第61話~ゲームワールドに復讐を!!~

 ゲームワールドに突如出現し、傍若無人に秩序を荒らすテロリスト集団、『ブラックヘロン』。


 彼らはG-1グランプリ関西予選に狙いを定め、本格的なテロ計画を企てプレイヤーを潰そうと考えていた。


 だが、4度に渡り計画が潰されその刺客達も無名のプレイヤー達によって阻まれ、破れていった。



 そう、『シャッフル・オールスターズ』の手によって――!!


 ◇◇◇


 ≪カンニングインテリ野郎のパソコン、USBは頂いた!Ha-ha!!≫


 剣が工作班の服に書いた矢沢◯吉ばりの挑発メッセージをブラックヘロンのボスが読んでいた。


「ゴールドラッシュ・カジノで複数の同胞がしばかれ、チャンバラで頭やられて、テトリスで電流で黒焦げ……挙げ句の果てにはこれか――!?」


 冷徹な面に血走った眼が怒りを大いに表していた。


「それだけじゃないです。工作班との通信部屋も見破られています。これはプレイヤー1人で成せる事じゃ無いですよ――?」

 同胞の側近が内心不安そうに報告した。


「素人にしては手際が良すぎる。アンチ団体か何かがWGCに雇われたとかでもない……」


 ボスは深く心理するが、肝心な証拠は未だに知る由が無かった。


 というのも先程の遠方ハッキングや、工作班撃退の手掛かりになる監視カメラ等にも奇跡的に剣達の顔が写っていなかった。


 即ち反乱を起こしているのが剣達であることをボスにはまだ知られていなかったのだ。これは奇跡としか言いようがない。


「ボス、私の勘なんですが……これらの行動はあのカジノの騒ぎと同一してるんじゃないかと――?」


「……直ぐにその時の情報と同胞から話を聞かせろ。分かり次第一向に始末しても構わん。直ちにだ!!!」

「は、はい!!」


 早速側近は行動を始め、個室を後にした。しかもその個室はゲームワールド全体を管理経営しているWGCの総本部室。


 以前槍一郎が予想していたように、時既にブラックヘロンによって占領されていたのだ。



「ガキ共が束になったところで無駄だというものを、G-1グランプリは最早我々が支配したことも知らずに――!!

 ――そうでしょう、?」


 ボスが下衆に笑いを浮かべる中、占領されている総本部に拘束されたWGCの男が。


 WGC代表取締役社長、外崎博行そとざきひろゆきだ。


「――その割にはプレイヤーに翻弄されて焦ってるようににも見えるぞ」


 ゲームワールドを管理し、上に立つ者は何事にも屈しないのか。

 外崎社長は狼狽える事なく冷静でボスに突っかかった。


「何が言いたい……?」


「ゲームを挑むプレイヤー達は皆バカではない。ゲームに立ち向かう闘志と共に脅威を抗う力を皆持っている。

 いずれそのプレイヤー達にお前らが潰されるのが目に見えるぞ!!」


 この発言に逆鱗を触れたか、ボスは拘束された外崎社長の壁を思い切り蹴りあげた。


「だったら逆らう前に滅ぼすまでだ……プレイヤーも、貴様もな――!!!!」


 静かな声で外崎社長を脅しにかけた。それでも社長は屈する訳ではない。



(どんな窮地に立たされようとも私は信じているぞ、どんな強敵にも負けない魂を持ったプレイヤーが必ず現れることを。

 君達の未来の為に、ゲームワールドを守ってくれ――!!!)


 ◇◇◇


 いよいよ、5th《フィフス》STAGE《ステージ》が始まろうとする所。


 シャッフルオールスターズも着実にポイントが稼いでるなか、一人だけ不安な顔をしている者がいた。河井みのりだ。


「どうしたんみのり?浮かない顔して」


「剣君……あ、あのね、今皆結構ポイント取れてるでしょ?

 私の見てみたら少ししかポイント取れてなくて……もしかしたらここで敗退しちゃうのかな、って思ったの」


 気丈なみのりが珍しく弱気になるのも無理はない。


 予選ルールでは5thSTAGE終了時点でポイントの高い順から半分以下は強制リタイアとなる。


 現在みのりの獲得ポイントは109ポイント、順位から見ても少し危ない所だ。


「このままじゃ、皆で予選突破する夢が……」


 チームでの目標を達せられない連帯感がみのりの見えないプレッシャーになっているようだ。


「んな事ぁ気にするもんじゃないよ!!余計な心配してたら大好きなゲームも嫌になっちゃうぞ!!別に勝つことが絶対じゃないんだから」


「………そう?」


「そうだよ!勝ち負けなんて俺みたいなガチ勢だけやらせればいいの!

 ゲームを楽しんで、飯食って、寝る!それの何がおかしいんだよ?」


 剣、言ってることが後半滅茶苦茶だが言いたいことは分かるぞ。多分。


「……みのりちゃん、もしかして予選取り残されるのが嫌なの?」

 レミが心情を察するようにみのりに話しかけた。


 これにはみのりも「……うん」と小さく頷いた。


「せやな、みのりちゃんも特訓を一生懸命やってたしな。気持ちも分かるで」


「でもな、こればかりは自分との戦いだから、俺らにどーすることも……」


 剣も親友であるみのりを何とかしてあげたいと思い悩んだ。


「――ちょっと待ってて」


 そこで槍一郎が直ぐ様プレイギアを出し、何かを調べていた。


「……みのり、もしかしたら次のゲームで頑張れば生き残れるかもしれないぞ!」


「えっ!本当!?」


「とは言ってもかなりギリギリの順位だけど。次のゲームでNo.1か高得点出せば後半戦も出場出来る!チャンスはまだあるぞ!!」


 みのりの順位は半分のちょっと下の順位にていた。ここで成果を出せば翌日の後半戦通過も可能だ。


「ただ後半戦からの予選通過はもっと厳しくなるが……」

「大丈夫!そしたら精一杯やって出しきって終わるわ。とりあえず今は前半戦越えたい!!」


 みのりも自分の力量の限界は自覚はしている。だからこそ今の目標を越えたい気持ちは尚更強くなるのである。


 そんなみのりの最後まで諦めない意志が、剣の心に響いた。


「――そうだな!一番大事なのは一生懸命やる事だ。結果はどうなっても誰も文句は言わないよ。とりあえず精一杯やってこいみのり!!」


「……うん!!!」


 ◇◇◇


 ――いよいよ前半戦ラストゲーム!!


 会場フィールドがモードチェンジされる。

 壮大な広野から一転、今度は無機質な工場現場のような鉄鋼フィールドに姿を変えた。


 床には100マスのパネル、壁には時計のようなルーレット。

 そしてパネル各所に描かれているアイコンは……だ――!!


 さぁ新垣治郎実況、ゲームコールお願いします!!


『――ボランティア、バイトでは絶対やりたくない極限の地雷掃除!!地雷付近の数字を頼りに地雷地獄から生き残れ!!

 5th《フィフス》STAGE《ステージ》・【マインスイープ・アライブ》】!!!!』


 ★★★


 PLAY GAME No.15

 ★G-1グランプリ予選 5th《フィフス》 STAGE《ステージ》★

【MINE SWEEP ALIVE ―マイン・スイープ・アライブ―】

 ・ジャンル『コンセントレーションゲーム』

 ・プレイヤーレベル:35


 ルール

 各ブロック100人のトーナメント制で行う、『マインスイーパ』の対戦型派生ゲームである。


『マインスイーパ』とは地雷が隠れているマスを開かずに、できるだけ短い時間で地雷の無いマス全てを開くゲームである。


 しかし今回のゲームはタイムアタック制でなく、2人で行い地雷マスに触れず生き残った者が勝ちのサドンデス式となる。


 また追加要素として『スイープルーレット』が設置されている。


 各自のターン毎にルーレットが回り、書かれている数字≪0~10≫に当たったら、そのプレイヤーはその数だけマスを潰さなければならない。

 しかしルーレット内の『チャンスゾーン』に入ると自分側が有利になる効果が発生する。


 プレイヤーのいずれかが地雷に踏んだ時点でゲームセット。生き残った者が勝者となる。


 ただし地雷マスを残し100マス全て潰した場合、延長戦としてリセットした状態でゲーム続行となる。


 獲得ポイントは各ブロックにて

 ・第2回戦~4回戦進出ごとに 10ポイント

 ・準々決勝進出 30ポイント

 ・準決勝進出 40ポイント

  ・準優勝 50ポイント

 ・No.1プレイヤー 100ポイント

 ずつ加算されていく。


 ※各試合で取ったパネル1枚で1ポイント加算される為、逆転も可能。


 ★★★


「マインスイーパか……微妙な所突いてきたな」


「みのりちゃん的にはどうかな?」とレミ。


「……ん!行けるかも!!」

 みのりにはみのりなりの自信があった。


 何しろ特訓の際も神経衰弱やバランスゲームがメンバーの中でもトップクラスであったこと、槍一郎がデータに出したようにが高いことから確信があったようだ。


 因みにプレイヤーステータスはこうなっている。


 ☆河合みのり/プレイヤーレベル:9

 [プレイヤーステータス]

 ・アクション:131・シューティング:122

 ・ロールプレイ:136・タクティクス:129

 ・スピード:127・ブレイン:138

 ・ハート:194・ミュージック:130

 ・ラック:120

 [プレイヤースキル]

 ・なし


 まだレベルが低いが、『ハート』の数値がご覧の通り平均以上のバロメーターを持っている。ただまだプレイヤースキルは獲得していないが、みのりは自らの力を着々と身に付けていた。


「それと私、マインスイーパを昔パソコンでよくやってたの!」


 あ、そうなんだ!じゃ尚更だ。



「……まぁ自信があるのは良いんだけどさ、過信だけはするなよ。自分のペースで精一杯やること!良いな?」

 剣はリーダーらしく指示をした。


「分かってるって!」

 みのりもやっといつもの明るさが戻った。


「リーダーらしくするのも良いけど、最初はお前の番だぞ。剣」


 槍一郎がΦブロックのトーナメントを指差して注意した。


「あ、やっべ!じゃ先に行ってるわ!!」

 剣は一目散に控え室を後にした。


「行ってらっしゃ~い♪私も頑張るね!!」


 まるで新婚の送り出しのように、みのりが剣を送り出す裏で――



「――準備は出来たか?」


『手筈通りに……!』


「よし、ならばこっちも次の段階に移る。


 ―――【D《ディー》-Z《ゼット》計画】、実行の準備だ……!!!」

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