かびあがってきた。


「先にペットの首輪でも、つけてもらいましょうかね」

 ミコがそのように言うと、アイハンの首にチョーカーがあらわれた。

 名誉側女とは、比べ物にならぬほどの力が、みなぎるのが判る。

「本当は抱いてからなのだけどね……これで何があっても安全ということです」


 さらにミコは続ける。

「さて、ナーキッドの物は一切合財持って帰りますよ、私はケチなのですから」

 アイハンには、これがロプノールへの死刑判決のように聞こえた。


「ミコ様……」


「いいじゃないの、無知には自由を与えましょう、望んでいるのですから、ほ・ほ・ほ・ほ」


 この目の前にいる女は、底知れぬほど冷酷になれる女なのだ……

 そう思うと、アイハンは身震いした。


「産科システムも……」

「一切合財といいましたよ、私もね、守らなければならないものは、幾らでもあるの」

「それにあの人たちは、いっていたじゃない、我らには知恵があるってね」

「賢いのですから、私たちがおこがましく、手を出すことは失礼でしょう」


 沈黙したアイハンを尻目に、ミコはアイハンを引き連れ、崩れそうな庁舎のバルコニーに立っています。

 いつの間にか、マイクスタンドが置いてあります。


「皆さん、ナーキッドは撤退いたします、皆さんは自由です、誇り高いロプノールの皆様には、ご迷惑をかけたようです」

「アイハンさんは代表を罷免されます、これからナーキッドは、ロプノールには一切手出しは致しません」


「人は自らの力で立つべきです、その意気を示した、ロプノールの皆さんには、敬意を表すばかりです」

「ただいまより、ロプノールは立派な国家です、皆さんの力で、立派な国をさらに輝かせてください」


 そのように言うと、ミコはアイハンとともにスーと消えた。


 庁舎の瓦礫同然の建物もスーと消える、後には綺麗に整地された空き地があるばかり、瓦礫のかけらもない。

 その後、ありとあらゆるナーキッド関係の物は消えていった。


 ロプノールは完全に独立、自由を手にしたのだ。


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