第60話~大人としての責任~

 ――バリィィィィィィン!!!!


 不屈を誇った鴨川のメタルウォールがガラスが割れるが如く砕け散った!!


 ◇◇◇


「あれ?何かあの人のキャラ、ピヨピヨしてるよ!」


 控え室で観覧しているみのりは可愛く表現してるが、正確に言えばしている。


 ガードを破られたときに発するエフェクト、【ガードブレイク】の影響だ。


 ――ほら、みのり。プレイギアのG-バイブル開いて!


「え!?あ、はいはい」


 ★【ガードブレイク】★

 ガードしているキャラに攻撃をし続けると、防御の体勢に限界が生じそのガードの壁を砕かれる。

 その反動でガードを破られたプレイヤーは一定時間、攻撃及び行動が不可能となる。

 ―G-バイブル『かかってこいや格ゲー上等』より抜粋―


 ◇◇◇


「だからどうなんだ!ガードを破ったくらいで勝てると思うな!!!」


 必死でピヨってる鴨川は必死で建て直そうとするが――追撃は止まらない!!



「この勝負、ワイの勝ちや。――プレイヤースキルも要らん、ピヨってる間の2秒で充分や!!!」


 次の瞬間!抜けば飛び散る連続コマンド!!


 パンチボタン連打コマンド『流星群パンチ』に↑からレバーを1回転させてからキックボタンの『大車輪ストームキック』、そしてラストコマンド――!!!


「止めのラストコマンド、『パワーブラスター』ッッ!!!!」



 連続攻撃のコンボが決まる時はガードが出来ない。それを突いてのノックアウトだ。



「豪樹さ~ん!!カッコいい~!!!」

 控え室から剣達の声援も飛んできた。



「――――おおっと!まだゲーム終わってなかったんやった!!」


 豪樹と鴨川の激戦で疎かになっていたが、まだ100人全員倒してる訳ではない。気を抜かず豪樹はプレイを続ける。


 だが――――!!



「……何が道が開けるだ、何が精神一到だ!!口だけ達者に言えば偉そうにしやがって人の気持ちも知ったふりしやがって……!!」


 恨みが募った鴨川の片手にリモコンのようなものが握られている。そしてそれを作動させた。



 残り5人となった状態で奮闘する豪樹、何も知らない彼にあの鉄の高速ラジコンが襲いかかる!!!


「大人なんて、大嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



 豪樹の頭上に降り注ぐ無数の高速ラジコン。


 それを豪樹はモニターを見つめた状態で手でラジコンを掴み取った!!



 丁度残りの一人を倒した豪樹がフィニッシュ!!そして――――!!!




「バカヤロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーッッ!!!!!!!」



 ――バキィィィィィィッッ!!!!!



 隣接した席の鴨川の顔面目掛け、渾身の鉄拳が衝突した!!



 これで……本当のフィニッシュだ。



『――100の鉄拳の頂点に降り立った一人の男、髙橋豪樹が㈱ブロックNo.1を勝ち取りました!!!

 その熱がリアルに伝わったのか、血まみれの額に一部リアルファイトも交えての極限乱闘。これにて終止致しました!!』



 普通、マジの喧嘩を試合でやるなら引くか狂乱しそうなのだが、それをキレイに纏めるのも新垣治郎実況の成せる技か。



 勝利した豪樹は殴り倒れた鴨川の元に寄った。


「ワイら良い大人がもっとちゃんとしてりゃ、こんなにひねくれた事も無かったろうに……

 ――こいつの為になるか分からんが、責任はしっかり取ってやらんとな。として!!」



 ◇◇◇


 ――しばらくして。


 ㈱ブロックの試合が終わっても豪樹が控え室に帰ってこないため、メンバーが心配して探しに来ていた。


「――ったく何処行ったんだ?豪樹さんってば」


 剣達が管理室付近で探しているとき、みのりがある場所を見つけ、びっくりしながら呼び掛けた。


「ちょ……ちょちょちょ皆!!!あれ見て!!?」


 そこに目にしたのは、個室にパソコンにかじりついてそうなインテリが数十人、バタバタと倒れ込んでいる状態で埋め尽くされていた。



「え、何これ……殺人現場??」


 ゲーム小説を急にサスペンスドラマにさせる気か剣。



「――おぉ皆!丁度えぇ所に来た!!」

 そこに立っていたのは豪樹だった。


「ま、まさか豪樹さんが殺ったんじゃ……!?」と怯えながらのレミ。


「アホ!ワイが殺すわけ無いやろ!!

 ブラックヘロンの工作班をしとったんや」



 ……いや、半殺しでもアカンよ!?


「工作班って、もしかして!」と槍一郎。


「そうや、さっき3rdでハッキング野郎を追っかけてた時、妙な電子音がここの個室で聞こえてな。

 ビンゴやったわ!こいつらが束になってプレイヤーに反則仕掛けてたって訳や」


「でもここまでやることは無いでしょう?」


 みのりも倒れた工作班に同情しながら意見した。


「……いや、これはワイら大人の責任でもある。理不尽な環境に怒りを感じてた若いプレイヤーに気づけなかった大人のツケがブラックヘロンを生んだとワイは思う。

 だからこそワイは徹底的に奴らを潰す!剣達みたいな未来のプレイヤーに道を作るのがワイら大人の宿命なんや!!」


 これを聞いた剣達は真摯に受け取る。


 混沌とした時代にも、迷いの無い信念を持った大人と出会えた事に剣は心から感謝した。


「へへ!豪樹さん、あんたみたいな良い大人も中々居ないぜ。

 ――これからも俺達は豪樹さんの教え子として恥じない心を持ってもっと強くなります!!

 だから……これからもご指導、宜しくお願いします!!!!」


 剣は深々と豪樹に最敬礼としての御辞儀をした。


「……おう!!バリバリしごいたるでぇ!!!――これからも気張りぃや!!!!」



 剣達は希望に胸を膨らませながら、一足先に控え室へ戻っていく。

 まだ彼らに4thSTAGEの試合が……いや、成長していくためのが待っているのだから。


 そして豪樹も、次なる闘いに向けて一歩前へと突き進んでいく!!


「ワイも剣達もまだ道の途中や。剣達が『マスターオブプレイヤー』になるのを見届けるまで……ここで立ち止まるわけにはいかへんで――!!!」



★4th RESULTS★

 ☆シャッフルオールスターズ(各ブロックでの順位にて)

 ・桐山剣 結果 5位 50ポイント→計322ポイント

 ・天野槍一郎 結果 8位 30ポイント→計359ポイント

 ・畠田レミ 結果 3rd負傷の為4thのみ一時棄権→432ポイント

 ・高橋豪樹 結果 No.1 100ポイント→計305ポイント

 ・河合みのり 結果 38位→計109ポイント

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