第81話~桐山剣、覚醒!!~

 ――プレイヤーバザール内の救急病棟。


 ハイパーチェスにて負傷した槍一郎を看取るレミと豪樹、幸いにも軽傷で済んだ槍一郎は回復して目を覚ました。



「――あ、槍ちゃん!あたしと豪樹さんの事分かる?」

 目を覚ました槍一郎に気付いたレミはいち早く問いかけた。


「…………あぁ、ちゃんと見えてる。何度見ても見飽きない個性的な面だ……」


(どーゆー意味だ?それ)

 レミは少しカチンと来たようだ。


「……そうだ!剣は!?剣の試合はどうなったんだ!!?」


 剣の事を思いだし、いきなり慌てた槍一郎を豪樹がなだめた。


「落ち着け!剣は今一生懸命戦ってるとこや!!」


「そうか……まだ終わってなかったか」

 槍一郎は内心ホッとした。


「――ねぇ、槍ちゃん。剣君に最後のゲームを託したのってリーダーだからとかの理由だけじゃないとあたし思うの。

 槍ちゃんもしかして……剣君のPAS、んじゃないの?」


 これを聞いた槍一郎の顔に少なからずも図星に突かれた表情が浮かんだ。


「……剣とレースゲームで初めて出逢った時から感じたんだ。彼のPASの波動が微かに僕の能力から感じ取った。

 あの波動は……僕の槍よりも!!!!」


 ◇◇◇


 さぁここからが本題だ。

 デュエルフィールド会場に奇跡が起きた!!


「貴様……その右手に持ってる【剣】は何だぁぁぁぁぁ!!!!!」


 PASの暴走により錯乱状態に入っていた烏田でさえもこの状況に正気に戻るほどの衝撃を受けた。


 剣は右手に宿る赤い剣のようなオーラを眺めながら烏田の質問を返す。



「……こいつか?俺も驚いたよこの【剣】!これを持ってるとさ何にでも勝てる気がする!勇気が、力が湧いてくる!!

 俺のPAS!【ロングソード】!!!!」



 ◎PAS【ロングソード】

 ・タイプ:アーティファクト/ウェポン

 ・プレイヤー:桐山きりやま つるぎ

 ・能力:『剣』の名の如く、敵を一刀両断!ゲームと仲間の想いが形となり最強のソードとなって覚醒した桐山剣の物質系、武器型PASだ!!



 しかし、ゲームの状況は危機迫るものがあった。烏田のPASによる大量山札消費と剣の束縛から烏田の山札が残り15枚、剣が70枚と圧倒的な差が付けられていた。



「――ちょっと本気出させて貰うぜ。PASの効果がどんなか知らねぇが、俺の全身全霊、全力出し切って!お前にぶつけてやるッッ!!」


 剣のPASの波動が更に強くなった!


「な……生意気言ってんじゃねぇクソガキがああああああああああああ!!!!!」


 烏田も再び理性がキレ始め、両者臨戦体制へ!!合図は台札にカードが降りるスピードコール!


『アルティメット……スピード・GO!!』


 台札にカードが置かれた!!



「くたばれぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!」


 烏田が再び束縛技『ハンドコントロール』を出そうとする!


「――PAS発動!!」


 剣はソードのオーラでハンドコントロールの糸を弾き返した!!


「がっ……!!」


 そしてその隙に剣が繰り出す『トランプカード』!!


「『ワイルドホール』!!」


 トランプカード・ワイルドホール、台札の1つにナンバーカードの連鎖を無視して一定時間好きなカードを置けるブラックホールを作る!


「しめたこれなら……んなッ!!??」


 烏田はチャンスと思ったも束の間、剣が繰り出す遊奥義に手出しが出来ない!!


「遊奥義【エース・スロー】!!」


 抜けば飛び散る千本ナイフの投げ技の如く疾風のスピードで剣の手札にあったナンバーカードを一気に消費させる!!


 60、50、40と剣の山札が減るなかでも烏田は手詰まり状態、片方の台札のカードでは続けて出せない。八方塞がりだ!


 ここでワイルドホールの効果が無くなった!剣残り山札が30枚弱!!


(クソッ!!こうなったら殺してでも剣を……!!!)


 烏田が剣めがけ起爆させようとするなか……


「『ホールド』!!」


 再び剣が繰り出したトランプカード!『ホールド』は相手の行動を10秒間ストップさせ、その効果はPASにも適応する!


「か、体が……動かねぇえぇえええ」


 烏田は全身がきしむような束縛感を味わった。


「さっき散々俺を縛りやがったお返しだぜ!!」


 更に剣はテンポの良いハイスピードで山札を減らし、残り15枚!烏田と並んだ!!


 そして同時に烏田の束縛も解放される!だが烏田は逆転迫るなかであのがフラッシュバックした。



(い、嫌だ、負けたくない、負けたら終わりだ、またドン底に落ちるのだけは御免だ。

 終わりたくない、マケタクナイ……イヤダァァァァァァァッッ!!!!!)



 烏田の精神に混濁と焦燥心が混ざりあい、今にも精神崩壊寸前になろうとしていた。そんな彼が繰り出す遊奥義――!!


遊奥義ユウオウギ……【ビッグボム・バーン】ッッ!!!」


 会場を埋め尽くすような超巨大な爆弾が剣の頭上に降り注ぐ!!!これで爆破されたらひとたまりも無い!!!



 だが、剣は――!!!


「遊奥義――【エース・スラッシュ】!!!!」



 ――――斬ッッッ!!!!!


 PASによって繰り出された正真正銘の『エース・スラッシュ』が巨大爆弾を一刀両断!!!



 爆弾の残骸がピラミッドの左右に崩れ落ちた!!!!


 そして剣は追撃のカードドローへ――


「……終いにするか!トランプカード『オーバーリセット』!!」



『オーバーリセット』、その効果は……


 相手のゲーム進行状況を。つまり――!!


 烏田の残り山札の枚数は初期状態の100枚に巻き戻された!!!


 終盤で何という番狂わせ、圧倒的な運に叩きのめされた烏田康宏、万事休す。


 ◇◇◇


 これを控え室で見ていた銃司は……


(……あの烏田の敗因の1つは最初のうちに半分以上も山札を叩き落としたばかりに、切り札のトランプカードをも使えなくさせた事。


 ――だが気になるのは剣のPASだ、あの切り札の使い方は偶然にしても都合が良すぎる。まさかと思うが……!!)


「剣君……カッコいい~☆☆☆」


 銃司の解説そっちのけでみのりは眼をキラキラさせて剣に見惚れていた。


 剣のPASに隠された能力、それは槍一郎がいち早く知っていた。



「――僕の槍とは格が違った!!剣のロングソードは…………

 !!!!!」


 ◇◇◇


 残り山札100枚の状況に茫然の立ち尽くす烏田に対し剣は残り山札5枚、着々とフィニッシュに近づくなかで……


 烏田の理性が完全にブチッとキレた。



「うぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッ」




 精神が壊れ、自暴自棄になった烏田はフィールドを駆け出し剣目掛けて突入した。

 そして烏田の体には起爆装置の点滅の光が……


「もうゲームなんかどうでもええ!!貴様だけぶち殺して俺も死ぬ!!!死ね!!!!死んでしまえ!!!!!

 死にくたばれええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」



 最早烏田に救う余地は無い。そう思いつつ、剣は無表情のまま右手にPASを集中させて山札最後のカード『1』を構えた。



「シニヤガレツルギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!!!!!!!!!」



 烏田迫る寸前、剣は最後のカードを台札に投げた!!そして――――――――





「――――遊奥義!!【エーススラッシュ・十文字斬り】ッッ!!!!!」



 十字に烏田に向けて斬りつけ、その衝撃で吹き飛ばした!!




 ――――ズドドドドドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!


 吹き飛ばされた烏田の体に起爆装置の爆破が花火のように連発され、ボロボロに吹き込んだ。



「……これだけは言っとくぜ烏田。どんな理由だろうともゲームに溺れる奴は……

 ――――身を滅ぼすぜ」





『ゲーム・セット!!アルティメット・スピード勝者、桐山剣ッッ!!!!!』





 G-1グランプリ予選の激闘は桐山剣の勝利で終わった……


 だがブラックヘロンの野望は潰えてはいなかった!!



「……あ!ボス!!丁度良かった今やっとトランスホールのセキュリティが――」


「早くよこせッッ!!!!」


 ブラックヘロンの工作班を払いのけ、倒れていた筈の大鷲英機が代わりにコントロール席を横取った。



「これで終わったと思うなよプレイヤー共め……今度こそ皆殺しだ!!!!!」

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