第49話~最先端チャンバラ!!~

 ゲームワールド『デュエルフィールド』にてG-1グランプリ予選の幕が開いた。


 予選の開催セレモニーを終えて、暗くなっていた会場全体を眩く光り出した先に待っていたのは、予選最初のゲームの姿だった――!!


「これは……??」

 剣はその会場の姿に目を疑った。


 まるで剣道の道場のようなフィールドが出現したと同時に、司会の大音量のアナウンスが会場内に木霊した。


 『……一振りの竹刀は己の魂だ!!瞬発力と底知れぬ闘志を胸にいざ、尋常にチャンバラ勝負!!

 1stファースト STAGEステージ【チャンバラ・ファイター】!!!!』


 ★★★


 PLAY GAME No.11

 ★G-1グランプリ予選 1stファースト STAGE《ステージ》★

【CHANBARA FIGHTER―チャンバラ・ファイター―】

 ・ジャンル『ファイティングゲーム』

 ・プレイヤーレベル:21


 ルール

 一対一の対戦格闘ゲーム。互いのプレイヤーは特殊な電灯竹刀を持ってチャンバラと剣道の要領で勝負する。


 プレイヤーは対戦用のプロテクターを着用し、そのプロテクターに仕込まれている頭、両腕、両脇腹の5つのセンサーボタンを電灯竹刀で叩きあう。

 試合開始直後に10秒ずつランダムにボタンが光るため、プレイヤーはその光るボタンを狙って闘い、それに当たると一本先制となる。

(女性相手の場合は一本毎に2回当てて一本とみなす)


 最大三本目まで試合を行い、先に二本討ち取った方が勝者となる。


 またセンサーボタン以外や急所などを故意に当てる行為が続く場合審判の判断で警告、もしくは反則とみなし失格となる。

(フィールド内からはみ出た場合も相手側の一本となる)


 各ブロックでNo.1(1位)を取ると100ポイント獲得。

 2位90ポイント~10位10ポイントと順位ごとに10ポイント下がる。

 11~50位までは全て5ポイント。

 51位以下は0ポイント。


 ★★★


「――最初からチャンバラってのもなぁ」


 剣は内心凄いゲームが来るんじゃないかと期待しすぎてちょっとがっくりした様子だった。


「仕方無いわよ。予選なんだし」

 落ち込む剣にみのりがフォローする。


「チャンバラだからと言って舐めてかかるな。これでもステータスの『アクション』のゲームだからな」


 槍一郎はそう言いながら各ブロックの参加プレイヤー表を確認した。


「どうや?槍一郎。ブロックはどんな感じになったん?」


「……うん、大丈夫!皆何処のブロックにも被ってない、思う存分戦えるぞ」


「良かったぁ~!ひやひやしたわ!!」

 レミは心底ホッとした様子だった。


 各ブロックは人数調整した後は予選終了まで変わることが無いため、オールスターズは仲間と誰も被ることなく戦える事になる。


 そして控え室の巨大なモニターにも各ブロックのトーナメント表が提示された。

 そこにはAブロックやらBブロックと数多くの記号で仕分けられている。


 しかし、各地区5万人以上のプレイヤーがいるのでアルファベットでは収まらないようだった。


「ねぇ剣君、『Ω』ブロックってなんて読むの?」


「……あぁ『Ωオメガ』だな。良いじゃんかっこ良くて。俺のはどれかな」


 今度は剣が自分のブロックを確認した。

 桐山剣と書かれているブロックは『Φ』と書かれていた。


「剣、何をじーっと見てる?」

「いや『Φこれ』の読み方が……」


「…あぁ、これはΦ(ファイ)って読むんだよ」


「分かりづらッッ!!!何だよこのブロック表、記号つければ良いってもんじゃないぞ!!」


「お前はまだ良いよ。豪樹さんなんか『かぶしき』ってブロックに当たったそうだし」


「予選ブロックを何だと思ってるんだ……」

 

 ◇◇◇



『――予選参加プレイヤーの皆様にお知らせします。

 これより1stSTAGEのゲームが開始されます!各ブロックのプレイヤーは指定されたブロックのルームに至急集合してください』


 室内アナウンスが控え室から響き渡った。


「よし!じゃ俺達も行こうかな!!」


 剣達はそれぞれのルームに向かおうとするなか、槍一郎は横から剣に話す。


「何回も言うけど、ゲームをしていて何か違和感とかおかしいと思ったらすぐ皆に報告しろ。

 試合中でも管理者からの違反報告は出来るから!ブラックヘロン討伐、忘れるなよ!!」


「分かった、槍ちゃんも皆も気を付けてな!!」


 そしてオールスターズ5人、それぞれのブロックのルームに入った。


 いよいよ、予選最初のゲーム『チャンバラ・ファイター』が始まった―――!!!


 ◇◇◇


 まずはAブロックの様子から見てみよう。


『―――ゲーム超次元世界を生きるゲームの戦士達の祭典、名付けて『G-1グランプリ』!!

 今年も予選で全国から50万人の戦士が集まりました!!

 まず最初のAブロック、先陣を切る二人のプレイヤーから白熱の予選が幕を開けます!!

 ――さぁ!最初の挑戦を見せてもらいましょう!!』


 東側が赤、レッドゾーンと西側が青のブルーゾーンに二人のプレイヤーが向かい合った。そして電灯竹刀も持っている。


「プレイヤー一同、礼!!」


 WGCの実況アナウンサーの前書きが終わり、フィールド中央の審判が号令をかけプレイヤーは礼をする。

 剣道と見まごうような緊張した空気が張りつめた。



「――――始め!!!」


  さぁ始まった!!


 静寂の中からいきなり火花散る!!ボタンが光っているのは頭、片や右腕だ!

 しかし自分には見えていないためガードは直感で掴まなければならない!!


 ――パァン!!!


 決まった!ブルーゾーンヒット!!右腕のボタンにダイレクトに当てていった。

 レッドゾーンプレイヤー一点先取!!



 Aブロックの試合スタートから一気に多数のブロックの試合が始まった。中には一回戦から接戦を繰り広げる所もあれば、一気に片付いた試合も見られた。


 そしてゲームが進みいよいよ――!!


『只今よりΦファイブロック一回戦、第15試合を始めます!参加プレイヤーはフィールドに集合してください!!』


 控え室の音声アナウンスに剣は反応した。


「よし……行くかッ!!!」



 ではここで、特訓をして培った剣の『プレイヤーステータス』を改めて紹介しよう!!



 ☆桐山剣/プレイヤーレベル:21

 [プレイヤーステータス]

 ・アクション:214・シューティング:189

 ・ロールプレイ:200・タクティクス:219

 ・スピード:197・ブレイン:188

 ・ハート:194・ミュージック:170

 ・ラック:225

 [プレイヤースキル]

 ・【エース・スラッシュ】・【精神統一】

 ・【エース・スティンガー】


 バロメーターの数値がどちらも安定している中でアクション、タクティクス、ラックが長けてるバランスを保ったステータスだ。


 そして[プレイヤースキル]、これはや特殊能力の習得を表していて、以前ゲームで繰り出した必殺技はレベルアップやクリア報酬で得たものなのだ。



 じゃ、話戻しましょ。


 ◇◇◇


 剣はフィールドに向かうと、係の人から試合用プロテクターと電灯竹刀を渡された。


 着用すると意外と軽く、電灯竹刀も持ちやすかった。

 言うなればライブのペンライトを大きくしたような感じで、剣先も柔らかく良くしなった。


「成る程、これなら十分戦えそうだ」


 剣はそう思うと準備を整え、係の合図と共にフィールドへ駆け上がった。

 控え室から一変してステージ全体に光が剣に指していった。


『――さぁ続いて15試合目、レッドゾーンからは初出場、桐山剣16歳!出身は浪花の大阪!』


 フィールド外のルームにある観客席から声援と拍手が鳴り響いた。

 この歓声に緊張も解れたのか、それを答えるように剣も一礼する。


「そして相対しますブルーゾーンも同じく大阪出身、椿 黒男つばき くろお15歳!!』


 実はこの男、あのブラックヘロンの一員である事を剣は知らない。

 そして椿は剣の事をマークしている。何をしでかす事やら。


「プレイヤー一同、礼!!」


 剣と椿は一礼する。その時剣は椿の表情に見せた微かな殺気の目線に気づいた。


 二人は待機位置に着き、竹刀を構えた。


「始め!!!!」


 スタートと同時に二人のボタンは頭の位置に光る!


「ケッ、このキザ野郎が。一気に片づ」



 ―――パァァァァァァン!!!!



「……けられた―――!??」


 スタートから0.7秒、一瞬の刹那、剣の迅速な攻撃に一本決まった。


『おおっと!?桐山選手、私が実況する間もなく一本を決めたァァ!!

 凄い!!!なんという速業でしょうか!!?』


 この一本に実況者はおろか、控え室で観覧していたプレイヤー達は皆どよめき、歓喜した。


「よし!その調子だ剣!!」

 そして同じく様子を見ていた槍一郎も満足そうな様子だった。



「―――二本目、始め!!!」


「ちくしょうッ!!!」


 追い詰められた椿は躍起になって剣を追い詰めようとする。

 しかし先ほどの速業に動揺が収まらず、椿の攻めに乱れが生じているのを剣は既に見切っていた。


「脇腹が空いてるぜ、隙ありッッ!!」


 ―――スパァァァァン!!!!


 剣は素早く椿の右の脇腹の光るボタン目掛け討ち取った!!


 審判の一本先取の旗が上がった!!


『お見事、決まりました!!第一回戦15試合目勝者は桐山剣!!!』


「ぃよしッッ!!!!」

 実況のフィニッシュコールに剣は右腕を力強くガッツポーズをした。


 一方の椿は成すすべなくそのままトボトボと去っていった。


 控え室ではその後勝ち抜いた剣の一戦を観たプレイヤーが、凄い凄いぞと話題が持ちきりであった。

 期待の目で見る者と嫉妬で見る者もそれぞれである。そして、オールスターズも。


「やったな剣、僕らも負けちゃいられないな!!」


 他のブロックに配属されているシャッフル・オールスターズも剣に続かんとばかりに力の限り竹刀を振るった。


 尺の都合からその一望を御見せするのは出来ないのが大変申し訳ないが、オールスターズの一員は槍一郎、豪樹がそれぞれのブロックでNo.1を勝ち取った!


 残すはΦブロック決勝戦、桐山剣ともう片方。何やら危うい予感がするようだ……


 ◇◇◇


「槍ちゃん、剣君の相手は誰なの?」

 控え室にて試合を終えたレミが槍一郎に質問する。


妻夫木 鳶雄つまぶき とびお……不味いな、こいつの話は良い印象がない」


「どういう事なの?」と試合を終えたみのり。


「あの華奢きゃしゃな体から予想もつかない力を持ってると聞く。

 それだけならまだ良いが、そいつと対戦したプレイヤーからを使ってた証言が数多くあるんだ」


「……それじゃまさか――!?」


「――その証言が潔白かブラックヘロンクロかは、剣の腕に掛かっとるわけや……」


 豪樹の言うとおり、今の時点でブラックヘロンのプレイヤーを止めるのは剣しかいない。


 己のチャンバラ刀一本で、果たして蔓延る悪を叩き斬れるか――桐山剣!!

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