ep.4 夜の獣

俺の体は俺のものではない

俺の声は俺のものではない


目の前の風景はどんどん薄くなり

俺の視界はどんどん狭くなる


俺のことをそんな目で見ないで

消えてしまいたいのに

なぜかここを離れられない

伸ばした手を捕まえてくれ

もうちぎれてしまいそうだ


どこからかやってくる

音が

言葉が

その在処を知っているのは俺だけだ

本当のことを言えば

誰にも必要とされていないし

俺は誰も必要としない


夜だけが

俺を覚醒させてくれる

その時

その瞬間にそれはあるんだ

ほとんど死ぬ瞬間のような。


あぁ俺はもう生きてはいないのかもしれない

精神的な意味では。

こんな俺の声を聞いてくれる

そんな顔で


ヨウさん

ヨウさん


俺を離さないで。

いつまでも俺を。

俺の体を。


俺は横たわり

ゆっくりと長い髪で自分の顔を覆う

ホコリの匂いと自分自身の匂いで安心して眠りにつく。

丸くなって。








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