ミコの女たちⅠ テラ・メイド・ハウス 【ノーマル版】

ミコ・キッカワ

　その女はミコ・キッカワといった。

　信じられないことに、シェリルより若干年上ぐらいの美少女で、ハニーエンジェルでは抱かれる方の部類の女です。

　しかしミコ・キッカワは死にかけている女、アデラインを指名し、これを抱いたようです……

　アデラインの嬌声が娼館中に響いていますから……

　館の主人は何を思ったのか、銃を取り出し、アデラインの嬌声が響き渡るベッドルームの外にたたずんでいるのです。

　シェリルは震えあがりました……

　おぞましい女を殺そうとしている、獣のような男……

　自分もこのような館の住人、今さらながら落ちるところまで落ちていると、十三歳の少女でも理解できました。

「ママ……」

　グローリアも蒼ざめています……

　二人は耐えられなくなって、地下の部屋へ逃げるように戻ったのです。

「シェリル……二人で神様に召されましょう……ここまで落ちたのなら、自分で命を止めても怒られはしないわ……」

「ママ……いいわ……死ぬ方法などいくらでもあるわ……」

「シェリル……ママを許してね……」

　そして銃声が轟きました……

　シェリルはその後の惨劇を想像したのですが、全身血だらけで、恐怖に震えた主人が地下室のドアを開けました……

「館の娼婦たちは全員集まれ！お前たち三人もだ……早くしろ！」

　シェリルたちが地下室から上がっていくと、他の娼婦も全員集まっていました……

　中の一人がミコ・キッカワに、質問をしているところでした。

　どうやらミス・ミコ・キッカワは、アデラインを引き取るようです……気に入ったのでしょう……

　娼婦の一人が、

「先程、アデラインとの話しが聞こえましたが、私たちも火星に行けるようになるのでしょうか？」

「ついでといっては何ですが、何とか出来るでしょう」

　えっ……火星に行けるの？

　シェリルは耳を疑いました……

　火星行きはナーキッドの許可がいるとか……

　ハニーエンジェルの住人はまず難しい……娼婦ですもの……

　まして私たちは、母娘で売春させられている身……

　火星なんて望んでもいなかった……

　別の方が、

「失礼ですが貴女は誰なのですか？」

「ナーキッドのオーナーです、一緒についてくる方は？」

　グローリアとシェリルは、必至で訴えました、ついていきたいと……

　ふと見ると、幼いノーマ・ブラックストンは、成り行きが理解できないのか、ぼーっとしています。

　シェリルは急いでノーマの手を掴んで、

「ノーマも希望するそうです！」

　と、叫びました。

「そうですか、全員ですね……グローリアとシェリルといったわね」

「貴女たちはこの男の妻と娘と聞いていますが、それでも希望するのですか？」

　母親のグローリアは、はっきりと云いました。

「無理やり結婚させられたのです、娘は前夫との間の子供です」

　シェリルは、母の必死な気持ちがよく分かりました……

　ここでいい淀んでは、このミコ・キッカワは私たちを置いていくだろうと……

　その時のミコ・キッカワがまとう雰囲気は、これ以上ないほど冷酷なものだったのです。

　アデラインが、

「この三人はハニーエンジェルに監禁されて、辛酸をなめてきています、何としてもつれて行ってくれませんか！」

　と、嘆願してくれました。

　母親のグローリアは覚悟を固めていて……そして言いました。

「このような境遇です、出来ましたらアデラインさんと同様、私たちもお仕えさせてください」

　その後、アデラインが側女という位をもらい、ハニーエンジェルの一行は、カナダのナーキッド直轄領であるデヴォン島に設立されたハレムで、働く職員となったのです。