BONUS STAGE3-③~これからもずっと友達!!~

 これまでの『ハートフルジェンガ』のあらすじ。これを分かりやすく簡単に申しますとーー


 ジェンガのお題で、みのりとレミがポッ◯ーゲームでチューの危機に晒されていた!!


「ちょっとザックリしすぎじゃない!?」

「他に印象深いシーンあったでしょうが!」


 いや、前回の衝撃がインパクト有りすぎて……


「……で、でも! あたしたちポッ◯ー持ってないから、無効って事でスルーでブロック置けるんじゃない? ね、ね!?」

 レミも乙女の国境線を守るために必死だ。

 しかし、みのりの方がプルプルと唇と手を震えさせながら、レミにカミングアウトする。


「………ゴメン、レミちゃん――!!」

「え? まさか、ポッ◯ー持ってるんじゃ……」


「いや、持ってるのプリッ◯の方……」


「そっちぃぃぃぃぃぃッッ!!!?」


 まぁ確かに似てるけども……ポッ◯ーゲームとプリッ◯ゲームは、同等として見ても良いのでしょうか? ジェンガのブロックで確認してみよう。


『二人でポッ◯ーゲームをしてキスをする』


 もう一度見てもポッ◯ーゲームとしか書いてませんね……ってあれ、その後に小さい字で何か書いてありますね。


『―――ただし、ポッ◯ーが無い代わりにプリッ◯がある場合は、それを代用しても良い』


 ………だって。


((チーン……………))


 お題スルー、不回避確定。

 これを受けてみのりとレミは、全身真っ白な灰になって立ち尽くしていた。



「……えーい! こうなったら覚悟決めるわ!!

 ――レミちゃん、カモンあマイマウス!!!」


「ちょ、マジ!!? 本気でやるの!?」

 みのりは先端を歯で支えつつ、長めにプリッ◯を咥えて臨戦態勢に入った。目線も本気モードだ!!


「大丈夫! 寸止め感覚でタッチする感じでいいから!! ディープにならないように歯止めするから!!」

 いや故意でも過失でも、舌入れたらそれこそ百合小説へご来場ですわ。


「………分かったわよもう! ギリギリストップで頼むわよ!!」

 もう片方にレミの口がセットされ、両者スタンバイOK。さぁ御二方、お食べなさい!!


(やっばぁ~……何この変な感じ……)


 レミは気が気じゃなかった。何しろ真正面で構えるみのりは嫌がる様子は無く、満更でもない顔でこっちに迫ってくるのだから。


 ジリジリと距離を狭め、カリカリとプリッ◯の塩味と香ばしい香りを楽しみながら、刻一刻と仲間の口元に近づいていく。

 ――まさに恥じらいのチキンレース。百合とノーマルを左右する運命の境界線。



 そしてーーー唇がゼロ距離まで狭まった!!



 ………………………ピトッ☆




「「キャアアアアアアアア!!!!!」」




 JK女子ペア、我を忘れて大騒ぎ。

 え、まさか触れちゃった? キスっちゃった!? あらやだキスったのかしら!!?


((ふわぁ……やっちゃった――――?))


 みのりもレミも、顔を真っ赤にさせながらこの混乱を抑えようと必死だ。


「………ねぇみのりちゃん、ちょっと、よね? 軽く小さく唇にタッチした程度でも、OKだよね??」

「う、うん……?『ピトッ』といっただけだもん。フェザーだったも、も、もんね」


「そうだよねッッ!! うん、絶対そう、はい決定ッッ!!!」

 まるで自分で言い聞かせるように、お題はクリアした事を必死に無機質なピンクのジェンガタワーにアピールした。


 ジェンガさんからの審議結果は、『OK』である。


「「はぁ~………」」

 無理を言わせたお題を終えて、すっかり脱力した二人である。


「……でもみのりちゃんさ、やってるとき妙にその気だったじゃない? まさか本気であたしとキスしようと――」


「違う違う違う! そんな気なんか無いよ!! 私は本気でキスするなら、剣くんと……」

「なんだそんな事だったの! 驚かさないでよ~………………って、え゛???」



 ………え゛???

 みのりちゃん。今、何て仰いました?


「ん? だから『本気でキスするなら剣くんと』って………」


「ちょ、ちょ、ちょちょっと待って!!?

 もしかしてみのりちゃん、剣くんの事………」


 みのりはさっきよりも顔真っ赤に恥じらいながら……


「………………………うん♡︎」


「#△%□◎☆♭&△!!!??」


 レミはこの瞬間、ブラックボックスな頭がパンクした。韋駄天も真っ青になるくらいの全力暴走によって、レミはゲーム内空間をノンリミットで駆け回る。


 ――だがみのりのカミングアウトには、続きがあった。


「――――と、本気キスするつもりでやろうかなって思っちゃって……キャッ☆」



 ズコオオオォォォォォォォ、ドカッ!!



 全力暴走から思い切りずっこけたレミは、その勢いで中段の骨組みをさらけ出したバランスの悪いジェンガタワーに激突した。そして……


「あ」


 ―――ドンガラガッシャァァァァン!!!!


 恋バナは儚く、そしてジェンガタワーも儚く。デリケートなカミングアウトと共に崩れ落ちてしまった。


「………ありゃりゃ」

 みのりは崩れたジェンガタワーに眼をぱちくりさせながら、その末路を見送った。


「いてて…………な、何なのよ、その話ぃ~!!」

 ジェンガタワーの瓦礫に下敷きになり、ようやく這い上がったレミ。


 読者の皆さんも、みのりが剣と片思いしてるって思ってたでしょ? 残念でした! まだ彼女にはその恋心は芽生えていないみたい。

 彼女の本心を問うならば、今はのだ。


「大丈夫、レミちゃん? ジェンガタワー崩れちゃったね」

 みのりは急いでタワー崩壊に巻き込まれたレミの下へ駆け寄り、救出に手を貸した。


「もぅ~! こんなゲームの終わり方ってある!? あたしてっきり……」

「てっきり、って何?」

 みのりの問いにレミははっとした。


 剣に片思いしてるって言ったら彼等の関係が拗れるかも、そう思いつつ言うのを躊躇った。


「………ううん、何でもない!」


「そっか。でもさっきのレミちゃんのあれ見てたら………クスッ」

 先程のレミの混乱、そしてコントのような展開に思わずみのりが笑い出す。


「な、何よー!! みのりちゃんだってあの本気でキスする顔、思い出したら……フフッ!」


「「キャハハハハハハハハッッ☆☆」」


 二人とも満身の笑みで大笑い。

 ゲームは呆気なく終わったが、自分をさらけ出して久々に心の底から笑った、微笑ましい一面であった。


『ピリリリリリ――』

 その時、プレイギアからプレイ報酬が送付された通知音が届いた。


「……あれ、何かアイテムが届いてる!」

「あ! あたしにも!!」


 その報酬の内容は、『ハートフルジェンガ』をプレイした暁に送られた【ハートフルペンダント】というチョーカー型のアクセサリーであった。


「わぁ~綺麗!」

 ピンクの小さなハートに、ブリリアントカット型にコーデされたきらびやかなデザイン。


『ハートフルジェンガ』をプレイしてくれたプレイヤーに、今後も仲良く笑いあえる友達でありますようにと、尊い願いが込められた御守りのアイテムなのだ。


 早速二人はそのペンダントを身につけ、互いに見せあった。


「――私達、お揃いッ!」

 みのりはにこやかにペンダント同士をくっ付けあう。


「………あたし、今日みのりちゃんと遊べて分かったの。友達と遊ぶことって、一人よりも数倍、いや数百倍楽しいって!

 ――あたし改めて、みのりちゃんと出逢えて良かった!!」

 ようやくレミも素直な心でみのりに笑顔を魅せてくれた。


「……今度はさ、剣くんと槍一郎くんも一緒に誘おうよ!!」

「そうね! 絶対楽しいと思う!! それに……あたしみのりちゃんも皆も、大好きだもん♪」


 レミの方からみのりに向かって、ムギューっと優しく抱きしめた。

 それに応じるようにみのりも抱き締めあう。


「私も、みーんな大好き☆

 これからもずっと友達だからねッ!!」


 ◇◇◇


 ――現実世界、ゲートの設置した高校の校門付近。


 みのりとレミは元の世界に戻った頃、丁度別々にゲームワールドに行ってた剣と槍一郎も戻っていた。


「おっ! みのり達も丁度帰ってきたか!」

「二人で何してたんだい?」


 剣と槍一郎は仲睦まじく、清々とした顔で帰ってきたようだ。

 みのり達もそれに対抗するように……


「「べーつにぃ?」」


 その答えは、二人の身につけた『ハートフルペンダント』だけが知っている。


 ―――全てのプレイヤーが、ゲームを通じて素敵な友達と出逢えますように………!

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