第59話~精神一到何事か成らざらん~
激戦スタンバイ中、今回は豪樹のいる
(てか何で㈱ブロックなんて名前つけたんやろうな……?)
豪樹よ、作者の悪ふざけに突っ込んでたらキリが無いぞ。
「――オイ、おっさん!」
「お、おっさんって――何や!?」
豪樹は『おっさん』に過剰反応しながら振り向いた。仮にも25歳なのに。
そこに立っていたのは豪樹とは対称的に貧弱な体をした高校生だった。
「いい大人がゲームごときで何を真剣にやってんだか……気に入らないね」
高校生が豪樹にインテリっぽく喧嘩を振ってきた。
「なんやと?青臭いガキが大人に喧嘩売るたぁ、えぇ度胸しとるやないか」
『同じようにお前もゲームしとるやないか!』……と言いたくなったが、レベルが低くなるため思い止まって言わなかった豪樹。
「僕は大人なんて大嫌いなんだよ!歳上なだけなのにルールだマナーだ社会の先頭に立った気取りで威張りやがって!!真っ先に倒してやるからな!!!」
「…………」
何らかの理由があって人間不信……いや、プレイヤー不信真っ只中の高校生、
親や大人達が十分に愛情を注げなくなった故の哀れみなのか……?
◇◇◇
『さぁ只今、株価上昇と見まごうような盛り上がりを見せております、4thSTAGE。
いよいよ円高のペースまで来るのか!?㈱ブロックの100人が出陣致します!!!』
会場の外側のゲームパッドルームに100人が立ち並んだ。
そしてバーチャルの荒野に100体のゲームキャラが、参加者それぞれが独自にデフォルメした状態で多種多様に勢揃いした。
ではゲーム開始前に、今度は豪樹のプレイヤーステータスを確認しよう!!
☆高橋豪樹/プレイヤーレベル:46
[プレイヤーステータス]
・アクション:489・シューティング:350
・ロールプレイ:362・タクティクス:461
・スピード:399・ブレイン:328
・ハート:471・ミュージック:333
・ラック:317
[プレイヤースキル(必殺技)]
・【プラスパワー200】・【精神統一】
・【ワイドリーチ】・【クリティカルアタッカー】
シャッフル・オールスターズの中でも年配ということもあって、レベルがメンバーの中でトップ。『アクション』『タクティクス』『ハート』が400越えというステータスだ。
更にプレイヤースキルは、格ゲーでの攻撃力増加や急所確率を上げるサポート等数多く習得している。
(このゲームで必ずワイが狙われる。その時何人がボロを出すか、見せて貰うで!)
左手にレバースティック、右手にボタンを触れる豪樹。準備は整ったか!?
『READY?―――GO!!!!』
『さぁ㈱ブロックスタート!!100人のプレイヤーが一瞬で1つの塊と化した!!!
いきなり鉄拳で挨拶する者、それを倍返しで肘鉄を食らわす者。どちらも血気盛んなファイターの礼儀作法が飛び散っている!!』
色々と突っ込みたくなる新垣治郎の実況が飛び交うが、ここで基本のコマンドを紹介しよう!
↓にレバーを落とし、飛びかかるように↑で弾いてキックボタン!天空直撃スピアーキック!!!
そして、←から流れるように1回転にレバーを回して、パンチ1発!スカイアッパー炸裂!!
さらには←でレバーを貯めて→で一気に弾いて同時にパンチボタン!!飛び道具、パワーブラスター!!
ボタン連打にもコンボにも技の数だけ
『無法の戦禍を不敵に笑う男、大阪にオープンしましたあの巨大アミューズメントパーク・ギャラクシー、その中のゲームジムを経営しております髙橋豪樹(25)。
バッタバッタと敵をノックアウト!まさに格ゲー強者の貫禄が滲み出ている!!』
(若いもんもやるやないか!正々堂々と力の限り闘ってるのを見ると、敵ながら感心するもんや!!――――さてと……!)
豪樹は攻防を繰り広げるなか、新しいターゲットへ狙いを定めた。
喧嘩を吹っ掛けてきた鴨川だ。
「オイ、さっきの青ビョウタン!!ずーっと突っ立ってんならこっちから行くで!!!」
豪樹側から鴨川のキャラ目掛けて攻撃を仕掛ける!
しかし、それが罠ということを控え室での槍一郎が気付いた。
「――豪樹さんダメだ!早まるな!!」
しかし控え室で槍一郎の声が届くわけがない。
鴨川が受けたダメージがそのまま豪樹に反転して受け返された!
「ってぇ~!!迂闊(うかつ)や、カウンター仕掛けやがったな!!」
豪樹の操作するキャラが見事に仰け反っている。
鴨川が繰り出したカウンター技、『リフレクターバウンド』はパンチとキックボタンを攻撃を受けるタイミングで同時押しすることで発動するダメージ反射型カウンターだ。
「これだから大人は考え方が古いんだ。動き回っても疲れるだけだ!!」
直ぐ様、鴨川が反撃をかける。豪樹は即座にガードで身を固めるが、時折掛けられる投げ技に警戒しながら中々豪樹から攻撃が出来ない。
「やってくれるな、こんちくしょう!!」
バシッ!!
やっと鴨川のキャラに強キックのダメージを入れた豪樹!
――――の筈だったが……!?
「な、ダメージが……減らない――!??」
鴨川がガードの体勢を取った訳ではない、ましてやガードのコマンド正面後ろにレバー落とした訳でもない。
「おかしい、調子がどうも狂うな。リーチが甘かったんか?」
確かめるように豪樹は追撃をかける。しかしまだダメージが減らない!
当の鴨川のキャラはガードもせず、仁王立ちで平然としている。
「いい加減鬱陶しいな、おっさんは!!!」
鴨川、痺れを切らして一撃強パンチを繰り出した。1発でまさかの体力ゲージの1/3も削れてしまった!!
「な、何!!??」
対戦プレイヤーの強さが平等であるこの試合にこのダメージ、もうここまで来たらお察しの通りの展開だ。
「おっさんだけに良いことを教えてやるよ。僕のキャラには絶対に勝てない!
――この『B.H Bat《ビーエイチバッチ》』から作り出した改造コード、『メタルウォール(鋼の壁)』にはな!!!」
(『B.H Bat』!!!やっぱこのガキもブラックヘロンだったか!!)
豪樹の読みは当たった。『B.H Bat』の矛先が豪樹に真っ先に向けられていた。
「同胞の工作班があんたみたいなおっさんに狙われているって通報が3rdの時にあってさ。
ゴツい巨体が目印って言うから近づいたが、どーりでデケェ訳だ、木偶の坊みたいでさ!!」
豪樹の存在がブラックヘロンに筒抜かれていた!だが幸いにも他のメンバーはまだ気づかれてなかった。
「へぇ、流石にあんな大騒ぎしてりゃバレるか!だが、調子に乗るのも大概にせぇよ青二才がよ!!!」
豪樹が青筋に似た血管を浮かせて更に追撃を加える。しかしそれでもダメージが加えられない。
「しつこいっつってんだろ!!!!」
次の瞬間、豪樹の周りに何か得体の知れないラジコンのような物体が飛び交い、豪樹の顔面目掛けて突っ込んだ。
――ゴスッ!!!
「ぐッ――!!?」
その痛みは鉄のような固いもので殴られた感覚だった。それが最高速で姿も見えない状態でぶつかってきたものだからとてつもない。
「な、何やあれは!?」
殴られた豪樹の額に血が滲み出てる中も突進してくるラジコンを避けながらゲームを進める。
「さぁ、何の事やら?ほらよそ見してっとやられるぞ!?」
鴨川も白々しくシラを切る。しかし主宰のWGCが思うように動けない以上はブラックヘロンの成すがまま。
この暴挙、ただプレイヤーは見てる事しか出来ないのか――!?
………いや、そんな事はなかった!!
「――――お前さんよ……過去に虐められた経験とかあんのか?」
いきなり豪樹は静かな口調で鴨川に話した。
「はぁ!?それがどうしたってんだよ!!」
鴨川も否定しない限りでは図星を指されたようだった。
「自分の非を認めない、自分で何とかしようとしない、直ぐに他人のせいにして現実から逃げる。
陰気な輩には大概そーゆー奴が多いんだが……お前のは定型的に当てはまってらぁ!」
隙あらばさらに図星を追撃してくる豪樹。
「なんだなんだ、今度は説教か!!?これから負けを宣告されるあんたに説得力があると思ってんのか!!!」
豪樹の煽りに見事に食って掛かる鴨川の攻撃に豪樹は軽くかわしていく。
「まぁまぁ、そう言わずに!そんな青兄ちゃんに2つ良いことを教えてやるよ!!」
「何――!?」
「まず1つ!ある
――要は心の鍛え一つで道は切り開く!!
お前みたいに妬み恨みで自分から動かない奴に、道は切り開かへんで!!!!」
この諺の教えはシャッフルオールスターズの全員に諭したものだった。
故に剣もみのりも皆心を極め、今があるのだ。
「それと2つ目!!」
話始めたと同時に豪樹はキックボタン連打のコマンド『ガトリングレッガー』連続キックが炸裂する!
「なっ――!!?」
普通のコマンドならオートガードの鴨川も対処できるだろう。しかし狼狽えた理由はこれでは無かった!!
ガトリングレッガーをこれでもかと連打をし続ける!すると鴨川のガードエフェクトに限界が見えてきた!!
「『壁』ってのはな……壊す為にあるんや!!!!」
止めの1発コマンド!
←↓↑にレバーを素早く動かし、強パンチ!
「必殺コマンド、『デストロイヤー・ナックル』!!!!!」
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