それから 其の二


 二級市民に対しては、ルナ・ナイト・シティが解放されています。

 ここはヴィーナス・ネットワーク・レイルロードの中でも有数のスペースステーション・シティ。

 ここでの交易は、二級市民に対しても認められています。


 ルナ・ナイト・シティには、小笠原ステーションとフォボスステーションから路線がつながっていますが、宇宙鉄道には二級市民は乗ることはできません。


 沖の鳥島に小型宇宙船の発着場があり、直径五百メートルの宇宙船が着水します。

 テラの軌道上にある、発電衛星などのメンテナンスなどのためのものですが、ここからルナ・ナイト・シティへの宇宙客船が、二級市民の為に連絡しています。


 硫黄島から飛行艇も飛んできます、小さい六十メートル×八十メートルの人工島が外周サンゴ礁に寄り添うように作られており、ここにターミナルがあり、飛行艇を地下へ格納するエレベータなどがあります。


 小さい地下施設がありますが、今のところテラ循環シャトルのステーションと、簡易宿泊施設が稼働しているだけで、後は倉庫として使われています。


 テラの三級市民地域は一部を除き、ほぼ中世の状況まで文明は退化しているようで、大体は奴隷制の社会体制のようです……


 しかもその下の四級市民地域は、ほぼ女性だけで構成されていて、ここはナーキッドの提供する産科システムで、社会体制がなんとか維持されています。


 ただしこのカテゴリーの、ロプノール共和国は事実上の二級市民国家、奴隷制度もおおっぴらには廃止されています。


 シェリルの居住するデヴォン島直轄領は、のどかな景色が広がるいわば田舎地帯、対米戦争以来周辺の放射能汚染は甚だしく、いまだに防御バリアで防いでいるようです。


 噂では戦争後、北米大陸の旧カナダ領に成立した三級市民国家と、領土について交渉中とか……

 なんでも二級市民国家として認めてほしいとのこと……


 その代り、今は無人になっている、クイーンエリザベス諸島全域を譲渡するとの交渉ですが……旧カナダはアメリカのように、ナーキッドとは戦っていない……というのが理由らしいのです……


 マルスと直接に交易したいのではと、巷ではささやかれています。


 この地に住まう住人は、対米戦争の時、アメリカに協力した住人、その資格は疑わしいというのが、ナーキッドの主張……

 いまさらクイーンエリザベス諸島をもらっても、お荷物なだけというのが本音のようです。


 小笠原高女は八年制……六回生の二月のある金曜日の夜、采女であるシェリルは、ノーマとともにデヴォン島の母の元に帰省しようとしていました。

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