第2話-貧乏優男とゲイ術顧問①

 CANキャン部。それはこの春から星砂せいさ学園高等部に新設された部活動だ。

 人のできるようになりたいことを全力でサポートする。という大義名分の元、もっぱら依頼の無い最近は各々好きに時間を持て余している。


 とは言っても、そうそうたる面々が出入りするので、飽きることはない。


 まずは部長の有巣ありす麗奈れな。星砂高校が属する星砂学園の理事長令嬢。一般人とは一線を画すほど端整な顔立ちと反比例して、その口に搭載とうさいされているのは罵詈雑言の機関銃。おかげでちまたでは鬼畜嬢だなんて呼ばれている。


 次に副部長、姫野ひめのりん。学年は同じだが、実は一つ年上。不登校でふさぎこんだ自分を性格から一新いっしんし、全校を巻き込んだ高校デビューで華やかしい高校生活のスタートを飾る。今では学校のアイドル的存在だ。すぐ泣くという涙腺のゆるさや、全身から放たれる脱力感から、ついた渾名はユ涙姫ゆるいひめ


 そしてこの学校最大の影響力を持つ生徒会長、神宮寺じんぐうじ千鶴ちづる。一年生の部員の中、唯一の三年。常に着崩された制服は可視化されたセクシャルハラスメント。圧倒的な煽動力せんどうりょくとカリスマでこの学校を牽引けんいんする。普段は生徒会が忙しく、顔を出す頻度は少ないが、何かに事付けて部室に嵐を巻き起こす。


 あとは自分だ。武者小路優馬。一年八組の優男くんなんて呼ばれている。特に誰かに優しくしているつもりはないが、姫野には「行動からにじみでてるよ」なんてウィンクされる。


 この四人……だけだと思っていた。いや、それで間違ってはいないのだが、俺たちはあと一人、部活動として、それなりに大切な存在を忘れていた。


 また、そいつがCAN部に見合う変な人であることも、唐突とうとつに知らされることとなる。

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