第14話-貧乏優男と創造的で活動的な可能の始まり①
「いやー、今朝はどうなるかと思ったよ! いつのまに鬼畜嬢と仲良くなったんだい?」
「仲良くってわけじゃないけど……」
昼休み。今日はおにぎりをほおばっている新田に朝の出来事を濁して説明し終えた。
「でも一限をサボって駆け落ちするほど仲が――痛っ!」
新田の
ちょうどその時、突然耳を
『皆の衆、元気か! ワタシは元気だ! はっはっは!!』
「やっと会長の話しだ!」
この時間は俺も含め、みんながテレビに釘付けになる。
生徒会長、
星砂高校には朝会と呼ばれる召集令がない。理由はこの人並み外れた影響力を持つ生徒会長の「面倒だからやめよう!」という一言で無くしてしまった、とのことだった。
正確には神宮寺が発した一言に生徒が
その
『会長、そこはライトです! カメラは下ですって、先週も言ったじゃないですか!!』
『はっはっは! そっかそっか、こっちか!』
笑い声と共に今度は画面いっぱいに
『会長、近すぎます! もっと離れてください!』
『いや、今日はこの位置でいく! ワタシの純粋な瞳を見ろ!』
『四月からずっとその位置じゃないですか! いい加減ちゃんと映ってくださいよ!』
「この人、頭沸いてんじゃないのか?」
まず、このご時世で「はっはっは!」と高笑いできる人間は
そんな破天荒な会長の話は続き、その異様さにどこからともなく笑い声が聞こえる。月曜のこの時間は全生徒が楽しみな時間となっていた。
当校の生徒会長である神宮寺は圧倒的なカリスマと
男女関係なく愛され、人望も厚く、もはや追っかけやファンクラブがある始末である。セクシー隊長としての
そんな会長の今週のお話。
『一年生諸君。部活はもう選んだか? この学校は素晴らしく施設に恵まれているから、好きなことを存分にやって、目標に向かって
少年漫画のような会長の言葉に誰もが感銘を受ける。
好きなこと、一生懸命、夢か。
突如、盛り上がる空気を遠くに感じてしまって、素直に受け止めることができなかった。
そういえば有巣は好きな小説に一生懸命になっていたし、姫野も部活を立ち上げると意気込んでいた。目標に向かって努力することは素晴らしいと思う。
実際、俺の目の前で会長の巨大なバストに想いを馳せている、この
俺にはいったい何があるだろう。学校来て、帰って、バイトして、寝て。
やりたいことは。目標は。夢は。
サッカー選手を夢見た時期はあったけれど、今はそんな気はないし、そもそも無理だ。
だからと言って、やりたいことや目標が無いからといって辛いわけじゃない。だいたいみんなそんなものだし、夢はそのうち勝手にできるものだろう。
見上げた真っ白な天井があまりにも低く感じられて、ため息をつく。最近はこんなことばかり考えることが多い。
しかし、悩んだところで何も始まらない。俺は私学あっぱれとも言えるインチ数の薄型テレビに目を戻した。
『そうだ、諸君。今週は部活動更新手続きがあるので代表者は忘れずに放課後、生徒会室に来るように! では次は青少年少女の主張コーナー、今日のゲストは野球部主将の山下君だ! 拍手!』
今回もなぜか瞳しか映らなかった会長は、次のコーナーを野球部に預けて、カメラからフェードアウトした。その後は野球部主将の夏大会への意気込みが担々と語られる。青少年少女の主張コーナーは実質、各部活動の意気込みや発表の場となっていた。
そういえば部活動更新手続きか。結局あんなこともあったし、姫野はもう昼休みに教室には来ないようだ。有巣に会わせる顔が無いのだろう。
それもあと数時間後には再会するのだけれども。
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