民の望み


 暴動はロプノール共和国全域で起こっている。

 政府の庁舎にも投石がある、怪我をした職員も増えてきた……


「ナーキッドは独裁者だ、独立を勝ち取ろう!」

 シュプレヒコールが聞こえ、今日も民が集まっていることを知らせている。


「鎮圧……いたしますか……」

「無用だ……これが……民意なのだ……」


 アイハンは集まっていた群衆の代表と、会談をすることに……しかし驚いたことに、代表者などは存在しなかった。

「そうか……致し方ない……人々と話あってみよう」


 アイハンは群衆の中に入っていった、そして話しかけた。


「国民の皆さん、アイハンです、何が望みなのですか、それを聞きましょう」


「ナーキッドは独裁者だ、独立を勝ち取ろう!」


「ナーキッドは確かに、この地に対して絶大な影響力を持っています、しかし、そのおかげで今の生活が維持されています」

「周りを見てごらんなさい、四級市民地域と呼ばれる地域を、それにナーキッドが提供する『産科システム』がなければ、私たちはこの社会を維持できないのですよ!」


 アイハンがそのように言っても……


「ナーキッドは独裁者だ、独立を勝ち取ろう!」


「皆さん、思い出してください!先ごろまでのみじめな奴隷生活を、命じられれば、命まで差し出したあの圧政下を!いまの生活を投げ出したいのですか!」


「確かにみじめだった!しかし我々は自由が欲しいのだ、誰からも命令されない日々が欲しい」

「やっと圧政から抜け出したのに、今度は支配されている、何のために貴女は圧政と戦ったのか!これでは支配者が変わっただけだ!」


「自由の為に?それがどれほど高価な代償がいるか、わかっているのか!」

「そんなもの分かっているさ!我らは我らの道を自ら選びたいのだ!」


「四級の生活でも構わないというのか!」

「そうなるとは限らない!我らには知恵がある、それにこのロプノールには資源がある」

「ナーキッドに頼らなくてもやっていける、昔のようにその力で必要な物は手に入る!」


「違う!あの時はナーキッドに対抗する勢力があった!その援助で、寄せくる難民を排除できたのだ」

「それがナーキッドに変わっただけだ、ナーキッドは皆さんにひどい事をしたのか!」


「それは無い、しかし我らを支配しているのは確かだ、支配され、生きるために尻尾を振るのは、我らの誇りが許さない!」


「そんなものは、愚かなナショナリズムといえる、いまマシな生活をしているからの言葉ではないのか、誇りなどは、飢えという象の前には、蟻にしか過ぎない!」


 群衆はアイハンの言葉を聞き、逆上したのか、アイハンに石を投げつける者が出てきました。

「売国奴!アイハンはロプノールの裏切者だ!」

 誰かが叫び、そして群衆は呼応します。


「アイハンは売国奴、ロプノールの裏切者!」

「アイハンを倒せ!」

 そしてついに、「アイハンを殺せ!」と変わりました。


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