第82話~死闘と復讐の終焉、そして……~

 ――ピリリリリ……


 現実世界の桐山家に1通のプレイギア着信音が聞こえた。

 在宅していた剣の祖父、桐山矛玄きりやまむげんがプレイギアに応答した。



「……はい、桐山です。――おお、角田つのだ君か」


 通話の相手はゲームワールドに閉じ込められていたWGCの角田銀次郎つのだぎんじろうだった。


『良かった!やっと現実世界に繋がった!!あ、桐山さん!大変なんです今ゲームワールドで……』

「慌てんでいい、ワシも前日からテレビで様子は観た。それよりも孫の剣は無事か?」


『えぇ、無事どころか……デュエルフィールドでそのテロリストと勝負しとる最中ですわ!!』


 矛玄はびっくりしながら、

「ほぉ~!勇敢じゃな、流石我が孫だ!!」


『呑気に感心しとる場合ちゃいますって!!早く応援呼ばんとお孫さんが……』


「応援は呼ばんでも剣は大丈夫だろう」

『な、桐山さん!そんな殺生な!!』


 終始穏やかだった矛玄の表情が急に真剣になった。


「――剣が自分の好きなものを守るために必死で特訓をしてたんだ、おじいちゃんのワシが一番知っとるしそれを信じなければイカン。

 それにあのブラックヘロンとか言うテロリスト、トランスホールを狙っているんだろう?」


『……知ってはったんですか?奴等の動機を』


「ずっと前から調べていた。大阪でならず者のプレイヤーをかき集めてWGCにやたらと固執していた行動をした上でトランスホールを付け狙った……そのボスはズバリ、大鷲英機おおわしひできだろう?」


 もう既に事の要点は矛玄にとってお見通しのようだった。


『……敵いまへんな桐山さんには。仰る通り、その大鷲がテロを動かした!自らののために――!!』


 しかしその後に矛玄が発した言葉からは、無情にも冷酷な末路が語られた。


「……その復讐も終わるだろう。

 人類がゲームを望んだように、時代もゲームを選んだ。そこに取り残された者は――にある」


 ◇◇◇


 ゲームワールド・デュエルフィールド会場では、死闘繰り広げた予選最後のゲームを終え、桐山剣が勝利を手にした所だった。



「やったーーーーッッ!!!!剣君が勝ったーーーー!!!!!」


 控え室で様子を見ていたみのりは剣の勝利に大喜び。しかし一緒にいた銃司は既に姿を消していた。


「あれ、銃司君居なくなっちゃった。まいっか!剣君の所行こうっと♪」



 会場の天高くそびえるピラミッドの頂上に剣はいる。その表情は勝利への歓喜よりも朽ち果てた烏田の同情が強かった。


 そして、剣は烏田に近づいた。


「ち……畜生が……なんでこんな時代に……ゲームに現を抜かす時代になっちまったんだ……ッ!!」


 それに剣は答えた。


「……知らねぇよ。今俺達が生きてる時代が、戦争に巻き込まれたりゲームで支配されていたとしても、俺達はただ生きるだけだ。

 いつか自分がこの時代に精一杯生き抜いた事を誇るために――!!」


「……………………」


「――――お前もまだ生きたいと思うならさっさと立てよ。抗って、這い上がって、また俺と勝負しようや」


 剣は烏田に手を差し伸べた。同じプレイヤー同士他人事に思えなかったのだろう。


 烏田は躊躇ったが、剣への悔しさと未練が残るうちに思い立った。

 もう一度、やり直せるなら……


 烏田も手を差し出そうとした、その時――!!!!



 ビシュン――――!!!!!



 謎の光線が剣の目先に遮り、その刹那に手を掛けようとしていた烏田が姿――!!



「……え、烏田――!???」



 何が起きたか分からなくなった剣、そこに会場のアナウンスが……


『私に逆らった挙げ句、ガキに助けを乞われるとは……屑にも劣る!!!』


 咄嗟に剣はアナウンスのモニターの方向に振り向き、憤った。


「オイ!!てめぇ烏田に何しやがった!!!」


『ゲームなどという俗物の敗北者など、トランスホールの力でしてやったまでだ』


 トランスホールにセキュリティをかけたデータの中に不要なデータを消去する装置があった。そこに目を付けた大鷲はこれを使ってゲームワールド諸とも消去する企みだったのだ。


『貴様らプレイヤーはデータに変換されてゲームワールドに転送される。つまりこれを使うことで……』


 剣は要点を悟り、その直後におぞましいほどに戦慄が迸った。


「まさか……お前、烏田を――!?」


。もう体も御霊も残っていない』


 剣はこれを聞いて震えが止まらなくなった。抗おうにもPASを使った事もあり、思うように体が動かなくなっていた。


「お前……自分が何やってるか分かってんのか!?」


『分かっているとも、人類で歴史上最も俗悪な産物を消去しているのだ。それに伴う犠牲も致し方ない』


「ふざけんなッッ!!!!この世界を作った同じ人間が神みたいな事言ってんじゃねぇ!!!!!」


『黙れ!!低俗な娯楽に社会投資した下等人物に目を醒まさしてやるッッ!!!!

 人類の文明を在るべき姿に還してやるのだッッッッ!!!!!!』



 その時、ゲームワールドの上空に白いエネルギーが辺り一面に広がった!!




 『――この不要な電脳世界諸とも……消し去れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!』



 白いエネルギーは空や街も全てを包み込もうとしていた。

 そして全てが真っ白に……終焉の時来た――――



 …………筈だった。




「……あれ?剣君何してるの?」

「――みのり……?」


 剣は姿勢を低くし、身構えてた様子でいたが何も起こらず呆気に取られていた。




 その理由は剣やゲームワールドオンラインの消去の直前に、大鷲の異変にあった!



「な、何だ!?私の手が……!!?」


 大鷲の手先がデータ粒子のように細かくなり、徐々にされていたのだ。



「これはッッ……一体どういう事だ!!!?」


 その答えは同じ総本部で束縛されていたWGC社長の外崎博行そとざきひろゆきが知っていた。


「ゲームワールドの【神の裁き】だ……この世界に仇なす者やプレイヤーとしての掟を破る者に下される、だ――!!」


「何だと……?!この世界にが存在するというのか――!???」


 大鷲には予想だにしていない情報だった。人類の欲望で作られたゲームワールドに『神』の存在があった事を。

 それは誰かが操作した訳ではない。この世界自体がを持っていることを時代に残された大鷲は知らなかったのだ。


「い、嫌だ!!消えたくない!!!だ、誰かッッ!!!!助けてくれええええぇぇぇぇぇぇ…………」


 悲痛の叫びすらも書き消され、データ1つ残らず大鷲英機はゲームワールドから消去された。



 時代の流れによって引き起こした復讐は哀れにもその時代の産物によって終焉を迎えることになった。


 ゲームワールドに脅かしたテロリスト集団『ブラックヘロン』、ボスのにより、壊滅の一途を辿る……




「ゲームを俗悪な文化と意識付けられた時代は……遠い昔に終わってるんだよ――!!」

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