第71話~燃え上がれPASパワートライアル!!~
剣がプレイヤー代表として、猛虎の如く宣戦布告を掲げた。そして後から場内アナウンスとして大鷲の声が会場に鳴り響いた。
『――ワハハハハハハハ!!面白い!たかが4人で我々に虚勢を張る度胸があるとは認めざるを得まい。ならば打ち勝ってみろ!!ゲームに現を抜かす愚か者めが!!!!』
交渉成立、テロリスト集団とたった4人の抗うプレイヤーだけのG-1グランプリ予選、後半戦が始まろうとしていた!
(こんな状況でも勇気を出してゲームに挑むプレイヤーが居るとは……せめて、
そこに割り込んで入るように本部室に束縛されていた魂の実況者・
『――天使か悪魔か、プレイヤーか!?テロリスト蔓延る修羅場にも地獄の底から這い上がる、阿修羅の如き勇者がここにいた!!!
だが我々はただ信ずることのみを得ないだろう。ゲームワールドが滅びゆくとも彼らこそがプレイヤー達の希望であることを!!
――さぁ生き残った4人のプレイヤーは果たして世紀の英雄となるのか?
或いは絶望の生け贄にされてしまうのか!?
その勇姿を刮目してみようではないかッッ!!!!!』
各エリアにて人質に取られていたプレイヤー達はモニターからこの実況の様子を聴き、歓声に交えた声援が飛び交った。
「ヒューッ!いい仕事してくれんじゃん実況のおじちゃん、そうこなくっちゃ!!」
剣達もこれを聴いて断然やる気が湧いてきた。
『さぁ後半戦を始めよう!!6th《シクスス》 STAGE《ステージ》はアドレナリン全開、限界突破アスレチックだ!!!!』
次の瞬間、会場内のステージが変化し鉄や鋼などの無機質なアスレチックが姿を現した!
『――静寂な鉄に飛び交う熱き魂!たとえその炎燃え尽きようとも力の限りその体でタイムを刻み込め!!
6th STAGE、【バーンアウト・トライアル】!!!!』
☆☆☆
PLAY GAME No.16
★G-1グランプリ予選 6th《シクスス》 STAGE《ステージ》★
【BURNOUT TRIAL ―バーンアウト・トライアル―】
・ジャンル『タイムトライアルゲーム』
・プレイヤーレベル:37
ルール
3つのエリアゲームをクリアしそのタイムを競いあうタイムアタック型ゲーム。その最速タイムを狙う鍵はスピード、パワー、そして集中力をかけ備えたスキルが必要とされる。
①サークルフラッシュ
半径7メートル、円型に設置されている9つの柱に付いているセンサーをランダムに点滅するライトが光る順番に押していく。9つ全て押した時点で扉のロックが開き先へ進める。
②ヘブンリーアンカー
重さ50キロの錨を長さ10メートルのポールの頂点に達するまでロープに引き上げる。上げきった時点で扉が開く。
③プレッシャーオペレーション
ランダムに書かれている数字のボタン20個の中からモニターで写し出される数字と同じボタンを探して素早く押す。間違った数字を押した場合は3秒間操作不能となりロスタイムとなる。
これら3つのエリアを突破した先にあるボタンを押した瞬間にクリア。その時のタイムで競いあう。
☆☆☆
予選6番目のゲームはアスレチックを要したタイムアタック。センスを問わずただ己の肉体、精神を競いあうシビアなゲームである。
『我々の方は貴様らに合わせて、4名代表を選んで一対一で勝負してやろう。さぁ準備にかかるがいい!』
バーンアウト・トライアルはタイムアタックながらも二人で行う。
ブラックヘロンは大勢いるなかの代表を選ぶなか、オールスターズは4人とも参加。しかしその中でも有利なプレイヤーが。
「槍ちゃん、こーゆーゲーム結構得意な方だろ?スピード勝負強いし」と剣。
「ああ、問題はない。戦況的にも先手でリードできる」
オールスターズ唯一のオフィシャルプレイヤー、天野槍一郎。
かつて剣と彼が出会った時に魅せた音速スピードテクニック、あの驚愕のプレイを見せつける時が来るのだろうか。
そんな彼に1つだけ、剣は疑問に思っていることがあった。
「……まぁこんな時にぶり返すのもあれだけどさ、何でいつもゲームで本気出せないんだ?予選のシューティングといい、お前の実力はそんなんじゃないの皆知ってるんだぜ」
槍一郎は剣の質問に耳を傾けながらも淡々と準備をしながら答えた。
「……本気は出せないじゃない。出したくないんだ」
「出したくない?何かトラウマでもあんのかよ」
「ちょっとね。剣達に出会う前にトラブルになっちゃって……でも今はそんな躊躇なんかしてられないよ。――僕もそろそろ本気出すよ」
「おっ!じゃあれがまた見れるんだな!!」
「非常事態だ――フルスロットルで相手になる!!!!」
両肘、両膝のサポーターを付け終えた槍一郎の目が切り替わるようにキリッとした。
◇◇◇
『――ボスからの指令だ。予選出場に選考した4名は直ちにデュエルフィールドに集結せよ』
ボスの側近のプレイヤーが各地で無線を飛ばした。
ブラックヘロンに収集された4名、そこに記された罠とは……?
G-1グランプリ予選後半戦、6thSTAGE『バーンアウト・トライアル》』がいよいよスタートとなる。
シャッフル・オールスターズとブラックヘロン。両者4名ずつ参加プレイヤーを出し合い、負ければ即リタイアのデスマッチ戦として後半戦のルールが設けられた。
準備が整い、残すは新垣実況のコールを待つのみとなった。
……来た!魂の実況者 新垣治郎が浮遊する小型ジャイロに乗ってアナウンスが始まった!
『鋼鉄のアスレチック、アスファルトジャングルに2つの意思あり。
ゲームワールドを生き抜く者と破壊する者、これらがぶつかり合うとき混沌の空間と化する!その修羅場に勝利をもたらすのは果たして誰か!?
――その正義はタイムで白黒付けようではないか!!!』
4vs4でのタイムトライアルバトル、初陣を斬るのはオールスターズ・桐山剣。
ブラックヘロンからは
(それにしても、あいつ鼻長ぇな……)
筒木のキツツキのクチバシのような鼻に剣は少し引いていた。
「……何ジロジロみてんだよ、鼻で突っつくぞ!」
(やっぱキツツキやんけ……)
剣は呆れながらも、試合前に槍一郎に言われた事を思い出した。
≪――いいか剣?昨日の研究所でPAS《パス》の事を知ったとはいえ、お前は覚醒前の未完成だ。不馴れなゲームでPASを意識しても敵に隙を見せるだけ。
今は自分の持てる力で耐えるんだ。チャンスは必ず剣の前にやってくる――!!≫
(……焦れったいけど、確かにタイムトライアルは慣れてねぇし急かすことでもない。ここは様子見だな)
剣は呼吸を整えて、臨戦体制に入る。
準備は整ったか――!?
『3,2,1……』
音声アナウンスのカウントコール、からの……
『GO!!!』
さぁ、刹那の沈黙から両者一気に動き出した!と言ってる側から!!
「PAS発動――!!【ウッドペッカー】!!!」
「な!?PASだと!!?」
剣は驚愕した。あのキツツキ鼻がPASを使うとは思いもしなかった。
◎PAS【ウッドペッカー】
・タイプ:アニマル
・プレイヤー:筒木 小二郎
・能力:キツツキの能力を最大限発揮させた動物型PAS。毎秒20回の早さで固いもの等を堀削るキツツキの性能から連打やクリティカルヒット率増加等の効果を持つ。
「悪いがノロマは置いてくぞ!!!」
第1の関門、サークルフラッシュを筒木は目にも止まらぬ早さで右往左往に素早く押していく!
「やべっ!急がなきゃ!!」
剣もそれに動揺しつつもボタンを押していった。しかし一歩リードしているのは筒木だ!
次の難関、ヘブンリーアンカーへ。先程リードしていた筒木は軽量の立端ゆえにパワー不足か、50キロの錨に悪戦苦闘していた。
これに対し剣は差を縮めていく!
「なんだ?さっきのスピードはどうしたよ、キツツキ!」
「う、うるさいッ!!」
特訓の成果からか重い錨を軽く上げていく剣余裕の煽り文句だ。
さぁここで、剣が追い返し逆転リード!ドアのロックが外れ最後の難関、プレッシャーオペレーションへ!!
ここで焦りは禁物だ。モニターに書かれたコマンドを少しでも間違うとロスに繋がる。
桐山剣、ここはスピードを押し殺し慎重にコマンドを打つ。
おっと、ここで6秒程遅れて筒木も最後の難関に入った!
「クソッ!このまま終われるか!!【遊奥義・千本ピック】!!!」
PASの専売必殺、遊奥義が炸裂する!!
剣の連打技、『エース・スティンガー』を更に凌駕した人間バイブレーションだ!!!
だが――!?
「く……振動で、指先が言うことを聞かないッッ――!!!」
PASには特徴がある分、当然弱点も存在する。
キツツキの特性には固いものに穴を開けるときの脳への振動に耐えうる程の力を用いているが、人間である筒木にはこの連打の際の振動を制御する力までは得ていない。
その為連打する時の振動が指先に止められず、コマンドが思うように打てないのだ。
(こいつ、PASが制御出来ていないのか!よーしチャンスだ!!)
暴走する筒木とは裏腹に剣は己のペースでコマンドを押していく!そして――!?
「これで、ラストッッ!!!!」
剣は20回のコマンドを打ち終わり、ドアが開いた瞬間直ぐにボタンをプッシュ!!
フィニッシュのブザーが鳴り響き、ゲームクリア!!タイムは……1分2秒43!!
筒木はそれに11秒遅れてクリアした。
「くぅ……突っつきすぎて頭が痛い……」
PASの力を使い果たして頭痛を引き起こした筒木、キツツキの力を持っても連射力は人間の力で熟練していかねばならないという事である。
「……礼を言っとくぜ筒木!PASは未熟者が使うもんじゃないって、よーく覚えとくぜ!!」
勝ち誇る剣、初陣を切りながらも余裕で勝利した。
◇◇◇
……さて、ここからはダイジェストなってしまうことは申し訳ない。しかしちゃんと結果はお伝えしよう。
第2試合はオールスターズ、高橋豪樹が出陣。
パワーに長けている豪樹はヘブンリーアンカーにて、強烈なスピードを見せつけブラックヘロンに圧勝した。タイムは1分1秒90。
第3試合では畠田レミ、スピードは申し分なし。
女性ハンデの30キロアンカーでは手こずったものの、最後のプレッシャーオペレーションでは無駄のないコマンド入力で差を付けてクリア。タイムは1分8秒87でレミの勝利。
どちらもブラックヘロン側にPASを使う者がいなかったのも勝利の一因となった。
そして残すは……大将戦!!
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