第64話~万事休す!!~
かくして5thSTAGEのマインスイーパ、リアルなマインスイーパ、2つのゲームが交錯する危険な遊戯が始まった。
シャッフル・オールスターズはみのりを除き剣が2回戦進出の時点で、その他3名も1回戦開始前に爆弾処理に向かうべく棄権した。
残りのみのりはその後、仲間の奮闘を信じて2回戦、3回戦と着々に進んでいった。
その持ち前の集中力は仲間を信じてこそ得られる力量なのか。
一方、棄権して爆弾処理に向かうオールスターズは大会の模様からどのブロックから起爆するのか、爆弾の配置場所をパソコンから探しだし着実に処理していった。
「オイ!!そこから離れろ!!爆弾があるぞ!!!」
「無闇に爆弾触んなボケッ!!!」
「……よし!解除だ!!!」
緻密な行動、処理作業もあってこれまでプレイヤー達の被害はゼロに留まった。
そして――!!
「やった!!決勝進出だ!!!」
みのりも渾身の集中で見事ノーミス、初の決勝戦までこぎ着けた。
(これでラストよ、これに勝てば剣君達と一緒に……!!)
◇◇◇
一方、総本部では――
「――邪魔立てする者の検討は着いたのか?」
ブラックヘロンのボスが工作班に質問する。
「それが、運の悪いことにやられた同胞の殆どがショックが強すぎて名前も姿も覚えてないというんです。
――ただ覚えているのが、『剣』という文字だけで」
「『剣』だと!?」
確かに試合の最中にも『剣』コールが起こり、ボスもそれなりに存在は把握していた。
しかし主な外見や名字までは知られていない。
「それと……あれから爆発も無いのはどういう事だ!?指示は取ったのか!!」
流石のボスも爆発がしばらくないことに違和感を抱いていた。
「それが……何者かに爆弾処理をしているようで、一向に進行されてないので――」
「バカ者!!!さっさと止めないか!!!!」
「はいッッ!!」
工作班は早速報告に入るなか、ボスにはある確信があるようだ。
(まぁ良い、いずれにせよこの計画は初期段階だ。最低一人は犠牲になって貰うがな――!!!)
◇◇◇
そして、Ωブロック決勝戦。
『――マインスイーパ試合に、まさかの本格爆発演出まで混じって最早試合どころでは無いところでしょうが、しかし!!
それでも私は挫けない!修羅を乗り越え勝利を手にするプレイヤーが現れるまでは!!!!
さぁ、5thSTAGEいよいよ終盤を迎えました!決勝戦、危険地帯を越えた2人の登場だ!!』
レッドコーナー、シャッフル・オールスターズの河井みのり(16)がコントロールパネルに着き、フィールドに向けてリフトアップする。
次に相対するブルーコーナー、これまた実力未知数、
「…………」
無口なだけに、何をしでかすか分からない烏田。
そして、このゲームでみのりの予選後半戦進出の鍵を握ることになる。
決勝戦では500のパネルに地雷が100個の状態でスタートするが…
――さぁみのり、覚悟は出来たか!?
『ゲーム、スタート!!!!』
まずは、烏田のターン。スイープルーレットスタート!!
ストップ、数字の『7』!!
「チッ……」
初っぱなから多くのパネルを処理しなければいけない烏田。
しかしそれに躊躇うことなくあっという間に処理していった。その中には『3』『2』とパネルに書かれてある。
(この人、1ミリも躊躇してない……只でさえ1/3の確率に地雷があるのに)
みのりもこの流れに乗るべくスイープルーレットを回す。
数字『4』にストップ!!
「よし!これなら……」
各ターンの制限時間は1分。みのりも油断なくパネルを潰していく。
そして時間ギリギリでパネルを潰し終えた。
「ふぅ……!!」
みのりは一息付くなかで烏田が茶々を入れる。
「何をビビってるんだか、たかがゲームで」
「え――?」
「小娘には分かるまいよ、本当の修羅場を知ってる奴にはこんなゲーム……温すぎる」
「……何が言いたいんですか」
みのりも少し強気になって言い返す。
「――もしもだ。もしもこのゲームが本物の地雷が埋められている中でそこから抜け出せと言われたら……そこまで余裕になれるか?
修羅を知らない平和主義者がゲームで英雄を気取るなッッ!!!!」
「――ッッ!?」
その瞬間、烏田の手が光り始めた!
そして烏田のターン、ルーレットは『1』!!
「特攻流・
――――ドォォォォォン!!!!!
パネル処理の1発が隕石の衝突の如く広範囲にパネルが潰された。
その範囲は丁度70マス分、さらに――
「地雷が……作動しない――!!??」
広く放たれたインパクトの跡に埋めてある地雷が綺麗に残してあった。
これはまた、ブラックヘロンの作った『B.H Ba』のせいかとみのりは思ったが……
(――違う、そうじゃない!あの人はUSBを使ってないし小細工していた様子もない!!
あの技はそう……槍ちゃんやレミちゃんが使ってたような超人技に近かった!!!)
確かに以前槍一郎もレミも、そして今の烏田にも使っていた『遊奥義』。
これは小細工無しの本気の実力技のようだ。
「……どうした、怖じ気づいたか?」
烏田が冷徹な顔でみのりを睨み付ける。
「バカにしないでよッ!!貴方がどんなに強くても私だってやれば出来るんだもん!!!
――私が頑張ってる所を、剣君達に見せるんだからッッ!!!!!」
圧倒的な実力にもみのりは屈しない。みのりには屈強な精神が驚異に抗う力と化していた。
(『剣』……!?そういう事か――!!)
みのりのターン!起死回生のスイープルーレット!!
止まったのは――チャンスゾーン!!!
「行くわよ!!チャンスゾーン必殺、『グランドクロス』!!!」
チャンスゾーンの能力『グランドクロス』!!
巨大な十文字を描き、綺麗さっぱりにパネルを潰し、地雷をも消し飛んだ!!!
これでみのりが一歩勝利へリーチがかかった!!――――のだが?!
「……そうか、あんたがあの『剣』の知り合いか」
「!??」
烏田のターンが一瞬で処理を終えて、いつの間にかみのりのターンになっていた。
「じゃ、あんたには消えて貰うか」
◇◇◇
その頃、爆発処理に費やしているオールスターズは1つ気掛かりな事が残っていた。
「ヤバイぞ、残り1つの爆弾が何処にも見つからない!!」
ある程度の爆弾は処理し終えた。しかし残り1つの爆弾が設置場所を見てもどうしても見つからないのだった。
これで爆破でもされたらとんでもないことになる。
流石の槍一郎も焦りが募るなか、剣があることに気付いてしまった。
「おい、最後の1つ……みのりのコントロールパネルじゃないか??」
今まさに、決勝で試合をしているみのりのコントロールパネルど真ん中に爆弾のチェックが印されていた。
「まさか――――!!?」
「みのりッッ!!!!!」
剣は全速力でΩブロックへ向かった。
◇◇◇
「『消えて貰う』って、どういう事!?」
「今にわかる。こういう事だ!!!」
再び烏田の手が光った。
「……え、な、何よ……手が、私の手が勝手に――!???」
みのりの意思に関わらず、まるで操られたかのように右手でスイープルーレットのボタンが押された。数字の『1』にストップ。
そして、パネル処理するカーソルまでも操られている。そして止まったのは……地雷が埋め込まれているパネルだ。
「こいつは俺の遊奥義『ハンドコントロール』、お前の自律神経を奪い取って手先を操作する。
お前には恨みは無いが……これも運命だと思って、消えろ」
最早慈悲は無い。みのり、万事休す。
そこへ――――
「みのり!!!早くそこから離れろォォッッ!!!!」
Ωブロックから飛び込んできたのは剣だった。
「剣君――ッッ!!!」
「もう、遅い!!!!」
……カチッ――!!!
地雷パネルにセットされたカーソルでパネル処理が作動された……
――――――ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!
「みのりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!!!!!!!」
爆破されたコントロールパネルにみのりが尾羽打ち枯らすように倒れこんだ。
コントロールパネルのリフトが下がりだすと一目散に剣はみのりの元へ駆け込んだ。
「――おい、生きてるよな?みのり俺のこと分かるよな!!?オイッッ!!!!」
剣は半ば混乱しながら胸元で必死にみのりを呼び掛けた。
「――――つ……剣、く………ん」
みのりに息はあった。しかし全身はボロボロ、重症の状態だ。
「オイ何ぼーっとしてんだよ、怪我してんだよ医者呼べ!早くッッッ!!!!!」
会場のスタッフ、プレイヤー達でゲームワールドの救急隊を呼びみのりは運び込まれた。
「お前が『剣』か………」
低い声で遠くから烏田が剣を呼び掛けた。
「……俺を狙ってんだろ、何で関係ねぇ親友を巻き込んだ!?」
「精神を潰すには身近な者から潰すに限る。いずれにせよここにいる者は皆消すがな」
冷徹、残酷、残忍の3拍子に相応しい答えに剣の怒りのボルテージが上がった。
「てめぇらホントえぇ加減にせぇよ――!俺達の居場所を消すに飽き足らず、大事なものまであやつけやがって……!!!!!」
「――だったら、同じ土俵でケリ着けてみるか?お前らの好きなゲームで、我がブラックヘロンを潰してみろよ!!!!」
怒り心頭の剣がついにブチキレた。
「上等だッ!!かかって来やがれッッ!!!!!」
悲劇覚めやまぬゲームの聖地の激闘、前半戦はゲームワールドの夜更けと共に終わった……
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