第34話~諦めない者への報酬~
―――更に進んで15分後。
落ちるテトリミノも流星の如く速くなってきたがスコアは着実に上がり、100万スコアまであと2万点ほど!!
しかし戦略である『ハーフピラミッド戦法』も限界ギリギリまで来ていた。
「ハァ……ハァ……ッ!」
レミの集中力も尽きかけ、体力もそろそろゼロに近い。
だが、フィールドではテトリス待機の縦四段直列空白が、8段目まで出来ている!
これで2回テトリスが出来るが、天井ギリギリで3角形が積み重なる。
(……レミはここでケリを着ける気だ――!
連続でテトリスを撃てば倍加するようにスコアも獲得出来る!!
――だがそれまで、積み重なったブロックを抑えられるか!?)
剣の言うとおり、後はテトリスの鍵、I型テトリミノが来るのみ!!
直線ストレートなブロックが来ない、焦れったい処理が続くなか………
………来た!I型テトリミノ!!!
「――あッ!!!」
この瞬間0,4秒で気を緩ませた一瞬の刹那、レミの手元が滑る!!
頂上中央にテトリミノが突き刺さる寸前、レミは粘った!!!!
――――『私は……最後まで諦めないで欲しい事かな』
レミの脳裏に、みのりのアドバイスが頭によぎった―――!
(………まだよ、あたしと二人の為に100万点取るって決めたんだから!
――最後まで……諦めないッッ!!!!!)
レミは必死に固定時間まで回転ボタンを連打し、右にI型テトリミノを寄せた。
そして、辛うじて入った!!!
その時、剣は次に降るテトリミノの枠に気づいた。
(―――!?I型テトリミノが2つ連続だと……まさか!!!!)
1発目のテトリス消しが達成し、追撃の2発目………炸裂ッッ!!!
「必殺!『ダブルネイリング・テトリス》』ッッ!!!!!」
2連の釘打ちの如く、テトリス消しが連続で決まった!!
『テトリス』を間髪入れずに連続で発動すると、スコアが割り増しで獲得出来る【Back to Back】を達成したレミ。
そしてスコアは―――!?
『………えッッ!!?【999999】点で止まってる―――!?!??』
100万点まで1点足りない!レミが動揺した瞬間、気が緩み中央にテトリミノが頂上に積み重なった。
「………そんな、あんなに頑張ったのに……」
レミの瞳が潤んで悔しさが滲む声になってきたが……剣がその悲哀を断ち切った。
「―――違う。これは『カンスト』!!
つまりカウンターストップで、これ以上は得点が加算されないって事!」
「!?――って事は……」
「そう、正真正銘のスコアの頂点に立ったってこと!!!」
すると―――?
「オイ!テトリスでカンストしたってよ!!」
「マジかよ久々じゃね!!?」
「若いのに良くやれたなぁ!!!」
「「「―――!!?」」」
3人が気づかないうちに後ろには、数十人の野次馬プレイヤーが拝見していた。
「あんたダントツでランキング1位取るからいずれはやると思ったが、ついにやったな!【殿堂入り】!!!」
見ていた野次馬プレイヤーの一人が、称賛の言葉をレミに送った。
「え……?殿堂入りって何??」
レミは状況を理解していないようだ。
「知らなかったのか?カンストでスコアの頂点に立ったプレイヤーは、ランキングから外されるけど、ゲーム内での最大の名誉の象徴として【殿堂入りプレイヤー】の称号が与えられるんだ!」
「うそ……本当!!!?」
長いゲームワールドの歴史の中で、テトリスでカンストし、【殿堂入り】を果たしたプレイヤーは23名。
その中でレミは見事、24人目の殿堂入りを果たしたのだ。
その証明として、端末プレイギアのプレイヤープロフィールに≪
テトリスのエリアのスクリーンに『畠田レミ』と、殿堂入りプレイヤーの名が刻まれた。
さらにゲームのクリア報酬の更に上を行く『殿堂入り報酬』として、賞金は50万円、更に金宝箱5つ獲得した。
レベルアップも膨大な経験値で換算されている。
様々な証明を目の当たりにし、レミの潤んだ眼に落ちる涙は、悔し涙から嬉し涙に変わっていった。
「……あたし、こんな事今までなかった。あたしみたいな取り柄なしがこんな記録を残して、皆に凄いって言われたこともなかった………!!
―――――嬉しい゛ッッ!!!!」
レミは嬉しさの余り、貯まっていた涙が一気に溢れだした。
「殿堂入りおめでとう、レミちゃん!!!」
みのりもレミに拍手で称える。
「本当にありがとう二人とも!!貴方達がいなかったら殿堂入り果たせなかったわ、感謝しきれないわよ!!」
それに対して剣は軽くひけらかした。
「……俺達はただアドバイスを送っただけ。称号を掴み取ったのはレミ自身の力だ。
それに、大事なものもレミから教わったしな」
「大事なもの……?」
「それは、【諦めない心】だ!
目標に向かってやり続けたゲームに打ち勝つ為に、諦めない気持ちを持ったプレイヤーは一番強いんだ!!
俺もお前みたいに夢を諦めないで、『マスターオブプレイヤー』を目指す!!!」
レミには『マスターオブプレイヤー』という雲の上の称号の事は知らない。
しかし大きな夢に突っ走る彼の覚悟は、レミにしっかりと伝わった。
「……貴方も本気でゲームに挑んでいるのね。その夢、きっと叶うよ!!
私も……貴方達みたいな優しい人達と、友達になれたら良いな……」
レミは後ろめたい気持ちになり、徐々に口ごもる。
そんな彼女にみのりは背中からガバッと羽織るように抱きしめた。
「恥ずかしがる事なんか無いよレミちゃん!」
そして剣が真剣な目付きでレミを見つめ、優しく言い放つ。
「――――俺達、もう友達だろ?」
レミの目尻に止まりかけた涙がまた溢れ出てくる。
それを無理矢理手で拭い、笑顔で二人に返した。
「……最後の最後まで、貴方達に優しくされちゃったな。
あたし、また二人に会いに行くわ!友達として!!
――ねぇ!最後に二人の名前教えてよ!!!」
「桐山剣!!」
「河合みのり!!」
「俺達、大阪でゲームチーム『シャッフル』を作って今メンバー募集している!!
縁があったら、また会おうぜ!!!!」
と言うと二人は工場から離れ、現実世界に送還された。
(………『諦めない心』か。でもその気持ちを思い出させたのは……
剣君、みのりちゃん、貴方達よ――!!)
畠田レミ、この日初めて心の底から【親友】と呼べるプレイヤーに出逢った――!!
◇◇◇
―――翌日。天童学苑高校にて。
「へぇ~パズルファクトリーで殿堂入りね……」
他のゲームワールドのエリアのパトロールをしていて出番も解説も無かった槍一郎に、剣は昨日の件の話をしていた。
「あのブラックボックスなプレイヤー、滅多にいないからな~、今度会ったら絶対チームに入れようと思ってるんだ。
でも、何処に住んでるか分かんなくてさ」
「でも名前は聞けたんだろ?」
「うん。畠田レミちゃんってゆーの!」
レミの名前を聞いた瞬間、槍一郎の顔色が変わった。
「………ちょっと待て。
そいつ、僕のクラスの生徒だぞ!!?」
「「……はぁ゛!!!???」」
急いで槍一郎のクラスの5組へ剣達は向かった。
――本当にいた!レミだ!!
「おい、レミ!!!!」
剣の叫び声にレミは気づいた。
「―――あっ!!?」
――――あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああ!!!!!!
身近にいるのに気づかない事って、本当にあるんですね~☆
その後、剣から直々の誘いで畠田レミ(16)は『シャッフル』の4人目のメンバーに入団したことは……言うまでも無かった。
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