それから 其の一
あの対米戦争の夏休みから二年、シェリルは十八歳になりました。
少し栗毛色がかかったような金髪で、たれ目気味の大きな瞳が優しげな雰囲気を漂わせている、まばゆいばかりの美少女です。
小顔で身長は百六十センチを少し超えているぐらい……
体重は極秘事項らしいのだが、かなりスレンダーなのです……
ただ母のグローリアがかなりのバストに反して、小ぶりなのが本人にとっては悩みの種となっています。
しかしその引き締まった肢体は牝鹿と呼べばいいでしょう……
娼婦であったことで時々妖艶な雰囲気も見せる、不思議な美少女に育ったようです。
ノーマとともに、母のグローリアから徹底的に女の夜毎の仕事を叩き込まれているシェリル……
グローリアは、愛人エールやヴァルキュリヤの佳人たちを目の前で見てから、変わったのです。
なんでも、美貌ではとてもかなわない、ただ女の値打ちは夜の営みも大事!と、確信したらしいのです。
シェリルは女官任官課程の同期の生徒の中でも最優秀、周りからも卒業後はミコの側女になれると目されています。
デヴォン島での、あの対米戦争で示した事務能力は、この少女を見る周りの目を変えたのですが、当の本人も変わったようで、全身から自信がにじみ出ています。
惑星テラは今それなりに平和です。
政治経済も、惑星マルスの他の地域と同じ扱い、テラ地域として、一つの国家のようになり始めているところ。
将来的には、惑星テラが直轄惑星となるのは衆目の一致するところです。
ルナ・ナイト・シティの施政権も惑星テラのナーキッド支部に移管されています。
もっとも、一級市民地域といわれるカテゴリーについてでありますが……
一級市民地域とは、ナーキッドとともにテラ動乱の時、最後まで付き従った人々の居住する地域で、ナーキッド直轄領と言われる、小笠原、デヴォン島、マン島、カムチャッカと、ルナ・ナイト・シティの五つとその付属地域からなります。
二級市民地域とは、主には南米とヨーロッパ、この地域はテラ動乱の時、最後の最後で非協力となった地域です。
ナーキッドはこの地域住民に対して、絶対的な支配権を所有しており、それを守る限り、安全保障の傘をさしかけています。
限定的ではありますが、南米は小笠原の硫黄島国際空港、ヨーロッパはマン島のフェリーでつながっています。
後は関知しないというのが、ナーキッドのテラ支配の原則ということです。
一級市民地域の五つの地域は、それぞれすみ分けているようで、小笠原直轄領は惑星テラにおける中心、小笠原シティは惑星マルスのフォボス・ステーションとテラ連絡支線でつながっています。
その先はローマ・ダチア宇宙鉄道を経由して、広大なヴィーナス・ネットワーク世界に広がっているのです。
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