とうとう戦争が始まった


「ママ、エール様がいらっしゃっていたの?」

「そうよ、自らヴァルキュリヤチームを率いるおつもりのよう」


「ヴァルキュリヤチームって、ロシアのクーデター部隊を全滅させた、あのヴァルキュリヤ?」

「そのヴァルキュリヤ、皆さん、お綺麗すぎて、恥ずかしくなったわ」


 ノーマが、「エール様ってどんな方?」と、聞いています。

「とにかく足が長い、白人、東欧系ね、黒髪で少し大柄、でもセクシーとは違うわね……」


「ママみたいにボン・キュウ・ボンではないのね」

「そのね、威厳があるのよ……言葉に困るけど、お綺麗なの……」

「ママ、それではわからない!」

 とのノーマの言葉を聞き、すこし苦笑いをしたグローリアです。


 次の日からグローリアたち、デヴォン島のミコのメイドたちは招集されたのです。

 お仕事は軍の事務仕事、あちらに宿舎の手配、こちらに機材のエネルギーの調達、なんせナーキッドの防衛部隊、通称『近衛師団』本隊は来ていません。


 少数部隊が分派されているだけ、後方支援部隊がいない分、デヴォン島の民間施設、組織を動員するわけですから、その事務は煩雑を極めます。


 シェリルもノーマも一応は采女、若いし、娘である分、グローリアはこき使っています。

 二人とも小笠原高女の生徒、小笠原高女は社会を担う女性を育てるのを目的に、設立されていますので事務は必須科目、特に女官任官課程はエリート中のエリート、才色兼備を求められています。

 煩雑な軍の事務処理といえど、何とかこなせます。


 特にシェリルは、将来の一号生徒とも目されています。

 その真価を発揮しつつあります。


 そして八月半ば、とうとう戦争が始まったのです……


 その日、デヴォン島の首都、クイーンエリザベスシティ上空を、巨大なキノコ雲が覆いました。

 そのほかにも、主要都市にはアメリカ戦略空軍の核爆弾による爆撃が実行されたのです。


 しかし、デヴォン島を守る防衛バリアと呼ばれるものは、圧倒的だったのです。

 全土を覆い全てを遮断、しかも空気などは、デヴォン島全土に配置されている、空気浄化システムが大気をクリーンにして取り込んでいます、勿論海水もです。


 アメリカ軍はデヴォン島に、主兵力など向けなかったのです。

 長谷川司令官はデヴォン島に差し向けられた、少数部隊を蹴散らして溜飲を下げただけです。

 もっと南、ジョージアの平原で決戦は行われ、ナーキッドが完勝したのです。


 グローリアたち母娘三人の、ただならぬ意気込みで臨んだ戦争は、あっという間に終わってしまいました。


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