硫黄島リゾート 其の一
デヴォン島に移住してから三年、アメリカは変わったようですが、シェリルたちの日々はさらに変わりました……
シェリルも今では十六歳、テラの小笠原諸島にある小笠原高等女学校に通っています。
小笠原高女は女官任官課程が併設されている、テラ唯一の高等女学校。
シェリルはその女官任官課程の四回生……その指には采女の指輪がはまっています。
ノーマも小笠原高等女学校の一年生、こちらもその幼い指には采女の指輪がはまっているのです。
二人は併設された寄宿舎に住んでいて、そして七月の二十日、小笠原高女も夏休みとなりました……
シェリルは長期休暇の間は、デヴォン島のグローリアの元で過ごすことが、恒例になっています。
勿論ノーマも一緒です。
ノーマは今では天涯孤独の身、シェリルを姉のように慕い、グローリアを母と思っています。
そして今日、グローリアが迎えに来ているのです。
「シェリル!ノーマも!元気にしていた!」
母のグローリアは近頃、ミコ様に抱かれて側女になりました。
母の首には、チョーカーと呼ばれる首輪がはまっています……
パープル・ゴールドのチョーカーで、未亡人の証のブルー・トルマリンがはまっています。
母は素晴らしく美しくなっていました……
「ママ……綺麗……」
グローリアは何もいいませんが、娼婦として百戦錬磨の経験があるシェリルとノーマです。
愛されたということが、母を美しくしていると直感で感じるのです。
三人はテラ循環シャトル線のステーションへ歩いていきます。
久しぶりなので、三人ともおしゃべりがしたかったのです。
チョーカーを付けていると扱いが全然違う……周りの女たちの羨望のまなざしが母に集まっているのを、一緒に歩いていると感じるシェリル……
「ママ、このままデヴォン島へ帰るの?」
ノーマが聞きますと、
「ママも忍さまより三日の休暇をいただいたの、だから今夜は硫黄島に泊まりましょうね」
硫黄島とは、小笠原シティのリゾート、この小笠原直轄領で唯一温泉が湧いています。
「硫黄島?あそこのリゾートホテルって高いでしょう、それに予約も取れないし……」
「ミコさまがね、お部屋を貸して下さったの」
「それってナーキッド・オーナーのゲストハウス?」
「そうよ」
硫黄島のナーキッド・オーナーのゲストハウスとは、すこし小さいですが、硫黄島リゾートホテルの最上階にあり、小さいながら室内には温泉が引かれています。
ミコ自身はあまり泊まりませんが、よく女たちに貸し出してくれるのです。
いわゆる側女のささやかな特権でもあります。
小笠原シティから延びるテラ循環シャトル線は、ナーキッドの他の直轄領を結んでいます……
その路線は硫黄島にもつながっているのです。
硫黄島は小笠原直轄領に属し、南米とつながっている国際航空路線が発着する、硫黄島国際空港があります。
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