硫黄島リゾート 其の三


 すり鉢山には展望レストランなどがあり、南太平洋の雄大な光景を眺めるとともに温泉施設があります。


 硫黄島の温泉群は、この『すり鉢山温泉』と、アイスランドのブルーラグーンをまねた『元山ラグーン温泉』、それに島の南西部にある、すり鉢山の麓の砂浜に、砂湯の『二つ根浜砂湯温泉』、更には硫黄島の海底に巨大な透明ドームで覆われた『硫黄島海中温泉』、そしてあと一つが、硫黄島リゾートホテルにある『大坂山温泉』なのです。


 硫黄島リゾートホテルは、大坂山と呼ばれる小さな丘のような山の上に建てられています。

 五階建てですが、かなりシックな近代ホテルです。


 島の周囲は常時防御バリアが展開され、定期航空路の飛行機だけが、許可を得て通り抜けられるようになっています。


 天災なども、完全にシャットアウトできるようになっていて、ある意味きわめて安全なリゾートではありますが檻の中とも取れます。


 午後二時に到着した三人は、地上に出て歩くことにしました。

 南国の強烈な日差しがまぶしいですが、運動がてらに歩く人が多い、といっても硫黄島リゾートホテルはそこにあるのですが。


 まだチェックインは早いので、荷物を預けようとすると、

「側女のグローリア・オルコット様ですね、ベッドメイキングはすんでいます、チェックインできますが?」

 と、云われました。


 VIP待遇です……荷物もポーターさんが運んでくれ、ゲストルームに案内された三人。

「すごい……」


 部屋には南国の花がドンと飾られており、テラスにはプールのような露天風呂があり、テーブルに一通の手紙が置かれていました。


「親愛なるグローリア、世の中はきな臭くなっていますが、貴女はアメリカとナーキッドの関係に悩んでいるように見受けられます」

「しかし何の心配もしないように、私は私と縁をもった方を必ず守ります、娘さんとゆっくり過ごしてください」

「それからノーマさんの面倒を見てくれているのに、感謝いたしております、吉川ミコ」


「ミコ様……」

 硫黄島リゾートホテルで、三人は自らの主の、さりげない優しさを知ることになったのです。

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